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#21.L’ILLUSIONNISTE (2010)【偏愛的映画のすゝめ】

やる気が出なくて寝坊しがちな今日この頃。

第21回はシルヴァン・ショメ監督作品の中で僕が1番好きな作品、『イリュージョニスト』です。
2010年、イギリス/フランス、80分。

時代が激変しつつある1950年代のパリ。かつての人気をすっかり失った老手品師タチシェフは、場末のバーで時代遅れのマジックを披露する日々を送っていた。ある日、スコットランドの離島に流れ着いたタチシェフは、片田舎のバーで貧しい少女アリスと出会う。タチシェフを“魔法使い”と信じるアリス、そしてアリスに生き別れた娘の面影を探すタチシェフは、やがてエジンバラの片隅で一緒に暮らし始める。

この作品を端的に表現すると、、、

切ない物語と温かみのある世界観


『ベルヴィル・ランデブー』でお馴染みのシルヴァン・ショメ監督の作品です。『ベルヴィル〜』と同じく、緻密に描かれた絵と台詞がほとんどないストーリーが特徴的です。ですがコメディ色の強い『ベルヴィル〜』と異なって、ストーリーが切ないんです。

時代の流れに押される老マジシャンと世間知らずな田舎の少女の交流が描かれており、前半部分は本当に心温まる描写がたくさんあります。特に、老マジシャンが少女のことを娘のように可愛がる様子は微笑ましいものです。

しかしながら終盤に近づくにつれて、少女は都会に慣れて成長(?)していきます。その中で老マジシャンの抱える葛藤が、痛いほど伝わってくるのです。そして迎えるクライマックスの哀しさと美しさには、誰もが圧倒されるはずです。

また、この作品で用いられている音楽も素晴らしいと思います。ヨーロッパの趣が感じられる旋律なのですが、どことなく哀愁が漂っているのです。そこに、厚い雲に覆われた街がたたえる優しさのようなものが感じられます。

※老マジシャンの名前であるタチシェフは、原作の脚本を書いたフランスの映画監督ジャック・タチの本名。僕はまだジャック・タチ監督の作品を観ていないので、『ぼくの伯父さん』から観てみようと思います。

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