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「リア充」と「プア充」は幸せを分かちあえるか? 「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」シーズン2

そもそも経済とは、物々交換から始まりその歴史の中で物を交換する価値の担保や尺度としてお金が発明されました。 ヒトは便利さをお金で買ってると言っても過言ではありません。しかしこの直近5年ネットやSNSの普及でそれがガラリと変わってしまったように感じます。

「お金で交換できる経済」
「お金だけで交換しない経済」の2つの経済圏。この2つの狭間で、もがき苦しんでいる若い世代を見ることが増えたように感じます。だからシーズン1では下記の5本にわたり書いてきました。

1:
僕たちは「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」に生きている
2:
「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」が互いに助け合う方法と技術について考えてみた
3:
企業内の「ありそうな展開」から「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」を考えてみた
4:
「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」が助け合う方法を「ロジカルな数字」から考えてみた
5:
【まとめ】改めて「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」を考えてみた

誰もが気がついているのは、従来の資本主義経済は行き詰まっていること。資本を集めてもなかなか思ったように稼げないからです。

そこで登場するのは「稼げるヒト」と「稼げないヒト」です。これはひとつ間違えるとタブー視されがちな切り口ですが、いまの若い世代に必要なことだと思い書き残しておきたいと思います。

池松潤(いけまつ・じゅん)
コミュニケーションデザイン / noteクリエイター/文筆家
慶應義塾大学卒・大手広告代理店を経てスタートアップの若手との世代間常識を埋める現役57歳。登壇・イベント・ときどき婦人公論にコラムなど⇒ https://lit.link/junikematsu



「リア充」と「プア充」は、幸せを分かちあえるか?

リア充・プア充に関しては書籍『幸福の「資本」論』・橘玲著に超・ロジカルに書かれています。ご存知でしょうか。

リア充= 金融資産なし、人的資本あり、社会資本あり
プア充= 金融資産なし、人的資本なし、社会資本あり

『幸福の「資本」論』・橘玲著より

人が幸福を得る手段として、下記の3つの資本に因数分解するとわかりやすいと書かれています。ちょっと紐解いてみましょう。

①金融資産=現金や不動産など(自由・自由に行きてく元)
②人的資本=個人の能力や働く行為(自己実現・才能や能力)
③社会資本=他人との繋がり(友達など人間関係)

まず1つめの金融資産。
文字通りお金を持っているかどうかです。お金を得ることで、嫌な仕事をせずとも自由に生きていくことが出来ます。

2つめの人的資本。
これは自らが持っている才能や能力のことです。稼ぐチカラと言ってもいいかもしれません。多くの人は人的資本を労働として提供しています。人的資本は、労働を通してやりがいを得ることが出来ます。お金だけを持っていても、また自分で無意味だと思う仕事に人的資本を投入しても、やりがいは得られません。人的資本はやりがいを通して自己実現をするために、必要な資本だということです。

3つめが社会資本です。
社会資本とは、この社会における人間関係のネットワークのことです。家族であれば、強い社会資本と言えますし、行きつけのお店でハナシをする常連さん同志であれば、弱い社会資本と言えます。そしてもっと緩い関係がSNS界隈にはあり、それは緩い社会資本なのでしょう。

このように、自由を獲得するための金融資産・自己実現をかなえるための人的資本、そして共同体=絆を感じるための社会資本の「3つの資本」が幸せの条件なのです。


【幸せを構成する3つの要素】

3つすべての資産が満ちることが理想ですが、そんなヒトは滅多にいません。なぜなら、お金資産が貯まると付き合う友達を選択するようになるからです。つまり3つの資産はバランスするのが難しい。この「3つの
要素」をどうバランスするか?ということになります。


リア充とは

リア充とは、金融資産なし、人的資本あり、社会資本あり。の状態のヒトのことを言います。幸せのインフラを2つ持っていることです。金融資産がほとんどなくても、一流企業に勤めていたり、友だちや恋人がいたりして、ネット上だけでなくリアル(現実)も充実しているヒトのことです。幸せのインフラを2つ持ってるので生活に安定をもたらされます。

リア充は、インターネットやSNSのつながりしかもたないネット民との比較から生まれた俗語ですが、社会資本(地元のつながり)しかもたないプア充と比べて幸福のインフラが安定してます。それはシゴトを通じて自己実現も獲得しているからです。

「リア充」の図解:書籍『幸福の「資本」論』橘玲・著より引用


プア充とは

プア充とは、金融資産なし、人的資本なし、社会資本あり。の状態のヒト。金融資産や人的資本が無くて、社会資本(友だち)だけをもっている状態のヒトです。

「プア充」とは、「最貧困女子」 (幻冬舎新書) 鈴木大介・著から生まれた造語ですが、この本では、貧困ラインを大きく下回る年収100万~150万円の地方の若者たちのことです。鈴木氏は「彼らはプアではあるが貧困ではない」と言います。なぜなら彼らの日々の生活は充実しているからなのです。

厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、2021年の貧困線は127万円となっており、相対的貧困率に属する世帯は15.4%

その典型は「マイルドヤンキー」と呼ばれる地方の若者。彼らの収入は貧困ライン以下で、貯金も無いけど、中学・高校時代の友だち関係がそのまま続いてることで生活は充実しています。例えば、キャンプ道具やテントは友達から借り、車も持ってる友達と一緒にドライブへ行く。すべてをシェアリング経済で回しています。しかしこれは地方だけに限りません。東京で比較的物価の安いエリアがありますが、それらの地域にも見られる現象だと思います。

「プア充」の図解:『幸福の「資本」論』橘玲著より引用


まったく違うタイプの両者が幸せを分かちあえるのか?

前置きが長くなりましたが、このまったく違うタイプの両者が幸せを分かちあえるのか?ココが今回のテーマです。

なぜこのテーマに思い至ったのか?というと、「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」を考える元になった、シーズン1の第一話にも書きましたが、最近わたしが住んでいる「ソーシャル・アパートメント」というお手伝いさん付きのシェアハウスで、仲良くなった若い世代の隣人たちとの会話から得た視点です。

答えから先に言うと「リア充」と「プア充」が幸せを分かちあうのは、色々考えましたが。かなり難しい。

人生の資産の柱が2つと1つでは、関わり合うためのきっかけがなかなか無いのです。しかし「ソロ充」となら交わりあえるのでは?と思いました。

この両者は、幸せの資産の柱が1つだからというのもありますが、もうひとつきっかけがあると思ったからです。そこをお話します。もう少々お付き合いください。

リア充= 金融資産なし、人的資本あり、社会資本あり
プア充= 
金融資産なし、人的資本なし、社会資本あり
ソロ充= 
金融資産なし、人的資本あり、社会資本なし

『幸福の「資本」論』・橘玲著より

ソロ充とは

「ソロ充」とは、人的資本だけあって金融資産と社会資本がないヒトのことです。これは『超ソロ社会』荒川和久・著からの造語ですが、彼らは結婚や子どもをつくることに興味を持たず、稼いだお金は自分の趣味などに使い、異性の知り合いはいても、恋人のような深い関係にはならない人たちです。

しかし若者でなくてもこういうヒトはいます。「駆け出しのスタートアップ経営者」などです。彼らは人的資本はあっても、事業が軌道に乗るまでは金融資産の貯蓄は難しい。彼らに社会資本(友だち)が乏しいのは、生活サイクルが一般のサラリーマンとはまったく異なるからです。駆け出しのスタートアップは忙しくて遊んでいる時間はありません。そんな生活をしていれば学生時代の友人たちからの誘いはかからなくなるし、そもそも会社員生活の友達とはライフスタイルがちがうので友人関係を続けるのも難しいのかもしれません。ゆえに同じ環境の友達はできるでしょうけど、都会では友達を作るのもお金がかかります。転職や副業を重ねると、職業体験は広がりますが、入社同期は存在しませんので「横のつながり」は出来ません。師弟関係のような「縦のつながり」など若い世代には想像もつかないでしょう。

「ソロ充」の図解:『幸福の「資本」論』橘玲・著より引用


お互い幸せの資産が1つである「ソロ充」と「プア充」は「志し」なら分かち合える(かもしれない)


プア充とソロ充が分かち合えるのは「何」でしょう。それは「志し」です。「夢や希望の理想形」と言い換えてもいいかもしれません。

「志し」とは、心の向かうところ、心の目指すところという意味。 目的・目標・理念・信念・理想と心が向かい、目指す方向と、ヒトを思いやる気持ちが一緒に なっている状態のことです。

「志し」が同じなら、プア充とソロ充は仲良くするきっかけが持てるかもしれません。たとえば「地元愛」とか「母校愛」などです。これは「お金だけで交換しない経済」にあたる行動です。「地元の夏祭りに帰省する」、「同窓会」や「引退する先生に集まりに参加する」などです。

この「●●愛」状態とは、お金で解決しないで「行動」で示す関係。それなら気持ちを分かちあえるのかもしれません。

ソロ充とプア充をきっかけにリア充も分かち合えるかもしれない

もしソロ充とプア充が分かち合えれば、そこをきっかけにリア充にまで広がる可能性があります。これはお祭りの楽しそうな音が聞こえてくるとヒトは集まる状況に似ています。

そのために重要なことは「空気の醸成」です。この国ほど「空気に弱い」ものはありません。いつの時代も変わるのは「空気」から変わるからです。

「空気」の研究 山本七平・著は、1977年の発表以来、46年を経ていまだに多くの論者に引用・紹介されています。日本人ほど忖度ができる「すり合わせ能力」の高い国民はいません。世界中見回しても稀有な存在と言えるでしょう。

「志し」や「●●愛」は、お金に換算できません。

そもそも経済とは、物々交換から始まりその歴史の中で物を交換する価値の担保や尺度としてお金が発明されました。 ヒトは便利さをお金で買ってると言っても過言ではありません。

「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」は、「志し」や「●●愛」によって幸せを分かち合えるのかもしれません。

「お金で交換できる経済」である既存経済は、従来からの資本主義経済で、既存経済の資本を増やすとは、主に金融機関やベンチャーキャピタルなどから必要な資金を借り入れたり出資を受けたりすることです。この場合資本提供者は事業の成功に応じて金銭的なリターンを得ることが目的になります。「資本を集める」のは得意ですけど「反応」や「評価」は得られません。

「お金だけで交換しない経済」であるコミュニティ経済は、SNSを活かしてクラウドファンディングなどで応援を集め、ネットを通じて多数の人に呼びかけ、趣旨に賛同した人から「お金の利便性を使って応援を集めること」でここ5年急速に成長しています。リターンは多種多様でこの場合の特徴は共感や人間関係から生まれることです。しかし「応援を集める」のは得意ですけど「利子」や「配当」が目的ではありません。美意識や価値観が既存経済とは違います。

この2つが助け合い分かち合えるかは、「プア充」と「ソロ充」が、幸せ(志しや●●愛)を分かちあえるかに重なって見えるのです。


お金に換算できないものほど、価値を生み出している。

もし、プア充とソロ充のように違ったスタイル同志が、幸せを分かち合うことができればどうでしょう。

ココに、誰もが気がついている「従来の資本主義経済は行き詰まっている」を解決するヒントが詰まっているように思います。

「資本主義経済なんて難しくて関係ないな」って思ったあなた。あなたにこそ、思いを巡らせてみるのに値する「何か」があるのではないでしょうか。

ココまでお付き合い頂き有り難うございます。このハナシって対談形式だと書きやすいのですが、ひとり語りで書くのは大変ですね。シーズン2まだまだ続きます。

ではまたnoteでお会いしましょう。



「資本主義経済のアップデートについて考える有志が集まる」アドベントカレンダー開催!

https://adventar.org/calendars/9132


このアドベントカレンダーは、「個人のお金」と「会社のお金」をひも解いてみた。「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」シーズン2でnoteを書いた「noteに共感して頂き→ XにDMが来て →zoomして →リアルで出会って →シゴトをする」ことになった、 株式会社 Figurout CEOの中村さんと、この本は「私には関係ないなと思ったあなたに必要な本」だと思う #資本主義の中心で資本主義を変える noteで書いた、元ゴールドマンサックス証券で資本主義の中心で、資本主義を変える・著者の清水 大吾さんのお二人が発起人となって立ち上がりました(長いごめん)

お二人とは一緒にお食事をさせていただいて、志しの繋がりはなんて尊いのか考えさせられました。この機会に「わたしにとっての資本主義経済」について思いを巡らせて頂ければ嬉しいです。なぜなら多くの若者が思い悩むのは、この辺に源流があるのですから。

発起人の中村さんがこのイベントの経緯を書いたnoteはこちらhttps://note.com/kntn123/n/n9b1d9ecb9e36

そしてもうひとりの発起人、清水 大吾さん資本主義の中心で、資本主義を変える 著者)の本はこちら。



「資本主義のアップデートについて考える Advent Calendar 2023」
参加者(敬称略・現時点の参加予定)


オープニング 中村 研太(株式会社 Figurout 代表)
12/2 入山章栄(経済学者 早稲田大学大学院経営管理研究科教授)
12/3 諸藤 周平(REAPRA グループCEO/エス・エム・エス創業者)
12/4 武井 浩三(経営思想家/社会活動家/社会システムデザイナー)
12/5 小森谷 浩志(株式会社ENSOU 代表)
12/6 堀 克紀(日本政策投資銀行/元Climate Youth Japan共同代表)
12/7 小林 賢治(シニフィアン株式会社 共同代表/Nstock株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー)
12/8 岩崎 明彦(社会投資家 / NPO法人パブリックマインド 代表理事)
12/9 夫馬 賢治(ニューラルCEO/信州大学特任教授)
12/11 渡辺 裕子(ライター)
12/12 朝山あつこ(認定NPO法人 キーパーソン21 代表)
12/13 浜辺真紀子(浜辺真紀子事務所 代表)
12/14 三村 愛(株式会社 りぷらす 代表)
12/15 忍岡 真理恵(ヘラルボニー経営企画室長)
12/16 市川 祐子(マーケットリバー 代表取締役)
12/17 磯貝 友紀(PwCサステナビリティ合同会社 パートナー)
12/18 加藤 俊(株式会社SACCO 代表取締役 )
12/19 renny(個人投資家)
12/20 鈴木 直之(株式会社 ZENTECH 代表取締役)
12/21 中久保 菜穂(シェルパ・アンド・カンパニーCEIO, ESG責任者/元S&P Gloabal ESG Solusions日本ヘッド)
12/22 篠田真貴子(エール株式会社 取締役/経産省 人的資本経営の実現に向けた検討会 委員)
12/23 田中 弦(株式会社 Unipos 代表取締役)
12/24 佐藤 明(株式会社バリュークリエイト パートナー)
12/25 小平 龍四郎(日本経済新聞上級論説委員兼編集委員 )
総括: 清水大吾(元ゴールドマンサックス証券)資本主義の中心で、資本主義を変える著者


https://adventar.org/calendars/9132


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