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(一)コンクール編 ②

「シナリオライターとしてデビューするには、どうするか?」
 と問われ、誰もが最初に思い浮かぶ方法としては、新人シナリオコンクールに入選して、この業界の人々に名前が知られ、華々しくデビューするというのが定番でしょう。
 しかし、意外に思われるかもしれませんが、この業界、シナリオコンクールなど、ほとんど注目されていません。
『ドラマ』『シナリオ』という専門誌には大きく掲載されますが、大手の新聞には、小さく隅の方に掲載されるかスルーされるだけで、芥川賞、直木賞のように、テレビのニュースで大きく扱われることはありません。テレビ局主催のメジャーシナリオコンクールでさえそうです。
 そもそも、受験エリートが大半を占めるテレビ局員には、シナリオコンクールを、芥川賞、直木賞のように、世間で注目されるような大きな賞に育てようという柔軟な発想をする人は、残念ながらいません。
 それとも、テレビ業界には、自社イベントは宣伝してはいけないという、暗黙の了解でもあるのでしょうか? 
 映像メディアなのに、もったいないことです。
 文藝春秋の社員で、自分の会社で、芥川賞、直木賞というビッグイベントを主催していることを知らない人はいないでしょう。
 しかし、テレビ局員の中には、自分が所属するテレビ局に、新人シナリオコンクールがあることさえ知らない人もいました。
 映像の業界では、それが現実です──。

「シナリオは、100%技術です」
 これは、映画監督でありシナリオライターでもあった、新藤兼人氏の言葉です。
 小説の場合は、技術に走った小説ほどつまらないものはないそうですが、ことシナリオに関しては、技術がすべてとは言わないまでも、かなりのパーセンテージを占めています。
 極論すればシナリオは小説と違って、文章のうまい下手は関係なく、文章を書くことが好きな人で、シナリオ特有の技術さえマスターすれば、誰でもなれます。
 シナリオの書き方の基本などは、その気になれば、三ヶ月から半年でマスターできます。残りの期間で、プロとしてやっていくための応用力をつければいいだけのことです。
 その後、プロとしてデビューし、この業界で生き残れるか、生き残れないかは、あなたの努力、腕、運次第です。
 今や、ライターという職業にとって必須とも言っていいキーボードのタイピング、いわゆるブラインド・タッチ(注)でさえ、私の経験から、毎日1時間練習すれば、1ヶ月でマスターできます。しかし、テレビドラマを観ていて不思議なのは、時代劇で馬に乗れるのが必須なのと同じくらい頻繁に見かけるシーンなのに、これができる俳優さんを見たことがありません。
 調査によると、日本の社会人の約7割の人が、このブラインド・タッチができないそうです。

(注) 目の不自由な人の協会からクレームがきて、“モーツァルト・タッチ”と呼ぶそうですが、あまり浸透していないようです。モーツァルトは、ピアノの鍵盤を見ないで弾けたことから、このネーミングがついたそうです。私も、キーボードを見ないで、手書きの2倍の速さで打てますし、ひらがな入力、ローマ字入力、両方できます。そんなこんなで、ペンネームにしました。

 一般社会で、超エリートと言われているのは、医師、弁護士でしょう。
 医師になるためには、医大卒業まで6年かかります。弁護士も、大学、司法修習生として勉強するので、5年以上かかります。 
 現代の医師は、病気の種類も多く、新しい医療機器の操作も覚えなくてはいけないので、一人前の医師になるのには時間がかかります。弁護士も法律が複雑多岐にわたり、これまた膨大な知識が必要です。
 その点、シナリオライターは、基本的なテクニックと、応用力をマスターすれば、3年あればプロとして十分通用します。あとは、プロの階段を1段ずつ上がって、レベルアップしていけばいいのです。
 この記事を読まれている方は、きっと一日でも早く、プロのシナリオライターになって、あなたの名前と作品を世に知らしめようと思っている方々ばかりだと思います。そのくらいの大それた野心がなければ、過当競争のこの業界では生きて行けません。
 時代は一日も早く、あなたのような新しい感覚を持った、優秀なシナリオライターの出現を待っています。
                  
      ③に続く

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