見出し画像

(3)自社ドメインのベンダーの下請けで開発案件を受託する(シード期)

スタートアップ「シード期」の3つ目の記事です。
※シード期:一般的には「アイデアがあるが起業前」または「アイデアはあるが具体的な製品サービスがない段階」を意味します。

今回の記事は、課題(3)「自社ドメインと近しい分野のベンダーの下請けで開発案件を受託する」です。

課題3自社ドメインのベンダーの下請けで学ぶ

①コンサルティング以外に「教育分野」の仕事の獲得を目指す

創業当初はメンバーの前職の経験を生かし、自社が立ち上げたい本業とは異なる「コンサルティングの仕事」をしてキャッシュを稼ぎました。

しかしそれだけではお金を稼ぎ生き残ることはできても「何のために起業をしたのか?」ということになります。私たちはコンサルティングの仕事をしながらも、自社の事業ドメインとして考える「教育分野」の仕事をしようと営業活動に取り組みました。時期としては2004年前半の話となります。

学生時代・前職などの知り合いにひたすらアポイントメントを取り「起業の報告」をしていくと、中には、(広い意味で)教育関連のお仕事をされている方もいました。そうした方からアドバイスをいただくと共に、私たちが何かお手伝いができる仕事がないかというお伺いを繰り返していました。


②サービス提供ベンダー様から仕事を受注する

2021年現在のアルー株式会社は、企業向け研修サービスが事業の中心となっております。2004年時点では企業向け研修サービスに取り組みたい、という思いはありましたが、実績もゼロ、プロダクトも形になっておらず、顧客となりうる企業の人事・人材育成担当者の方とアポイントメントを取ることは難しい状態でした。

企業の人事・人材育成担当者の方は、自社の人材育成課題を解決するために予算を執行する立場(ユーザー)です。こうしたユーザーの方は、数多くのサービスベンダーから支援を受けており、付き合いがないサービスベンダーからも日々アポイントメント依頼が来ています。そのため、当時の私たちのような実績&プロダクト(&営業経験)ゼロのヒヨコ会社に会う理由はありません。

一方で、私たちがアポを取ることができたのは、そうした企業の人事担当者(育成だけではなく、採用分野なども含む)に対してサービス提供するベンダー側に勤める方々でした。
サービス提供ベンダーは、自社の営業チャンスやソリューションの幅を広げるためであれば、ヒヨコ会社の力も使ってみようと考える方が、比較的多くいらっしゃいました。

お金の話でいえば、ユーザーは限られた予算を分配する事が必要なので軽々しく発注はできません。一方で、サービス提供ベンダーは、ユーザーに買っていただければ、獲得した売上の中の原価の一部として我々を考えることができるからです。売れれば私たちに発注する余地が生まれるのです。

シード期の当社の教育分野における最初の法人取引は、サービス提供ベンダーの方の下請けとしてのお仕事でした。この仕事の経験はその後の事業展開に大きくつながっていくものとなりました。


③社会人向けビジネススクール様の教材開発

代表的な仕事の一つは、社会人向けビジネススクール様から受託した教材開発の仕事です。これは当社代表の落合さんが、知人経由で案件をいただき、開発まで含めて落合さんが一人でやり切った仕事だったと記憶しています。

内容としては「ファイナンスのケーススタディ開発」でした。ケーススタディにおける分析対象企業の事業内容や背景設定、複数年にわたる財務データを詳細に作り込む必要がありました。

現在のアルーでも同様の内容を作ろうとしたら、難易度も高く工数も相当なボリュームになりそうな業務です。当時、創業時の落合さんの自宅をオフィスとしており、夜な夜な一人開発を進めている姿を記憶しています。

受託金額としても、仮に現在の当社が顧客から開発を受託させていただく場合の金額よりもずっと低価格でお受けしておりました(適正な価格感がわからなかったという面が大きいです)。

ご発注をいただいたビジネススクールのご担当者様からも、何度もご修正の依頼を受けるなど簡単な仕事ではありませんでした。

しかしこのお仕事をさせていただいたことが、当社にとって「ビジネスパーソンに提供できるケーススタディの要素・構成・品質水準」等を学ぶ経験となりました。受注金額の多寡や工数よりも得難い「ドメイン知識の獲得」につながる仕事でした。


④採用支援ベンダー様のグループワーク開発

もう一つの代表的な事例としては、私が大学生の頃にお世話になっていた採用支援ベンダー様からお仕事をいただけたことです。

私は学生時代、友人の紹介でその採用支援ベンダー様が行っていた「就職塾」に参加をしていました。その時に運営側として参加をされていた社員の方々と仲良くなりました。起業後、アポを取り私の近況報告をすると仕事を手伝ってほしいというお声をいただきました。最初にアポイントをいただいた同社のNさんには本当にお世話になりました。

アポイントメントの際にNさんがおっしゃっていたことは今でも鮮明に記憶しています。

「最近(2003年頃)、企業の採用活動では体験型の教育的なコンテンツが求められているんだよ。池田くんも就職活動の頃に企業の説明会に参加したよね。その際に企業理解のためのビジネスゲーム研修のようなものを経験しなかったかな?」

確かに私自身が就職活動をしていたころ、会社説明会でビジネスゲームを複数回受講したことがありました。

Nさんは続けました。
「うちの会社も顧客企業から、ビジネスゲームを提案してほしいと言われるんだけど、作れる人がいなんだよね~。池田くん達はコンサル会社出身だよね?企画を考えるのは得意じゃないかな?

私は「ぜひやらせてください!」と即答いたしました。
ビジネスゲームは、企業のビジネスのエッセンスを抽象化し、疑似体験できるようなものでした。私は子どもの頃からゲーム好きだったこともあり、就職活動時代に体験した際にも「これなら自分でも作ることができる」と考えていました。

こうしてNさんから、企業の採用場面におけるビジネスゲーム・グループワークづくりの最初の仕事を受注させていただき、苦労はしましたが納品をさせていただきました。

Nさんからの上記のお仕事をきっかけに、この採用支援企業ベンダー様とはその後数年にわたり多くのお仕事をいただくことになりました。きっかけを作っていただいたNさん、その後お付き合いをいただきました方々には、深く感謝をいたしております。
(この件については、別の学びもありますので、アーリー期の記事で続きを書かせていただきます)

Nさんのお仕事をさせていただいたことで、企業の人事担当のお客様(採用分野)の方々がどのようなことを求めているのか?受講生である就職活動生の方に、インパクトを与えるワークをつくるにはどうすればよいか?競合企業がどのような品質のサービスを提供しているのか?等について、知見を深めることができました。

アルー株式会社は現在、企業の採用分野のご支援は行っておりませんが、このグループワーク・ビジネスゲーム開発の経験が、企業の人材育成分野の研修開発に大きく役立ちました。
※2006年頃の事例となりますが、その成果の一つが「パスタブリッジ」という研修に発展しました。

シード期のスタートアップにとって、事業ドメインに関する知識を深めていくことは極めて重要です。経験を得るために、自社ドメインと近しい事業を展開する企業様から下請けの形で仕事をしながら学ぶというのはとても有効な手法だと考えています。


本記事のまとめ

◆自社ドメインと近い分野の企業の方に営業をする
◆ユーザーよりも、サービス提供ベンダーの方の方が会ってくれやすい
◆受注金額の多寡よりも、経験を積み、知識を得ることが重要
◆経験を積み、知識を得るには、仕事を通じて厳しい要求水準に応えることが必要

次の記事はこちらです!

======================

本記事を含む「シード期」の全体像を解説した記事はこちらになります。
シード期のスタート時点・主たる活動・到達地点について解説しています。よろしければぜひご覧ください。

======================

<「スタートアップ営業組織作りの教科書」をまとめて読むには↓>

画像3

======================

本noteでは別途アルーの「研修プログラム開発のストーリーとノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

<アルーのすごい研修開発バイブルを読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル

======================

お問い合わせ・資料請求

アルー株式会社への研修のご相談はこちらからご連絡をいただけますと幸いです。

お問い合わせ・資料請求

新入社員研修、管理職研修、DX人材育成、グローバル人材育成、Eラーニング、ラーニングマネジメントシステム等、企業内人材育成の様々な課題にお応えいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?