カープダイアリー第8356話「あえて名前をあげるなら坂倉です→お・ま・え・が決めろ!さかくら→今季5度目のマツダスタジアムサヨナラ勝ち!」(2023年8月25日)

お・ま・え・が・決めろ、さかくら!

赤いコールにシンクロして膝元に沈むフォークをすくいあげた。大歓声に後押しされた打球はライトへ。何歩か下がったサンタナが捕球した位置で勝負ありとなった。代走羽月がホームを踏んで今季5度目のサヨナラゲーム。お立ち台に上がった坂倉は言った。

「満塁だったんで、何でもいいから1点入れ、と思って打席に入ってました」

3万人超えのスタンドが盛り上がる中、インタビューを受けるヒーローの声のトーンは控え目だった。かつては「最高でーす!」と大声を張り上げたものだが、今回は小さく「最高です…」としか言わなかった。

場数を踏むことで多くのことを学ぶ。一度弾けてしまうと、そのあとまた冷静になってグラウンドに立つのに苦労したりする。

例外ありの「キャッチャー一本」。開幕からこの日までチームが115試合を消化する中で87試合を任された。曾澤26試合、磯村が2試合。

チームの頭脳、藤井ヘッドは石原慶幸バッテリーコーチとともに2月キャンプ開始の時点でまさにこの時期に向けての成長曲線を見越して正捕手育成システムを構築した。

開幕後の曾澤との捕手ローテもそのひとつ、4試合、長くても6試合坂倉がスタメンマスクをかぶれば曾澤を挟む。ベンチスタートの日に坂倉はそれまでの反省をまとめながら曾澤のリードを見て学ぶ。

重圧に圧し潰されかけてキャッチングミスをしたり、サインに何度も首を振られたりの日々。それでも「みんなに期待する中であえて名前をあげるなら坂倉です」という開幕前の新井監督の言葉が励みになった。

そして「苦しむことが自分の野球人生のプラスになる」と前を向き続けた。

成果が出るたびに自信になる。サヨナラ犠飛を無心で打てたのも実は自らが二盗を阻止した九回表の守りがあったから。ヤクルトベンチの策、もっと言えば高津監督の野球スタイルを読み切っていた。

マウンドには栗林、二死から四球を与えた丸山を一塁に置いて打席に中村という場面で、その初球をミットに収めると実にスムースに二塁送球することができた。

ヤクルトの先発はカープ戦限定登板が続く43歳の石川。先発左腕との対戦は6試合連続となった。

初回に龍馬のタイムリーとマットの2ランで先制したが、二回に2点、三回に1点を返されて3対3。今季8度目の先発となった森翔平は6回1/3で降板となり、互いにブルペン勝負になった。

八回には島内の出番となり、山田、村上、サンタナの中軸を連続空振り三振。スタンドからは惜しみない拍手が送られた。

坂倉がそうであるように島内もまた新井監督の下で新たな自分に出会いつつある。「打たれたくない」との思いばかりが先行して、いざシーズンを迎えると失敗の連続…同じことを切り返していてはまた今年もダメになると「マウンドでの考え方を変える」決断をしたことが吉と出た。今の首脳陣はそんなトライ&エラーを見守っていてくれる。

この日31個目のホールドをあげたことで球団日本人記録において横山投手コーチに並ぶことができた。もう実りの秋が待っているのは間違いない。

一方、秋以降を見据えたヤクルト球団はこの日、高津監督の続投を発表した。だが、内野エラーとバント処理ミスが重なりノーヒットでサヨナラ負け、今季マツダスタジアムで10戦10敗、チーム通算でも4連敗となった高津監督は忸怩たる思いでいるだろう。

勝った新井はいつものように坂倉を褒め、七回続投指令の森翔平にエールを送り、ブルペン陣の働きに感謝したあと、この日も東京ドームで巨人を圧倒していた阪神との優勝争いについて聞かれこうまとめた。

「相手のことは私たちでコントロールできませんので、自分たちはコントロールできますので、またあしたも全員野球でがんばりたいと思います」

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