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ドワンゴの着メロがヒットした理由

昨日の記事に引き続き、
『コンテンツの秘密』に掲載されていた
興味深いエピソードを紹介します。

昨日の記事では、
「90年代に一世を風靡した
 ビーイング系ヒットの秘密」と題し、

ビーイングの音楽プロデューサー、
長戸大幸が重視する
「ボーカル」について書きました。

要約すると、
楽曲において重要なのは、

「声の聞き取りやすさ」
「ボーカルの音量」で、

「聴こえやすさ」が
多くの人にとって
「わかりやすいコンテンツ」に
つながるということです。

「わかりやすいコンテンツ」について、
もう一つの例が挙げられていました。

著者が立ち上げたドワンゴは
2000年代に着メロサイトとして
成功しました。

当時はすでに先行していた
着メロサイトがいくつかあり、
ドワンゴは後発でした。

そんな中、

他のサイトよりも評判のいい着メロを
作ることができたのが、
成功の要因だった
と著者が振り返っています。

とはいえ、その道のりは
順風満帆なものではなく、
成功するまでに試行錯誤がありました。

先行する着メロサイトが
通信カラオケ用のデータを流用して、
着メロを手掛けたのに対し、

ドワンゴでは、
優秀な音大生を集めて、
着メロを作ったそうです。

音大でクラッシックを学んだ、
音楽的素養が高い人たちに

「どこの着メロサイトよりも
 すばらしい着メロを作ってほしい」
と著者は指示しました。

そんなことは朝飯前の彼らは、
すぐさま質の高い着メロを完成させました。

ところが、ヒアリングのために集めた
高校生には、この着メロが
不評だったそうです。

着メロの作成にあたった音大生は、

音楽的素養が高いだけに、
楽曲を聴く際に、
普通の人よりも多くの楽器の音が
聴こえてしまうのです。

オーケストラ

そのため、
着メロで原曲を再現するにあたり、
音大生の高い感度で、
精巧に作ってしまうと、

一般の高校生には
「やかましく」聴こえてしまいました。

一方で、この時に作った着メロは
「音量の小ささ」も
不評を買ったと言います。

音に対する感度が高い音大生は、
スピーカーの音割れを
極端に嫌ったため、

全体の音量のバランスが
小さめに設定されていたのです。

「やかましい」のに
「音量が小さい」とは
矛盾していますが、

おそらく、一般の高校生にとっては、
いろんな音がたくさん入っていても、
聞き取りにくかったのだと思います。

この実験結果を参考に、
ドワンゴでは、

音を重ねることによって、
音に厚みを持たせる
独自の技術を開発し、

ドワンゴの着メロが
ヒットするに至りました。

このことから何がわかったかといえば、
着メロにおいて重要なのは、
「音量」であって、

「原曲がいかにリアルに再現されているか」
ではないということです。

なので、この時にヒットした
ドワンゴの着メロは、

必ずしも、原曲で使われていた楽器と
同じ楽器の音色で
構成されているわけではありません。

原曲で使われてない音色も含めて、
とにかくたくさんの
楽器の音色を合成し、

「音に厚みを持たせること」が重視されました。

著者が前述した
「ビーイングの楽曲の秘密」と
「ドワンゴの着メロ」の例を挙げたのは、

どちらも
「大衆にわかりやすいコンテンツがヒットする」
という共通した法則を紹介するためです。

この記事を読んで、
「なるほど」と思うと同時に、

逆に、私は「自分の好きなもの」が
「あまり大衆受けしない理由」が
ちょっとだけわかった気がしました。

次の記事では
そのことについて書いてみます。
(私の好きなものが
 大衆受けしない理由について)

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