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ドライフラワー

笑ってる顔が見たいからと
プレゼントされた花束は
小さな花瓶に水を注いで
窓辺に置かれたその花は
ひとつふたつとひらいていった
部屋いっぱいに
甘い匂いが広がった

あなたがくれた花束は
ずっと大切にしてきたけれど
時々しぼんでしまったりもして
いつまでも花びらを撫でてみたり
何度も水を替えてみたり

いつかは枯れてしまう
いなくなってしまう
それが怖くて仕方がなかった
形を変えてしまうことが
あの匂いを感じられなくなることが
いっそのこと
ドライフラワーにして
甘い香水振りかけて
いつまでも飾っておこうか
なんて

枯れてしまったその花に
縋りついて泣いたりなんかしないよ
花は咲いては枯れてゆく
それがこの世の理だから

想い描く世界の中では
いつでも咲かせることができる
あの花の色と匂いを
わたしはおぼえているから



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