池井戸潤・原作にハズレなし

『半沢直樹』『下町ロケット』
『陸王』などなど、
池井戸潤・原作の映像化作品に
ハズレはないのが定評です。

そんなこともあって、
本作も気になったわけですが、
今回はミステリーということで、
また毛色の違う作品となっています。

主人公の三馬太郎（中村倫也）は、
「明智小五郎賞」を受賞した
若い作家ですが、

スランプに陥っており、
このところはなかなか
パッとしない感じでした。

そんなおりに、亡父から相続した
実家の処分を求める不動産屋からの
手紙が届きます。

その実家は岐阜県の集落
「ハヤブサ地区」にありました。

太郎は幼い頃に
そこに住んでいたことがありますが、
ほとんど記憶がありません。

しかし、そこを訪れた太郎は、
ハヤブサの美しい景観に惹かれ、
移住することを決意します。

ハヤブサで太郎を待っていたのは、
ハヤブサ消防団への加入、
連続放火事件、
そして、殺人事件でした。

都会と田舎の暮らしの違い

都市部に住んでいるものからすると、
田舎暮らしというものは、
なかなか不便な印象も感じさせます。

コンビニがない、
交通機関も少ない、
といった生活面ではもちろんこと、

住民同士の結びつきが強い
というのも、時には厄介が
つきまといます。

ちょっとしたことでも、
すぐに村中に
知れ渡ってしまうんですね。

私のように、
そういう土地で暮らした
経験がないものからすると、

プライバシーがないのが、
一番大変そうに感じます。

本作では、
そういった都会と田舎の
ギャップを描くと同時に、

ミステリーとして、
放火や殺人も描かれていきます。

この犯人が誰だか、
さっぱりわかりません。

疑わしい人物が
次々に登場してくるのです。

中でも本作の
キーパーソンといえば、
主人公の太郎と恋仲にもなる
立木彩（川口春奈）ですね。

彼女は、2年前に
東京からハヤブサに
移住した女性ですが、

東京では映像関係の仕事をしていた
ということ以外は、
身元がなかなかわかりません。

しかし、その経歴が
徐々に明らかになっていくにつれて、
その怪しさは倍増していきます。

それでも、主人公にとっては、
特別な関係の女性でもあり、
疑うことに抵抗感を抱くのも
無理はありません。

他の住民たちは、
人柄を知っていけば、
いい人たちばかりですが、
これもまた怪しいのです。

そして、もっとも怪しいのが、
最近、ハヤブサに
出入りするようになった

「ルミナスソーラー」
という電力会社の営業マンです。

彼は住民たちに近づき、
その土地の権利の売却を迫り、
ソーラーパネルの設置を
促しています。

売却を断った家が次々に
火事にあっているのもあり、
犯人に間違われても
しかたがありません。

しかし、残念ながら、
決定的な証拠は出てこないのです。

登場人物がカメラ目線で語りかける

ミステリーは怪しい人物が
多ければ多いほど、
おもしろいと思います。

観ている人が先を予測するのが
難しくなるからです。

そして、本作では、
登場人物たちの過去が
ほどよく隠されていて、
興味をそそります。

徐々に明らかになっていく、
その人の過去が、
また興味を引きます。

最終的にハヤブサの
運命はどうなるのか、
最後まで観なければ見極めるのが
難しいミステリーになっています。

個人的に本作の中で
好きな演出は、

たまに登場人物が、
カメラ目線で視聴者に
語りかけるところです。

こういった正攻法ではない、
演出方法は、
うまくやらないと、

視聴者をしらけさせてしまう、
諸刃の剣になってしまうものですが、

本作では、その辺のさじ加減が
うまくされており、
絶妙な演出になっています。

ぜひ、その辺りにも
注目してみてください。

【作品情報】
2023年7月～9月放送（全9話）
原作：池井戸潤
脚本：香坂隆史
演出：常廣丈太
　　　山本大輔
出演：中村倫也
　　　川口春奈
　　　満島真之介
放送局：テレビ朝日
配信：TELASA

【原作】

【常廣丈太の演出作品】