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影響された作品を知るとおもしろい

数年前にブログの企画で
仲のいい先輩と
エンタメについて対談しました。

その企画の内容は、
お互いに自分の人生に影響を与えた
エンタメを紹介し合い、
語り合うというものでした。

事前に先輩から10本ほど、
作品を提示してもらい、
私もそれに関連したような
作品を紹介したんですよね。

その先輩は、私よりも10歳くらい
年上の方でしたが、
挙げられた作品の中に、
『風の谷のナウシカ』が
あったんです。

この作品に対して、
私が挙げたのは
ゲームの『パンツァー・ドラグーン』
『ワンダと巨像』でした。

『パンツァー・ドラグーン』は、
‘95年にセガサターンで発売された
シューティングゲームです。

竜に乗って、空を飛び、
画面が奥へと進む
3Dのシューティングゲームでした。

『ワンダと巨像』は、
’05年に PS2 で発売された
アクションアドベンチャーです。

広い大地を馬に乗って駆け回り、
16体の巨像を探し出し、
その巨像を倒すのが目的の
ゲームでした。

私は『風の谷のナウシカ』を
観た記憶がなく、
たぶん、子どもの頃に観たはずなんですが、
ほとんど覚えていないんです。

でも、なんとなく、
この二つのゲームの世界観は、
『ナウシカ』に近いものがあると思い、
これらをチョイスしました。

対談をする前に、
事前にこれらの作品のことを
調べてみると、
意外な共通点がありました。

『ナウシカ』を手がけた宮崎駿監督は、
フランスのコミック
(バンド・デシネ)に強く影響を
受けているんですよね。

フランスには、
バンド・デシネで有名な
メビウスという作家がいます。

メビウスに影響を受けたのは、
宮崎駿だけではなく、
『AKIRA』で有名なマンガ家、
大友克洋も強く影響を受けていました。

私は、なんとなく
『パンツァー・ドラグーン』の世界観が
『ナウシカ』に似ていると思い、
チョイスしたんですが、
調べてみるとビックリする事実が
出てきたんです。

なんと、『パンツァー・ドラグーン』の
ジャケットのイラストを手がけたのが、
メビウス本人だったんですよね。

私はこのことをまったく知らずに、
チョイスしていたので、
これを知った時は、
ビックリしてしまいました。

先輩との対談の時には、
きっと『ワンダと巨像』の作者も
メビウスに影響を受けたんだろう
という結論に達した記憶があります。

ちなみに、サターンを持っていない先輩は、
『ワンダと巨像』が気になったようで、
貸してあげると大ハマりしていました。

先日、ゲームレビューで、
『ワンダと巨像』を手がけた
上田文人氏の『人食い大鷲のトリコ』を
紹介させてもらいました。

このソフトの特別版には、
雑誌『BRUTUS』編集部が手がけた
ファンブックが付いています。

この冊子は、上田文人氏の
インタビュー記事を中心に
構成されていました。

その中には、上田氏が影響を受けた
作品を紹介するコーナーもあって、
その中には、やはり、
フランスのバンド・デシネがあります。

ところが、記事を読むと、
先輩との対談の時に、
私たちが推測した
「『ワンダと巨像』の作者も
メビウスに影響を受けたんだろう」
という仮説は間違っていたことが
わかりました。

上田氏はバンド・デシネに
影響を受けたのではなく、
『風の谷のナウシカ』に
影響を受けていたようです。

なぜならば、『トリコ』の冊子の中で、
上田氏が影響を受けた作品として、
『ナウシカ』が挙げられていたからです。

その中には、バンド・デシネもありましたが、
本人はそれほど詳しくなく、
バンド・デシネに興味を持ったのは、
大人になってからだと書いていました。

私はてっきり、上田氏も
メビウスに影響を受けたものだと
思っていたのですが、
正確にはメビウスの影響下にある作品に
影響されていたんですね。

ちなみに、他にも上田氏が挙げた
作品の中には、
『AKIRA』もありました。

先ほども書きましたが、
『AKIRA』の作者である
大友克洋もメビウスに
強く影響を受けた方です。

こういう影響を探っていくと、
おもしろいんですよ。

いろんなものがつながっていきます。

この世に完全なオリジナルはなく、
人は必ず何かしらの影響を受けて、
作品を作っています。

ちなみに、上田氏が直接、
メビウスに影響を受けたわけではないのを
知った私は YMO のエピソードを
思い出しました。

坂本龍一は、細野晴臣と会う前に、
細野さんの曲を聴いて、
「この人は絶対、クラシックに精通した人だ」
と思ったそうです。

でも、実際には、
細野さんはクラシックに
影響を受けた人ではありませんでした。

ただ、細野さんは、
子どもの頃から、
欧米の映画音楽のレコードを
愛聴していました。

そこに隠されていた
クラシック音楽の要素が
細野さんの音楽に
強く影響を及ぼしていたんですね。

直接影響を受けていなくても、
そこに隠されているルーツを感じさせるのは、
細野さんがその音楽を
深く聴き込んでいたからでしょう。

上田氏が直接、メビウスに影響を受けておらず、
その影響下にあった、
宮崎駿や大友克洋の作品に影響を受け、
私はそこにメビウスの作風を
読み取ったという話です。

なんだかこういうのって、
おもしろくないですか。


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