コイの街のダイアリー8439話「侍ジャパンに小園海斗あり、開幕一番16打席連続無安打からアジアプロ野球選手権12打数6安打まで」(2923年11月18日)

東京ドームに快音が響いて3万7000人を超えるプロ野球ファンがいきなり沸いた。初回、内野安打と四球で無死一、二塁となって小園海斗先制タイムリー。オーストラリアの先発右腕、J・ブシュルに対してストライク、ファウル、ボール、ファウルのあと甘く入ってきた5球目をセンター前に弾き返した。
 
「特にランナーを置いたバッティングは、プロで何年もレギュラー貼っている選手より上手いんじゃないか」(井端弘和監督)
 
侍ジャパン先発、早川隆久の好投もあり、試合は完全に侍ジャパンペース。小園海斗は三回の一死一塁でも右前打を放ち相手のスキを突いて二、三塁の形に持って行った。動揺を隠せない相手のバッテリーエラーでさらに三塁に進み、四番万波中正の三塁打でホームを踏んだ。続く四回には一死満塁で押し出し四球。4対0と一方的な展開になり、結果的には10対0、八回コールドで日本3連勝…
 
侍ジャパンU-15、U-18での経験を積んだ小園海斗。今回の若手主体の代表組でも、強化合宿入りした時点から地に足がついていた。
 
11月12日に宮崎市のSOKKENスタジアムで行われたカープ若手との練習試合では「五番ショート」で先制タイムリーを含む3安打。試合後には新井監督が「侍のショートとキャッチャーはいい選手ですね。いい選手だと思いました。どこの選手?」のギャグをかまして話題になった。
 
井端弘和監督も小園海斗を代表メンバーに招へいする以前から、高い評価を口にしていた。
 
本番でその「期待」が現実になる。カーネクストアジア野球チャンピオンシップ2023、第1戦(16日)ではチャイニーズ・タイペイの好投手によるリレーの前に「二番ショート」で4の1、4対0完封勝利発進に貢献した。
 
第2戦(17日)では韓国に2対1で競り勝つ緊迫した2時間43分の中でやはり二番ショートで4の3、そのバットで先制点をお膳立てした。

相手がどんな投手なのか?も分からないし、ストライクゾーンもかなり違う、打席ごとの一発勝負、3試合計13打席で12打数6安打1四球3打点…
 
こうした目覚ましい活躍を一番喜んでいるのは新井監督ではないか?
 
3月31日、神宮球場、ヤクルトとの開幕戦で「一番ショート」小園海斗。結果は4タコ、翌日から八番に下がり、それでも開幕から16打席音無しでわずか10試合の“お試し期間”だけで二軍降格の悲哀を味わった。19の1、バントもできない、守れない、覇気がない、の3無主義ではそれも必然。
 
再びマツダスタジアムにその姿が戻ってきたのは7月4日でチームはもう74試合目を迎えていた。その2日後、6日の阪神12回戦での二回の第1打席。二死一塁で村上からライトスタンドへ1号2ラン。“起死回生”とはこういうことを言うのだろう。
 
オリックス、DeNA、ソフトバンクとの競合の末、ドラフト1位で広島にやってきた小園海斗は「甘さ」を捨てきれないが故に、何度も遠回りしてきた。
 
回りからいろいろなことを言われても結果的には効果なし。それが新井監督の下でのプロ5年目でやっと本来の姿になりつつある。本気で変わろう、と思わないと結果は出ない。やがて周りからも何も言われなくなる。
 
プロでは初めて身にまとう代表ユニホームは、今後の野球人生を考えた上での大転換期となるシーズンの総仕上げ…
 
あす韓国と決勝、それがWBC世界一に始まり、日本シリーズ阪神勝利に終わった国内プロ野球にとって今年最後の大一番になる。その舞台に立てるのは幸せなこと、だ。
 
この日は出番なしだった坂倉将吾とふたり、このあとJからCに戻っても「いい選手ですね」と、関係者からもファンからも言われる存在であり続けられるように、必死でボールを追いかけていれば次回WBCはすぐにやってくる。

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