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それだけで笑ってしまう

好きなものは、呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前の大きなミロクがダメだったのも、そのせいだし、お前のバケモノが、すばらしかったのも、そのためなのよ。ねえもしも、また新しく、なにかをつくろうと思うのなら、いつも、落ちてきそうな広くて青い空をつるして、いま私を殺したように、耳男、立派な仕事をして……

「贋作 桜の森の満開の下」野田秀樹

前回の「猫との暮らし」から半年も経った。

後から来た赤い方はぐんぐん育ち、もう先に来た白い方のより大きく重い。レッドタビーという種類で、赤毛の縞のということになっているが、今川焼きとか鯛焼きみたいな色の毛が割合を増してきた。そして首やお腹や尻尾の毛が伸びてきて、実は長毛種だったのかと疑わしく思っている。櫛を入れて毛玉を予防しなければならない動物が倍に増えてしまった。

信じ難いことに、この後から来た赤い方のは、呼ぶと来る。ソファで寝転んで名前を呟くと、鳴きながら物陰より現れて胸に飛び乗ってくる。それで撫でながら先に来た白い方のを見遣ると、こちらを睨んでいる。猫にあるまじき態度ということか。

そして、赤い方のは人懐っこいだけでなく、素行が悪い。

十分に素行が悪い。「猫 しつけ 叱り方」で検索した。低い声でゆっくり名前を呼ぶのが効果的らしい。つい「こらっ」と大声を上げたくなる。

性格が違い過ぎて心配することが多かったけれど、最近は二匹の距離感も少しずつ整いつつあって、それぞれ落ち着いて暮らしている。朝晩の寒さがそうさせたのかもしれないが、同じ布団に潜っていることもある。(そして時々、予兆無く始まる夜中の大運動会で睡眠が削られる)

レンズを向けると突進してくる。隣で迷惑そうな先住猫。

残る課題は、食べるのが遅い白い方のご飯を、赤い方のがあっという間に横取りしてしまうことだ。これは食事時に隔離しておく以外、解決策が無いのかもしれない。

そういえば、こちらの連載記事で取り上げていただけることになり、インタビューのために自宅へ来客を迎えた。先に来た白い方のは周りをうろうろしたり、抱えられてお客にお腹を見せてあげたりと協力的だったのだが、後から来た赤い方のはキャットタワーの頂上にあるドームに籠もって、僕がお客を送り出すまで身を潜めていた。

この日から数日の間、家の中での呼び名は「内弁慶」になった。

仲良くしているのでもどちらかに連れられているのでもなく、リビングの向こうからただ並んで歩いてくる。片方の尻尾の先端は天井を向いている。片方は猫なのに足音を立てている。何が面白いのか分からないのだけど、それだけで笑ってしまうのだった。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
今回は以上です。それではみなさん、ねこによろしく。


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