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名取芳彦「不安の9割は起こらない」

この本をの背表紙を見つけた時は、小さなことから大きなことまで数々の悩み事があって、それを切り分けようにもどうしてよいか分からない状況だった。何かをやろうとすると、他の何かが気になって、集中できなかったり。そんな状況だった。夜のコンビニにちょっとだけ出かけて、店内をうろうろしているうちに3冊並んでいるのを見つけた。手に取ると、森の中にやわらかい光が差し込む、心が穏やかになるような写真の表紙。

大丈夫、全部うまくいく。

まさに今自分が誰かにかけてもらいたい言葉だった。

すぐに購入を決めた。家に帰って開くと、著者の写真は見るからにお坊さん。ちょっとお説教じみた話なのかな、と考えたけれど、ぱらぱらとめくると、「マウンティング馬鹿」には「慈愛のまなざし」作戦が効果的、という言葉が目に飛び込んできた。集団生活をしていると、そういう人に会うことが多い。自分の心が落ち着いている時であれば気にならないのに、何か不安があったり弱気になっていたりすると、そういうのが攻撃的に見えて、反応してしまいがちなのだ。そんな風に人を上から目線で見て、言葉で威圧するような人のことを「マウンティング馬鹿」なんて表現するとは、ちょっとスカッとする。説教じみた話とはほど遠いだろうな、と思った。
読み始めると言葉の使い方が面白いだけでなくて、優しさや心の弱い人への理解に満ち溢れていて、寄り添いつつ、発想の転換を促してくれるような、そんな話が書かれていた。

著者経歴を見ると、江戸川区にある元結不動密蔵院の住職。「参加するお寺」「身近に感じられる仏教」をモットーに、ご詠歌や写仏、コンサートや浪曲などを開催し、幅広い世代に仏教徒親しむ機会を提供しているという。この本でもところどころに仏教の教えが書かれているけれど、「マウンティング馬鹿」の後に読むと、不思議と素直に受け入れられるものだ。

因みにマウンティング馬鹿への対処法については、数ページを割いて詳しく書かれている。相手のパターンによって、こんな風に考えてこんな風に対応すればよい、という感じ。
ただ本に向かって読んでいるだけなのに、カウンセリングしてもらっているような、そんな気分になれる本だった。

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