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とあるITエンジニアの転職事情

 この度、2回目の転職活動を終えて、3社目への移転を控えた、まもなく社会人6年目のITエンジニアです。執筆時点2社目に勤めていますが、1年という短い期間で再度の転職を行うに至った経緯と、転職中に感じたことを書き記すために筆を執りました。
 転職活動の話はこれから活動予定の方の助けにもなるかなと思うので、そこだけ見たい方は、"転職経緯"と"1回目の転職"、"2回目の転職"、"転職活動で感じたこと"をご覧ください。参考になれば嬉しいです。

転職経緯

 結論から述べると、業務内容のミスマッチが一番の原因です。
 そもそも1回目の転職理由がなんだったのかというと、元々やりたかった領域へ挑戦するためです。僕は元々AR領域に興味がありました。1社目もそれが理由で選んだ節はあるのですが、配属ガチャでそれが叶わなかったことがずっと引っかかっており、これ以上年次を重ねたら本当に挑戦できなくなると思い、一念発起した次第です。
 2社目である現職の会社では、AR領域の仕事があることが予めわかっており、そこに着任することを了承(口約束を信じるな)してもらった上での入社となりました。給与面の条件は、未経験領域での業務ということで僕が折れる形(要は若干下げた)で採用、1日の所定勤務時間は7.5時間から8.0時間になりましたが、固定残業がなくなるのでトントンだろうと自分を納得させてのチャレンジでした。
 2回目となる今回の転職理由はもうお分かりかと思いますが、元々やりたかった領域への挑戦や、未経験スキルを積むという目的が果たせないと見切ったからです。

初めての会社

 1社目は、昇給スピードが遅いのと社内システムが使いづらいこと以外は、とても良い会社だったと思います。もし学生から進路相談を受けたならば、僕の経験部署であれば責任を持って勧められます。業態としてはSES、お客様先常駐です。
 中規模の会社で、規模は小さいながらAR事業を持っていたので、それがきっかけでの入社でした。大手SIerのグループ会社(気づいたら子会社化されましたが)なので、潰れない安心感もありました。
 配属に関しては、AR領域をやりたいと面接でも配属前の面談でも伝えたはずが、それが叶う部署とは違う部署に配属されました。大学でpythonを弄っていたのが、決め手だったそうです(要は経験者が欲しいからくれという流れ)。
 良く言えば裁量の大きい部署でした。やったことがないことでも、とりあえずやってみてのスタンスで、自力で調査して実装して、お客様に提供するを繰り返す毎日です。割と早い段階から提案業務もしていました。当時は理解していませんでしたが、実は市場価値が高い分野の仕事をやらせてもらっていて、どこでも潰しが効くスキルをバリバリ付けさせてもらっていました。退職するまでの4年間、これだけやらせてもらえていた環境がどれだけ有難いことであったかは、この後に知ることになります。
 2年目秋の時点で1人常駐が始まります。1人常駐になった経緯は、OJTで付いていたバリバリ優秀な先輩が転職していなくなり、フリーになったからです。
 同期で自分だけ先輩おらんくなったが!?   他に1人常駐いないぞ!?   という状態です。
 それとなく仕事をこなしていき、お客様から評価されていると本社の上司経由に教えてもらいます。3年目を終える頃には、職務経歴書と自己肯定感が肥大化していきます。同期と横並びの昇給であることに不満を持ち始め、ここで薄らと転職を考え始めます。

1回目の転職

 4年目になる頃には転職サイトに登録しており、日々送られてくる大量のスカウトを流し見します。給与が良くて、経験が活かせる求人や、元々ゲーム業界も行ってみたかった気持ちもあり、エンタメ業界のバックエンドエンジニア求人なんかも良く見ていました(引っ張りだこの気分で気持ちがよかった)。
 色々良さそうな求人がある中で、ARという文字が一番大きく映っていました。
 5年目ならまだいける、これを逃したらもう無いと、思ってしまった。
 挑戦すべきという考え自体は間違っていなかったと今でも思っていますが、転職における精査が甘く、無味で地獄な1年を過ごすことになる悪魔の囁きでもあったわけです。
 スカウトということもあってか、割とあっさり内定が出ました。となると、自社への転職交渉を始めることになりますが、かなり引き止められました。
 すぐには用意できないけど希望の案件がないか探す。評価も良いからここから昇級も順調にいけるはずだから。君がいなくなるのは惜しい。
 涙ながらにそう言ってくれた課長の手をなぜ離してしまったのだろうか。肥大化した自尊心が、悪魔の囁きに魅了された心が、痛む良心を押さえ込んで聞く耳を持たせなかったのです。ならもっと早く言ってくれよ、出まかせ言うなと突っぱねたのです。
 優しい上司が居て、現場環境は良くて、仕事もたくさんできて、本当に良い会社でした。
 これは余談ですが、当時の案件で僕の後任があまりにも見つからず、実際に退職するまでに3ヶ月半かかった上、有給消化しきれなかったのは運がなかったです。ちなみに、着任した後任は3ヶ月もたずに離脱したそうです(スキル的に怪しそうだったもんな……)。

2社目での生活

 肥大化した自尊心と希望を胸に、2社目の門を叩きます。ここもSES業態です。1ヶ月は案件が決まるまでの自習期間ということで、これまで縁がなかったフレームワークを利用した開発を練習していました。社内自習室では、自分より少し前に入社していた第二新卒の人が、UnityでVRゲームの開発をしていました。これを見て、自分もこの領域ができる!   とワクワクしてしまいました(僕自身はオブジェクトモデル制作のセンスがないことは大学で判明していたので、情報処理の実装、バックエンド+インフラ専門でいきたいと考えていました)。
 担当営業が決まり、案件着任に向けての活動が始まります。

営業「業務系webアプリの開発エンジニアとして、お客様先に行ってもらいたいです。新規案件なのですが、1人から始めて、案件拡大を狙っていってもらいたいです」
僕「え、なんて?」

 AR領域やるって話やったんですけど?
 いきなり1人常駐?
 未経験エンジニア枠で採用しておいて案件広げてこい?

 すぐに着任できるAR案件がないので、まずはベーシックな開発エンジニアとしてのスキルを付けていただきながら、期をみてスライドしていきましょうとのことでした。まあそう簡単に事は運ばないか、まずは実績と信頼を勝ち取るぞ、と自分を納得させたのが今となっては恨めしい限りです。

 そうして就いた客先がやばかった。

 まず開発エンジニアとして、実務未経験のNode.jsが使えると聞いていたが、渡された仕事はAWS+terraformによる環境構築でした。実務経験のある領域なので、特に目新しさはない。

 未経験スキルを積むとは?

 頼まれた仕事としては、アプリインフラ部分の改善です。なんでも、環境リリースの度にとんでもない工数がかかっていて、ダウンタイムが大きくて支障が出ているんだそう。
 なるほどわかった、とりあえず中見てみるからアカウントちょうだい。

客先「いや、君は社外の人だから本番環境は見せられない」
僕「……え?」
 いや現状がどうなっているのか見ないでどう判断しろと?

 最終的に4ヶ月でこの現場を離れることになります。具体的に何があったのか書くと、4ヶ月の内容とは思えない量になる(友人談)ため、一部抽出して箇条書きにすると以下のようなことがありました。夢と希望に満ちていた反動で精神を壊しかけました。

・未経験スキルを積めない
・本番環境を意地でも見せない(管理がずさんすぎて、開発環境と本番環境にかなり乖離があることが後々判明して発狂する羽目に)
・自社、他社の人間の強い隔たり
・多量の残業(36協定は守ってたけど通勤で3時間以上取られてるから余暇がない)
・こちらの改善提案をテストしたくないからという理由で全て却下
・人格否定用語の飛び交うMTGおよびチャット(←証拠残ってるぞ?)
・触ったことがないフレームワークのメジャーアップデートを明らかに短い納期でやらせる(アプリ仕様の不明点を聞くも、わかる人がおらずたらい回し)

 そんなことがあり、我慢できず止まらない涙を流しながら営業に訴えかけました。何もやらせてもらえない、使い倒し気質なことに対する鬱憤が爆発してしまいました。
 こんなことのために、お世話になった前の会社に別れを告げてきたわけじゃない(←マジで言った)。申し訳なくてたまらない気持ちでした。
 その現場から引き上げてもらえたのは不幸中の幸いではありましたが、削れたメンタルで仕事ができる気分ではなかったし、疲労も溜まっていて纏まった休みが欲しかったのもあって休職も視野でした。ただ、経歴に休職期間が刻まれて豆腐メンタルの烙印を押されるのは嫌だったので、次の案件にまもなく着任しました。本当に苦しかったです。

 次の案件は穏やかな現場でした。
 残業がほぼ無し、休みは取りやすく、ハラスメントが飛び交うこともなく(これが普通)、職務を全うしながら削れたメンタルを回復するには最適な環境でした。また、新人を1人抱えることになったのですが、この業務は僕にとって新鮮で、素直な子なのもあってそこまで苦労することもなく楽しかったです。
 気がかりなのは、この新人君はテストしかやらせてもらえず(現在訳あって担当案件が別々になっている)、取引先には働きかけてはいるが、開発経験をろくに積めていない様子は観測している。業務時間の多くが目的意識を持ちづらい自習時間になっていることが多い。このままでは何もスキルや実績がないまま3年目ぐらいになって、次の現場でやれることもないというスパイラルに陥る可能性は十分にある(ここで自分が恵まれていたことに気づく)。
 そして自分も、AR領域どころか、またも未経験スキルや深い粒度の経験も積めない環境でした。前職に比べて、システムの基本設計に関する提案もできず、仕事レベルが下がった状態でした。この環境で働き続けることも、給与も納得できないと思うようになりました。

 程なくしてメンタルが正常に戻った僕は思いました。この会社で2年、3年と過ごしていたら何もない30歳になる。

 AR領域への思いを断ち切って、重宝されている自身の経験を活かしたキャリアプランを進めようと決心しました。

2回目の転職

 そうして2回目の転職が始まります。
 ただ始めた初期は、上記のような決心はなく、この会社ではダメだよね、ぐらいの意識だったので、おもろい仕事ないかなと、またスカウトベースで求人を探すぐらいでした。その流れで2社受けて、痛感したのが年次の浅さと意識の低さでした。
 職務経歴書上では、2つの領域を3年半と1年やったことになっており、うちでやっていくには浅いと言われました(スカウトしたのそっちだが???)。あれもできます、これもできます、じゃダメなのだなと痛感しました。それまでは、技術は、課題解決という目的をこなすための道具でしかないというスタンスでした。しかし、この技術をもって、この課題解決をしていきたいという、領域を絞った考え方をしなければ成果に繋がらないだろうと考えるようになりました。
 意識の低さは、仕事に希望を見いだせていなかったのもありますが、将来設計がぼやけていたことも要因だったと思います。
 そして上記の決心に至ります。
 決心をしてからの転職活動期間は2ヶ月でした。もっとかかると思っていましたが、結果的には早期決着した印象です。
 一番多いときは、ダブルヘッダー含む週7面接(面接のダブルヘッダーってなんやねん)を実施して、受けた回数は延べ30回ほどになります。正直疲れましたし、どこがどの会社の面接だったのかわからない状態の時もありました。これは本当に良くないです。
 なんとか(名前を書くと記事に注意書きが出る)という数年前の流行病のおかげで、オンライン面接が普通になったこともあり、このペースで受けることができてしまったというところもありますね。
 短期間にこれだけ面接を受けて、見送りと選考通過を繰り返すと、なんとなく自分の特徴が見えてきますね。例えば、興味が薄れた企業からは洩れなく見送りをされましたが、明らかに態度に出ていたと思います。自分で思っている以上に出やすいんだなと思いました。友人に話したら、"知ってる"と返ってきました。よく僕を見てくれる良い友人を持ちました。
 次の勤め先には長く居たいと思っていたので、元々妥協する余地は一切なかったですが、最終的に内定を出していただいた5社の中に一番行きたいところが含まれており、そこに内定承諾して無事終了しました。

転職活動で感じたこと

 いろいろなことを視野に入れて希望領域を絞っていないことが原因で、求人の絞り込みができていなかった点や、スカウトベースで完全に受け身な点が良くないと感じていました。
 そこで転職サイトで求人を自分から探しに行って相場観を見る活動と合わせて、エージェントを利用することにしました。まぁエージェントを利用することも受け身と言えば受け身なのですが、求人を絞ってもらうのが大事と考えて、その先の選定は自分で吟味して、就職活動は挑戦者側の意識を持って臨みました。
 最終的にエージェントは4社使いましたが、うち2社は良かった、他2社は全然ダメでした。
 良かったと感じたエージェントは、対話ができる方でした。自分の示した意向に対しての意見が返ってきますし、その上で求人を絞って提案してくれたので、良く吟味できました。書類審査も、かなり高い確率で通っていましたので、精度も良かったです。やりたい業務の方向性も、ほとんどミスマッチしていなかったです。
 ダメだと感じたエージェントは、相槌のみであまり対話ができなかったです。そして大量の求人を出してきて、とりあえず少しでも興味があれば応募しましょうと勧めてきます。正直これだと、転職サイトにある無数の求人から探すのとほぼ変わらず、エージェントを通している意味があまりなく非効率です。初手でこれを踏んだので、こんなもんなのか? と思いながら、呆気に取られながら出してしまった求人では書類が通る確率は20%程度で、よくよく見たら求められる経験が合っていないとか、僕の意向に合っていないとか、そんなものばかりで精度が悪く、通らないのは当然みたいな感じでした。初期の説明で、何十社の応募で、20パーセント程度の書類通過率、といった指標も出されましたが、確かにこのやり方をしていたらそうなるよな、と終わってみて思いました。また面接に進んだ企業に関しても、話を聞いてみたら求人の内容と違うとか、詳細を聞いたらやりたいことと違うとか、不要な骨折り損をする羽目になりました。これを機に大量に求人を出してくるところは切って、絞って出してくれるところで吟味するようになりました。
 社名を出すと何か言われそうなので、傾向だけまとめて書きます。

○良かったエージェント
・領域を絞った上で、さらに求人を絞って提案してくれる
・こまめに連絡してくる
・代理人ではなく、担当エージェントが連絡してくる
・個人の見解が出せる
・企業ごとの面接アドバイスがある
・求職者の活動進捗の把握を徹底している

○悪かったエージェント
・多量の求人を出してきて、とりあえず数を出しましょうと言ってくる
・初回の面談以降、連絡がこない(来てもたまのメールのみ)
・代理人が良く出てくる
・個人の見解が出せない
・企業ごとの面接アドバイスがない
・話が表面的で薄っぺらい

 面接回数が不必要に多くなった原因は、ダメなエージェント経由でたくさん応募を出したせいです。数をこなすのは面接練習をするにはうってつけですが、前述したとおり、訳が分からなくなります。本命が見えてきたらやめた方がいいです。興味が薄い企業は、お互いのためにさっさと辞退しましょう。
 あと、せっかくのオンライン面接なので、面接内容は録画しておいたほうが良いです。並行して受けていると、問われる質問の違いから、あの企業ではこれ話したけど、あれは話してないが普通にあって、忘れます。後から見返せるようにしておくと、選考が進んだ際に、前に自分が何を話したのか見返すことができる点で良いです。嘘エピソードは話していないので、辻褄が合わなくなるとかはないですが、以前お話しされていた件について、とか言われて、どんな話をしましたっけ、となるのは微妙ですよね(1回やらかしました)。
 また、面接官が言っていた情報も見返したほうが良いです。後の面接における逆質問の際に内容が明瞭になります。最初の時は録画してなくて、面接内容が混同して何も思い出せなかったです。
 これ良かったなというテクニックというか、話の引き出し方みたいなのが一つありました。

 現職では、最初に聞いていた内容と違う業務を任されていて、積みたいスキルを積めなかったため、次はそういったことがないようにしたい。また、次の会社では、できるだけ長く働きたい。

 これを言うようになってから、それ以前と比べて、企業が自分に任せようとしている業務内容をかなり細かく話してくれるようになったと思います。話した内容が実際と乖離していると、採用してもこいつ辞めちゃうって思いますから、ある意味当然です。苦い顔しながら実情を話してくれるところもありました。言ってくれる会社は良い会社ですが、採用ノルマとかいう悪しき文化があるところだと平気で嘘つくので、矛盾を見つけたら詰めましょう。
 ちなみに、今の会社でそれは叶えられないのですか?   とほぼ必ず聞かれます。当たり前です。僕が面接官でも聞きます。なんとかしようとした行動の遍歴は話せるようにしましょう。話せないなら、もう少し今の会社で足掻いた方が良いです。足掻いた結果ダメだったから移動するんだ、と言えないとダメです。
 もうあとは、企業研究して気になるところを質問していって、なんとかなれーっと内定通知を待つばかりと言った感じです。

まとめ

 以上、名もなき一般エンジニアの転職エピソードになります。
 念のため断っておくと、本当は転職はしないほうが良いです。リスクはあるし、疲れるし、組織内での立ち位置や人間関係、信頼など、全てが構築し直しになります。一つの会社に勤めて、バリバリ働けるほうが良いです。しかし、そんな会社が多いかと言われたら少数派であることは事実ですし、やりたいことが変わることもあるから、そういう自己実現をするための活動が転職活動だと思います。
 転職活動をする上で、僕が感じた良かった点と悪かった点、気づいた点をここまで記載してきましたが、誰かの役に立ってくれたら嬉しいです。まだ次の会社で働き始めていない段階なので、この転職が成功となるか否かは、未知数です。僕としては、次回作がないことを願っています。
 書いていて気付いたことがありますので、あとがきとして記載しますが、自分で自分を納得させるというのは良くない、と思います。悪い意味で聞き分けが良いと損をします。実際に損をしたので、良い意味でわがままになったほうが良いと個人的に思います。やりたいことがあるのであれば、貪欲になったほうが上手くいくのではないかなと、そんな言葉で締めくくらせていただきます。

 最後までご覧いただきありがとうございました。


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