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タレントのブランド資産形成について

はじめに

以前の記事では、芸能事務所の投資能力強化の必要性について訴えた。今回は、その投資の受け皿になるタレントのブランド資産およびその形成方法について考えていきたい。


タレントにとってブランド資産とは

タレントの「ブランド」とは

タレントの価値は本人そのものというよりも、タレントの「ブランド」、すなわちタレントとファンの間の「約束」によってもたらされる。
そのため「〇〇さんといえば〇〇なイメージ」とされるものから逸脱すると、ファン離れを引き起こす原因となってしまう。

清純派ゆえの炎上

たとえば、乃木坂46 遠藤さくらがピアス穴を開けたときに「ピアス開けたとかマジで引くんだけど。お前のキャラじゃねーじゃん」「もう普通に推すのやめるわってレベルなんだけど」とネット上でバッシングが起きたという。

ピアスの穴程度大したことのないように思えるが、”清純派アイドルとしての遠藤さくら”を推していたファンからすれば、ギャルになったとブランドに傷を付けられ価値が落ちたように感じたのかもしれない。

さらに大きなニュースになったものとして、元AKB48 岡田奈々のスキャンダルが挙げられる。

「今のAKBグループは、スキャンダルだったり、問題を起こして、それをネタにしたり笑いにしたり、そこで這い上がるメンバーがよく見られます」「それを真似していいとは絶対に思わない」「まっすぐに頑張っている人が報われるように、グループを変えていきたいです」などと発言し、「AKB48の風紀委員長」と称されるほど真面目で誠実なアイドルとしてのブランドイメージを築き上げていた彼女。

しかし、自身も若手舞台俳優と交際していたことがバレてしまい大炎上となった。過去にもAKB48グループでは指原莉乃や峯岸みなみなど様々なスキャンダルが報道されているが、本件は本人の過去の発言やキャラクターから「岡田奈々は絶対にスキャンダルを起こさない模範的なアイドルだ」という印象をファンに持たせたことから、裏切られたという気持ちがより大きなものとなってしまった。

ブランド資産の重要さ

これらの例から分かるように、タレントのブランド資産では、知名度のような数値化された絶対量だけでなく、ファンが抱いているイメージの方向性が非常に重要な意味を持つ。

ファンに対して、何を約束するのか・イメージをどのように維持するのかがタレントの価値に大きく影響を及ぼす。

ブランド資産を築いていくには

仕事選びによるブランド資産形成

タレントが引き受ける仕事には、ブランド資産を削ってお金に変えるものと、将来の仕事に繋がることでブランド資産を増やすものが存在するといえる。

極端な話では、パチンコ屋の営業は30分〜1時間程度で100万円ほど稼げるといい、目先のお金を得るためにはいいが、タレントのイメージ次第ではマイナスな影響を与えてしまうだろう。

逆にギャラが高くないとしても、顔が売れる・新たな領域を開拓できるといった将来の仕事につながるような仕事は積極的に引き受けていくべきではないだろうか。

たとえば元日向坂46 影山優佳は、W杯期間に持ち前のサッカー知識を生かして結果予想を的中させたことでサッカーキャラが浸透。また名門国立高校出身という肩書を生かしてクイズ番組に出て結果を出すことで、インテリのイメージ付けにも成功した。その結果、日向坂46卒業後もサッカーやクイズの仕事を獲得している。

他にも井上咲楽は、番組で昆虫食やマラソンなどに果敢に挑戦し続けることで、タフな女性タレントとしての地位を強固なものにしている。

投資によるブランド資産形成

仕事選びだけではなく、自ら積極的に「投資」をしていくことで、より戦略的なブランド形成を行うことも可能である。

たとえば、Snow Manの阿部亮平は、ジャニーズJr.時代に何も取柄が無いことに危機感を感じ”勉強キャラ”をつけようと決心。グループ活動を一時休止して受験勉強し、上智大学理工学部、上智大学大学院理工学研究科に進学して高学歴キャラを獲得。また気象予報士試験や世界遺産検定2級、日本漢字能力検定の準1級にも合格し、アップデートしていくことで「ジャニーズ最強のインテリ」として数々のクイズ番組へ多く出演できるようになった。

また、個性豊かさを売りにしているアンジュルムでは、サブリーダーの川村文乃が女性初の「1級マグロ解体師」試験合格を果たした。高知県おさかなPR大使を務めていたことがあり、特技はカツオをさばくことと元々”おさかなキャラ”を公言していたが、珍しい肩書が増えることにより”おさかなキャラ”および、グループの個性的なイメージが強化された。また、この資格取得を「アウト×デラックス」出演などの仕事にも繋げている。

このように、タレントのブランドづくりに寄与する投資を行うことで知名度向上や次の仕事に繋げることができる。

タレントにも資産形成の考え方を

芸能事務所の側は、受け皿であるタレントのブランド価値が仕事選びや戦略的「投資」によって増減することを念頭に置く必要がある。

マネジメントをする際にはタレントがファンに対して与えるイメージの維持・向上に努めていくことが重要であり、そのためには直近のマネタイズ長期的なブランディングのバランスを上手く取りながらタレントを売り出していくことが求められている。

もちろん、従前からそうしたことは行われているのだが、SNSの発展などにより最近ますますその重要性が高まっていると言えるだろう。

(文/A.I.)




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