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免許証更新

免許証更新の季節が近づいてきた。
恐怖である。
あの写真の撮り方には悪意を感じる。
まぁ本人だとわかればいいのだし
お忙しいのは重々承知しているのだけれど
出来上がった免許証を見るといつも絶望する。
何故この瞬間を、みたいな生気の全くない顔が
そこには写し出されているのである。
シルエットだけじゃ駄目なんかな。(駄目だよ)

ご本人様の確認書類を、と言われる度に
ナーバスになる。
あの、これはですね、ちょうどまばたきをする
瞬間を見事捉えたものでございまして。
写真を撮る前日はちょっと寝不足でしてね。
はい、ありがとうございます。
無表情の店員が片手で免許証を手渡す。
誰も顔なんか見ちゃいねぇ。
自意識過剰自意識過剰。
わかればいいのよわかればね。

まじまじと写真を見つめながら
無意識に自分で自分を美化していたことに
気付かされる。
これは、まぎれもなく、あなたです。
真実を見つめよ。
写真の神さまがわたしの顔に手をかざして
繰り返す。
現実を見よ。

これも、わたしです。
ファンデーションで何もかもチャラにできた
お目目きらきらお肌つるつるシワひとつない
20歳のわたしはもういない。


ヘブンズドア!
岸辺露伴は呟くだろう。
ここに全てが刻まれている。

おや、このページは白紙になっている。
忘れてしまったのだな。
まぁ、忘れてしまった方がいいことも
この世界にはたくさんある。

写真というものは残酷なものだな。
全てが露わになってしまう。
そういう瞬間もあるのだから。

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