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本を読む「体験」-読書会の勧め-

家にいる時間が長くなり、「本を読む」機会が増えました。
好きなジャンルの本、私にとってリズムよく書かれた本は、あっと言う間に読み終わります。 場合によっては、時間を忘れて読みふけってしまいます。

一方で、「仕事柄、読むべきだよなぁ」や「課題だし読まなくちゃなぁ」と言う本は、なかなか読み進めることができません。 読んでいるうちに、いつの間にか寝ていた… そんなことが度々あります。

最近になって、本を読むことについて興味深い体験をしたので、それについて少し書いてみようかな、と思います。

気になるところを分かち合う

私は、平行して二つの本を、このやり方の読書会で読み進めています。
 ▼「プロセス・コンサルテーション―援助関係を築くこと」
   エドガー・H・シャイン 著
 ▼「オープンダイアローグとは何か」 斎藤環 著

どんな風にするかと言うと…
事前に、読み進める範囲を決めてグループで共有します(宿題ですね)。
各自で本を読みながら「気になるところ」に下線を引き、読んだ時の気持ちや考えたことをメモします。

気になるところ
 ▼ 心に響いたところ ... 下線と「!」をつける
 ▼ 疑問点、もっと知りたいところ … 下線と「?」をつける
 ※ どちらも「感じたこと、考えたこと」を書き添えておく。

読書会では、セクションごと、あるいはページごとに、参加者それぞれの「気になるところ」を発表します。 誰かの「心に響いたこと」に乗っかって「私も同じところで○○と感じました。 それはもしかしたら…」と話が弾んだり、「疑問点」や「もっと知りたいこと」について意見を交わしたりと、対話形式で進めます。

参加している人たちがお互いの話に耳を傾け、じっくりと言葉を重ねていくことで、雲や霞がすーっと晴れていくように、難解だと思えていた本の内容を理解できるようになります。 また、私の場合は、年齢とともに狭まっていた自らの世界が広がっていくような感覚を覚えます(笑)。

音読する

ここ一ヶ月くらいのことですが、音読する読書会にも参加しています。
 ▼ 「ブラックジャック」 手塚治虫 著
 ▼ 「ナラティヴ実践地図」 マイケル・ホワイト 著
 ▼ 「ナラティヴ・メディエーション」 ジョン・ウィンズレイド 他
 ※ ナラティヴ・メディエーションは読書会形式のワークショップ

やり方は、、、
文字通りなのですが、本の文章を声に出して読み上げます。 子どものころに学校の授業や宿題でやった音読です(笑)。 とは言え、輪読したり、演じたり、その組み合わせだったりと、幾つかのパターンがあります。

いくつかの音読パターン
 ▼ 順番を決めて読む(輪読)
 ▼ 配役を決めて読む(演じる)
 ▼ 読んでもらうのを聞く

音読する読書会の場合、私は事前に本を読んでから参加しますが、「読んでこなくていいですよ」と言うものもあります。

不思議なもので、自ら声に出して読み上げてみると、特にセリフ部分は目で追いかけて読んでいる時よりも「感情」が伝わってくるように感じます。
また、誰かが読み上げてくれる声が耳から入ってくることでも、やはり何か伝わるものがあるように感じます。

数ページ、区切りの良いところまで音読すると、少人数のグループまたは全体で感想や気づいたこと、疑問点を伝え合う時間があります。

「なぜ○○は、××なのだろう?」と、誰かが問いを場に出すと、他の参加者が「もしかしたら、△△が関係しているのかもしれないね」と思いを伝えたり、「■■のことも、○○のせいにしているのはなぜだろう?」と問いを重ねてみたりします。

そんな対話をすることで、本の内容に対する理解が深まると同時に、自らの思考の傾向や隠れた価値観に気が付くこともあります。

ありありと浮かびあがる情景

さて、「気になることを分かち合う」や「音読する」読書会をしていると、本に書かれた情景が、映画を観ているかのようにありありと浮かびあがってくるように感じる瞬間があります。

教科書のような難解な本だったとしても、著者である先生がそこに座って語りかけてくるような、著者が本を執筆している横にいるような、そんな風に感じることがあります。

ま、あくまでも妄想なのですけど(笑)、一人で文字を目で追いかけている時の妄想よりも、触った感じがしそうな、臭いがしてきそうな、本当のことのように感じられます。 

ここまでありありと情景が浮かびあがってくれば、難解な本でもばっちり理解した気になれるものです。

世界が拡がる感じがいい

もう一つ、複数人で読書会をすることの良さとして、参加者が言葉を重ねていくことで「世界が拡がる」もしくは「世界が拓ける」感じがあります。

一人で本を読んでいても、著者の考え方や世界感、人生に触れることで、自らの世界が拡がる感じはします。 読書会ではそれ以上の世界の拡がりを感じます。

意見が同じでも、違っても、一つのことにみんなの思いや考えを載せていくと、全く新しい意味が生まれてくることがあります。 そんなときは本当に楽しいです。

また、私が全く意識していなかったところ(スルーしていたところ)に着目する参加者がいるときは、本当にチャンスだと思います。 なぜかと言うと、私の価値観や物の捉え方とは全然異なる、私では見つけることができなかったことに触れることができるからです。

私はついつい物事のポジティブな側面、希望や夢を感じさせることに気持ちがいきます。 苦しさや辛さを深堀りすることは、自然と避けてしまいます。ですから、他の方がそういう側面をしっかりと考察してくれることで、私の世界は拡がっていけるのです。

終わりに

今回は、本を読む「体験」について書いてみました。 時間はかかりますが、仲間と読み進めることは、難解な本を読む時や哲学的にものを考えたい時にお勧めの手法です(^^)/

いまここプラス