カープダイアリー第8322話「オールスターゲーム2023、打席に立つ秋山翔吾は1年前にどんなことを考えていたのか」(2023年7月19日)

マイナビオールスターゲーム2023第1戦。バンテリンドームナゴヤの大型映像装置には「二番・センター秋山」の名が浮かび上がった。

初回の第1打席ではさっそく佐々木朗希との年の差注目対決になった。「三振狙い」の21歳右腕はフォークと158キロの速球で、最後はスライダー。いきなりアジャストするのは難しく、バットが空を切ってカープ秋山三振デビュー。

四回の第2打席では田中将大との同年対決。カーブ、スプリットと次々に持ち球を繰り出す右腕の前にここも空振り三振。迎えた六回の第3打席で山崎颯一郎の147キロをレフト前に弾き返した。

2015年から19年まで球宴常連組だった秋山も、赤いヘルメットで華やかな場に戻ってくることはイメージしにくかったのではないか?

ファン投票、選手間投票によるダブル選出。ただ、第2戦がマツダスタジアムであるのにファン投票選出は秋山だけだった。

新井監督1年目で話題豊富であっても2月のキャンプの時点からグッズ売り上げは最盛期の2、3割止まり。一番よく売れるのが監督グッズ、あとは秋山、栗林が健闘している程度だった。その傾向は長期に渡っており、今回の一件でまたそれが証明された。

ファン投票結果が発表されたのは6月28日。会見で秋山は「ちょうど1年前、車で東京から向かっていて、こういう日に発表できるのは嬉しい」と話した。

それはきっと心の底から湧き出た思いだったはずだ。メジャー挑戦からNPBでの新たな自分探しへ。その先にいったいどんなことが待っているのか?広島ってどんなところなのか?不安ばかりが先立つ中でのリスタートから1年ちょっとで、また国内最高峰の面々が集う空間に戻ってきたのだから…

ここで特筆すべきは秋山の“広島移住”を菊池ら選手レベルの声によって実現したことだ。

セ・パ12球団が10球団、8球団に再編されそうになった2004年、当時の巨人オーナー、渡辺恒雄氏は「たかが選手が…」とうそぶき、同年に長野オリンピックスタジアムで開催された球宴の現場では「最後のオールスターになるのでは…」という声さえ上がっていた。

経営者と選手とファンの関係はどうあるべきなのか?

その答えは今も出ていないが、確かに親会社の存在しない小さな組織のカープ球団だからこそ身軽に対処できる事案もたくさんありそうだ。選手が希望してオーナーが“いいね!”と言えばそれで決まり、他の部署でよく検討した上で…とはならない。

逆に新井監督や金本知憲氏はそのシンプルな組織構造の中で移籍する道を選ばざるを得なかった。

今シーズン開幕目にNHKが「レジェンドの目撃者」(再放送あり)で金本知憲氏をスタジオに呼び込みその鉄人ぶりを紹介していたが、流されるVTRは阪神のユニホームばかり。一方でカープ時代に通ったトレーニングクラブ「アスリート」の映像は頻繁に使われた。

NHKが忖度したか。いやおそらくカープ球団からNGが入ったのだろう。ジャニーズ性被害事件が国際問題になって久しいが、30年以上も事件が表沙汰にならなかった最大の理由はジャニーズ側のメディアコントロールがある。同じことは広島カープ村でも頻繁に繰り返されており、シンプルな球団構造は正に両刃の剣ということになる。

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