カープダイアリー第8463話「限りなく透明に近いドジャーブルー、その風がマツダスタジアムに吹く日、大谷翔平青空の下で入団会見」(2023年12月15日)

カリフォルニアの空と、青いネクタイのスーツ姿。そのあと新品のユニホームに袖を通し、LAの帽子をかぶると、限りなく透明に近いドジャーブルーが誕生した。

そう、どこまでも純粋にベースボールと向き合っていく。ノートに日々の目標や反省を綴る野球小僧だった大谷翔平は、とうとう物語の最終章の舞台にに立った。

Until the last day of my playing career, I want to continue to strive forward not only for the Dodgers but for the baseball world.

6日前の早朝(日本時間)に、自身のSNSでそう記した。選手として最後まで、何があってもここでやり切るのだ、と…

恩師の栗山英樹さんは奇しくもこの日、岩手県花巻市の花巻東高にいた。大谷翔平の後輩たち、集まった町の人たちに向けて講演したあとカメラの前でこう話した。

「まさか、この花巻で見るとは思わなかったので、過去いろんな経緯の中で…うん、とてもちょっと感じるものがあったんですけど、良かったなぁっていう…。まあ、いろんな中でほんとに、ああやってすごく嬉しそうにしゃべってますけど、大きな壁をたくさん乗り越えて、元気でああいう会見をしてくれているっていうのは(何度も頷きながら)すごく嬉しかったです」
 
一瞬、涙をこらえる元指揮官。

その優しくも厳しい眼差しが「リアル二刀流」Two-Way-Playerを育んだ。

この日の講演でも生徒たちは「逆算」の大切さを伝えようとした。WBC決勝で併殺打のあと世界一へのラストシーンがマイク・トラウトvs大谷翔平となった時点で、栗山英樹さんはその「最高のエンディング」を直観したという。そう、すべて「逆算」。「マンガの世界」を「現実」に替えたのも「逆算」…
 
この特別な物語の始まりと終わりを、ロサンゼルス・ドジャース関係者も早くから予想しており、大谷翔平のアマチュア時代、日本ハム時代、そしてメジャーリーガーになってからも、ずっと近い距離でマークし続けてきた。
 
WBCの舞台での傑出した対応力、勝負に対する強靭な意思。公式戦での常にひたむきなプレー。グラウンドでの立ち振る舞い。投手かスラッガーか?どちらかひとつでも十分なのに、それがTwo-Way。
 
17、8歳の逸材はすでに29歳になっていた。10年越しのラブコール。ドジャースタジアムのセンター後方にある広場で続く入団会見。壇上に集まった関係者のひとり、アンドリー・フリューマン編成部長もまた、やはり栗山英樹さんと同じ目を持っていた。
 
「彼は世界中の子どもたちに影響を与えてくれるでしょう。そして私たちは日本の野球ファンもドジャーブルーに変えていきたいと思っているのです」
 
特別な力。それこそが限りなく透明に近いドジャーブルー…
 
栗山英樹さんは、テレビカメラの前で現実的な話もした。
 
「ここからが本当のスタートなんで、ここまできたら自分の本当に好きな野球ができるはずんだんでね、自分の思ったとおり、周りに関係なくチームが勝つために本当の意味で集中して野球ができると思うんで、それがどういう姿なのかほんとに楽しみにしています」

「きょうも言ってましたけど、基本的には開幕に間に合うようにいくわけで、どちらかというと、ひとつのことをやる時っていうのは、逆にふたつが本質なのでめちゃくちゃそこに集中するかというと、逆に彼にとっては難しさも存在すると僕は思ってるんで、そういったものもすべて超えてね、なんかそういう理由もいろいろ超えちゃうぐらいの、活躍して欲しいなって個人的には思っています」
 
大谷翔平のこの日発した様々なメッセージは、今回の7億ドル移籍の関係者はもちろん、ロサンゼルス・エンゼルス時代の仲間たちとそのファンにも、日本ハム時代の仲間たちとそのファンにも、日米の多くの人たちと野球を愛する世界中の地域に届けられた。
 
その影響力の発信元は唯一無二であり、ただひとり。そのエネルギーの源は今も昔も変わらない。
 
だた「野球が好きでうまくなりたい」それだけ…
 
きっと多くのメジャーリーガーの心にもその思いは届いたに違いない。おそらくこれからもメジャーリーグ自体が様々な変容を遂げるだろう。
 
日本国内への影響も計り知れない。サッカー、バスケ、ダンス、バドミントン、テニス…高校スポーツの多様化により劣勢に転じて久しい野球人口の現象に歯止めがかかることが期待される。
 
プロならなおさらでこの日、マツダスタジアムであった契約更改後の会見でカープ大トリを務めた森下暢仁はこう切り出した。
 
「大谷選手より多くいただきました!1016億円です!」
 
ジョークはさておき、来季5年目の推定年俸は2000万円アップの1億3000万円。そして国内二刀流の先頭を行く右腕にも、きっとメジャー挑戦の夢はあるはずだ。その姿もまた、限りなく透明に近い赤…
 
栗山英樹さんは、花巻東の生徒たちに「一番伝えたかったことは?」と振られて「できないという言葉は、頭の中からなくしてください、という話をしました」と答えた。その思考回路の必要性は森下暢仁らプロ野球選手にも共通のものだ。
 
カープナインにとっては総監督のような立場にある黒田博樹球団アドバイザーにも、ドジャーブルーの血は流れている。
 
ロサンゼルス・ドジャースでの4年間で41勝。その剛腕に敬意を表するドジャース球団が、リアル二刀流の原点、マツダスタジアムで公式戦を行う日は来るのだろうか…
 

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