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ちゃんこMUSICについて思うこと(上)


1. はじめに

2024年1月20日。
静岡市民文化会館(中ホール)にて、miuzic Entertainment主催「ちゃんこMUSIC Vol.1」が開催された。miuzic所属のROSARIO+CROSS、no Filter、Nine chocolates、サイレントラプソディに加え、miuzic NEXTからのえるが、そしてオープニングアクトにmoZkuが出演した。まさにmiuzicフェスといった様相だった。

ちゃんこMUSICフライヤー
開演前。雨のシズブン中ホール

この企画が公に発表されたのは、9月11日のことである。公演当日が翌年の1月20日なので、4ヶ月も前に告知されたのはmiuzicのイベントとしてはかなり早い方で、もう既に練習が始まっているというのもメンバーづてに聞き、事務所も演者もこのイベントに相当気合いが入ってるのが窺い知れた。
フライヤーにはこんな宣伝文句が添えられていた。

「これはただの対バンフェスではない!?」
「推しも夢も不安も希望もフルちゃんこにして2024年を駆け抜けよう!」

一体何のことやらである。
聞けば、つまり所属グループのメンバー総シャッフルで曲ごとにユニットを組み各グループの曲を歌うというもので、そのごった煮感を「ちゃんこ」と称しているのだった。
チケットの値段もまあまあ高額ではあったのでどうしたものかと考えた。後述するが、僕は常々、所属グループだけで構成されるイベントの連続に、言葉は悪いが「食傷気味」な気持ちを抱くことが少なくなかった。そしてそれは今回の「ちゃんこ」においても同じで、はじめその告知を見た時、「またか…」と思って少し落胆したのを今でも覚えている。ちょうどその頃「静岡アイドル大運動会」と銘打ちつつも実際にはmiuzic所属のアイドルしか出てない運動会のイベントが行われようとしている時期だったから、余計にそれを感じたというのもあった。
チケットは正直悩んだ。まず企画自体にまったく魅力を感じなかったので、席種というよりは「行く・行かない」というレベルで悩んだ。しかし、開催の1月20日といえば自分の誕生日の前日であることと、4ヶ月も前から推したちが頑張って練習しているという気合の入れようを考えると、観に行ってみたいという気持ちも少しは湧いてくるのだった。そして、りえちゃんから言われた「絶対楽しいものを観せるから必ず観に来て!」という言葉に背中を押され、結局プレミア通し券のno Filter枠を買ってしまった。それが僕の「ちゃんこMUSIC」の始まりだった。

それから4ヶ月後。
「ちゃんこMUSIC」は無事開催された。それは大成功だったか?と問われると、僕は言葉に詰まってしまう。
イベントとしては滞りなく終わったという意味では成功だと言えよう。アイドルたちのステージも、満足のいくものが披露されていたという意味では、それは成功だったと言えるだろう。
しかし全体を通して大成功だったか?と言われると、やはりどうしても言葉に詰まってしまう。

その原因は何か。

正直なところ、僕は「ちゃんこMUSIC」は、もちろん蓋を開けてみたら良い部分もいくつかあったのだけれど、問題点や課題点の非常に多いイベントだったと痛感している。全体を通して大成功と言えない理由はそこにある。
そしてこのイベントタイトルに既に「Vol.1」とナンバリングされていることに、僕は一抹の不安を感じずにはいられない。miuzic運営さんが今回のこのイベントをどう評価しているのかはわからないが、もし年イチのイベントとして来年Vol.2の開催も考えているのならば、客目線からの感想や意見を誰かがしっかりと伝えておく必要があるのではないか。そんなことを強く感じたのだった。

2. ちゃんこMUSICのよかったところ

ちゃんこMUSICについては思う所が多々あるが、まずはよかったところ、評価すべき点について触れておこうと思う。

①「Lips」「純情」ほか圧巻の歌唱を堪能

ちゃんこMUSICで個人的に良かった楽曲は、以下の4曲である。

りえ、ゆなはのno Filterツートップが安定の歌唱を披露

no Filterの不動のツートップ、りえとゆなはを擁する「Lips〜踊れ恋心〜」は個人的に一番満足のいく楽曲だった。本家に劣らない歌唱力は改めて2人の能力の高さを再認識するものだったし、難易度の高い振付も完璧にこなしていて、推しの凄さを両部とも堪能できた。のちにりえは特典会でこう語った。
「Lipsが一番大変だった。軽く鬱になりかけた。最終日に一気に追い込んだ。」
その壮絶な推しの努力がこの目で二度も確認できただけでも僕は来てよかったと感じたのだった。

一方で、ゆわ、れなが負けず劣らずの歌唱を披露

「純情ってなんですか?」は、まだ持ち曲が少ないグループやソロライブなどでよくカバーされがちな楽曲である。しかし「純情」ほど歌い手を選ぶ楽曲も珍しく、本家(りえ・ゆなは)を越えられずに、「そつなく歌えている」という印象こそ与えど、余程の歌唱力でないと心に響いてこない楽曲だと、僕はこの曲に対して思ってる。それだけ、りえとゆなはが築いてきたハードルは余りにも高い。
そんな曲を、ROSARIO+CROSSの圧倒的ツートップである、ゆわとれなが見事に歌い上げたのは流石だと思った。圧巻だった。

夢のようなデュオが結成

この日出演のない織田美海の名曲「朝が来るまで」を、miuzicが誇る歌の上手いゆわとりえが組んで歌ったのも見所のひとつだった。楽曲とその歌い手リストが発表された時点で楽しみだったし、実際、期待してた以上のものを観せてくれた。素晴らしい景色を観て「息を呑む」と言うことはあるが、素晴らしい歌唱を聴いて「息を呑む」経験は、おそらくそんなに無いだろう。「息を呑む」という表現がこれほど相応しい曲も他にあるまい。呼吸する息の音(雑音)でさえ耳に届かせたくない、それくらい集中して2人の美声を耳に届けたい、そう思える見事な歌唱であった。

まさにmiuzicオールスター夢の饗宴

楽曲とそれを担当するユニットが発表された時、真っ先に目が入ったのはこの曲であった。まさに3グループを代表する歌うまアイドル、オールスター夢の饗宴であったからである。お互いの持ち味を殺すことなく、それでいて個性は全開放され、視覚も聴覚もこんなに幸せな気持ちになるものかと驚いたほどである。この曲が「ちゃんこMUSIC」のひとつのメインディッシュなのだろうなぁと感じた。

以上4曲が、僕が今回の「ちゃんこMUSIC」で特筆したいと思った楽曲であるが、もちろんそれ以外にも各メンバーの頑張りは観て取れたし、「このフレーズを〇〇が歌うのか!」とか「〇〇と〇〇が同じ曲を歌ってる光景は個人的にエモい」といった「ちゃんこMUSIC」ならではの魅力があったことは付け加えておきたい。

②開演前後や物販・特典会での客さばき

「ちゃんこMUSIC」でもう一つ良かった点は、開演前後や物販・特典会時における客さばきのストレスの無さ、である。miuzicが手がけるイベントの毎回残念な点のひとつに、物販時や特典会時に感じるストレスが挙げられる。スタッフが足りないことに加え、非効率的な方法が一向に改善されないことが、新規獲得の深刻な弊害にもなっていた。
今回はホール開催ということもあり、外部スタッフを用意したのかスタッフがいつもより増員されて入退場時もスムーズであったし、物販や特典会でもストレスはそんなに感じることがなかった。考えられる状況を想定し、空間把握をしっかりとイメージして準備してきたであろうことがよくわかった。その点はとても評価できる。

③「ちゃんこ」ではない楽曲の披露もあった

ちゃんこ鍋を堪能したのちに、白飯を投入して雑炊として締める構成は、個人的に嫌いではない。1部にはNine chocolatesとROSARIO+CROSSが、2部にはサイレントラプソディとno Filterが、各部の最後にシャッフルではないオリジナルメンバーが登場してそれぞれ1曲ずつを歌った。たった1曲というのが個人的には物足りない感じもしたが、シャッフルユニットでは出し得ないオリジナルメンバーならではの魅力が締めとして提供される構成は、「ちゃんこ」になぞらえた企画コンセプトにもよく合っていてとても良いと思った。

社長は秘話でこのように語る

全員で大団円という演出は、客としても確かに期待していた部分はあった。それが「シアワセニナルタメニ」だったら僕はこの企画にもっと高い評価を与えたかも知れない。しかしそのような演出は「満員」のホールでこそ観たい。だからオリジナル曲披露に着地したのは今回は最善の選択だったと感じる。

大きく分けて以上3点、僕が「ちゃんこMUSIC」に参加して感じた「よかったところ」である。あくまでそのことを前提とした上で、次節より、課題点や問題点にも触れていきたい。

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