カープダイアリー第8261話「4時間43分トータル242球目、巨人サヨナラ勝ちのエンディングのその先に」(2023年5月13日)

延長十二回、ツーアウト満塁ボールカウント、暫定守護神が投じた36球目は快音を残して左中間フェンスを直撃した。

午後2時開始、4時間43分の戦いに終始符が打たれて、ヒーローのブリンソンが巨人ナインに囲まれた。打たれた松本竜也は帽子を取り、うつむいたままチームメイトに迎えられた。

「いいものを持っているんだから、この経験を次に生かしてもらいたい」が新井監督の試合後コメントだった。

4時間1分と3時間50分。3日連続の延長戦となり5連勝まであとワンアウト、あと1球まで来て届かなかった。ブリンソンを2ストライクと追い込んでいただけにもうひと踏ん張りしてもらいたかった、とみんなそう思っているだろう。

巨人最後の反撃が始まるまでの4時間18分では、一塁側ベンチの原監督が何度も表情を曇らせた。

2点を追いかけるカープ打線は六回、秋山の適時打で1点差に詰め寄り、九回には大勢を2日連続で攻略した。

先頭の野間が外角一辺倒の6球目で四球を選び、代走に起用された羽月が次打者秋山の初球で二盗に成功した。さらに秋山が2球目でセーフティ気味のバントを決めて一死三塁。ここで場内アナウンスされたのが「バッターはマクブルームに代わりまして松山、バッターは松山」だった。

中日の田島からは延長十一回に決勝二塁打点、前夜の大勢からは九回、インロー真っすぐをさばいて同点打…2日続けてバットでチームの勝利を引き寄せた新井監督の切り札…

低目打ちが得意な「切り札」に対して巨人バッテリーの策は徹底していた。大城がミットを高目に固定して全球ストレート。ストライク、ボール、ファウルのあとの4球目、ポップフライにならないように上から叩いた打球が大きく弾んで、セカンドからのバックホームより早くホームに滑り込んだ羽月の左手がベースにタッチした。ノーヒットで試合は振り出しに戻った。

2対2同点のまま迎えた延長十二回、今度はイニング跨ぎとなった高梨にも襲い掛かった。

先頭の秋山が内角に食い込んでくるシュートを左前打。松山倒れて(二ゴロの松山の代走は大盛)一死一塁から龍馬がレフト線に落として二、三塁。マット申告敬遠で満塁となり代打磯村。その3球目が左ふくらはぎに当たり勝ち越し点が転がり込んできた。

7年目の左腕が顔色なしでベンチに下がったあと、前日負け投手になった菊地から堂林が左前適時打してリードを2点に広げた。

この日、大野総合練習場では栗林が投球練習を再開した。守護神不在となる中での戦いはベンチメンバー全員でカバーしてきた。

最終回、磯村に代わる矢野がショートの守備につき、控え野手はゼロになった。

投手陣は2度目の先発となった森下6回2失点のあと、戸根、ケムナ、島内、矢崎、塹江で1イニングずつつないできた。ただ島内以外はいずれも四球を出しており球数が増えた。

7人目の松本竜也は2日前のバンテリンドームナゴヤで初めてセーブシチュエーションを任され5球で片付けた。防御率1・88のターリーは2日前のバンテリンドームナゴヤで14球、前夜の東京ドームで20球(2安打2申告敬遠の1失点)の連投をこなしていた。2点差では大道の出番はない。

ただ、怖いもの知らずのイメージが強い2年目の右腕もこの日はちょっと様子が違っていた。先頭の丸をストレートの四球で歩かせて自分で自分の首を絞めた。続く坂本にレフト前に弾き返され岡本和真にも四球であっという間に無死満塁になった。

真っすぐの抑えが効かないまま大城に投じた4球目も浮いて大打球がライトへ。大盛がフェンスに激突しながらも好捕して犠牲フライで1点差。続く一死一、三塁では秋広に投じた9球目の高目のストレートもレフト前に落とされた。

さらに代打長野の初球で秋広に二塁に進まれた。申告敬遠がありまた満塁となり、もう勝利の女神もそっぽを向き始めていた。そして、みんなでつないで、つないで、この日投じた36球目、チームトータル242球目で、今後のチームの行方さえ左右しかねないエンディングを迎えることになったのである。

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