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疲れをごまかして働いたあとの週末

今週(2021/5/31~6/4)は今までで一番長く残業した週だった。
週初めにスケジュールをチェックしたときその気配には気づいていた。

「今週だけは特別だ。頑張ろう」                   そう自分に言い聞かせて、タスクを組み立てて順番にこなしていった。

結果として、予定していたタスクは滞りなく進められたけど週初めに見積もった以上に残業時間が膨れ上がった。

自分が預かり知らぬ領域でトラブルや突然の指示が降りてその対応に追われてしまったからだ。
部下の尻拭いや上の人間たちの気まぐれな意思決定に時間が割かれてしまって、自分が予てより思い描いていた時間の使い方ができなくなってしまった。
社会人になりたての頃だったら理不尽に感じて心を乱していたことだろう。けれど、もうそんなものだと慣れてしまっていたからメンタル的には穏やかだった。

働きに働いた。もちろん働きつめても効率が悪いのは分かっているから適度に休憩をたくさん挟んだ。ここがリモートワークの良い点で、疲れたらすぐ横になれる場所があってよかったと心底思った。集中力の維持が難しくなるや否やすぐ横のベッドに体を預けて、10分弱目を瞑る。そんな感じでマラソン選手がペースを配分するように、定められたタスクの遂行のために長時間頭を動かした。

今の仕事を心から楽しいとは思わない。けれど、このときに抱えていたタスクは挑戦的でとてもやりがいのあるものだった。だから真剣に取り組めた。

しかし気持ちとは裏腹に、週の後半になるにつれて体に疲れが蓄積されていった。やっぱどうしても人間は週に40時間以上働くと無理が出てくるものなんだなと考えてしまう。
だけど、その常識的な思考を邪念としてみなして頭の隅に追いやり、やりがいを奮い立たせること疲れをでごまかして、頭と手を懸命に動かした。

6/4(金)の夜11時。タスクはあともう一歩のところで終わっていなかった。この日も自分が預かり知らない顔も知らない誰かのわがままと失敗のせいで余計の時間を消費させられて、こんな時間になってしまった。なぜかあまり疲れているとは感じなかった。きっとハイになっていたのだろう。それでも腹に一物抱えていた。

部下が失敗するのは仕方がない。だってできないことはできなくて当然なんだから。その失敗を次に生かしてくれたら、自分がその尻拭いする意味は大いにあると思っている。

上司や上の人間の気まぐれに付き合うのも仕方ないことだと割り切っている。組織に属している以上そういう人たちの指示に従うのは道理と思っているし、自分が仕事をろくにできない頃には助けてもらったことが多くあるから。それに彼ら彼女らの言うことにはある程度の合理性があるからそれのために時間を使うのは苦に感じない。

けれど、その時の顔の知らない人間の失敗には憤りを感じずにはいられなかった。一言で言うとそれは契約書の内容を破るような行為だった。部下がするような技術や経験不足故の失敗ではなく、約束を破る暴挙だった。そのために自分の大切な時間を奪われてるのは、叫びたくなるほど許しがたいことだった。

暴挙に対するリカバリを終えて夜の11時。一緒にこの時間までリカバリをしてくれたKさんがチャットで声をかけてくれた。

Kさんは僕がタスクを抱えすぎてそれがまだ終わっていないことを察してくれて、来週に僕が抱えていたタスクを他の人に割り振ってくれた。細かい内部事情を言うと、僕とKさんは同じ部署だけど互いに別のチームでリーダをやっているというような間柄だ。年齢的にはKさんが一回り上の大先輩で、職場で一番尊敬している人だ。Kさんは来週の僕のタスクを自分たちのところで一部預かりますよと言ってくれた。その話をしてくださったときにはすでに色々な調整を済ませて下さっていた。僕がリカバリにかかりきりになっている横で対応してくれていたのだ。

僕は心から感謝を言った。そして、眠りにつくような心持ちで、あと一歩終わっていなかったタスクを来週に回すことにした。

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翌日は朝9時に目を覚ました。就寝からきっちり7時間。最近の僕の体内時計は気持ち悪いほど正確だった。

シャワーを浴びてさっぱりすると、タブレットでドラマを見たり新刊の漫画を読んで過ごした。正午にカップ麺を啜ったら午後は買い物に出ようかと考えていたけど、食べ終えると急激に疲労と眠気に襲われた。すこし昼寝するつもりでベッドに横になると、気付いたら日が沈んでいた。

ごまかしていた疲れが一気にやってきて僕を眠らせてくれたのだと分かった。目覚めた後は何もする気が起きなかった。本を読むことも、動画を見ることも、運動をすることも、ゲームをすることも何もしたいとは思わなかった。

口だけは寂しかったからアーモンドをかじった。
そのうち耳も寂しくなり出したから直前まで頭の中で鳴っていた、BUMP OF CHICKENの「流れ星の正体」を流した。
どうしてこの曲だったかはわからない。だけど、耳を澄ましてこの曲を聴いたら体の真ん中から何かがあふれて、涙が出てきた。

太陽が忘れた路地裏に 心を殺した教室の窓に
逃げ込んだ毛布の裏側に 全ての力で輝け 流れ星

きっとこの詞が心が一番求めていた言葉だったんだと思う。
この一週間、使命感を糧に一生懸命働いて、それでも思い通りにこなせなかった自分への不甲斐なさや周囲への憤りで気分が沈んでいた。
だから僕はこの歌が歌っている流れ星のような輝きを欲したのだ。
今日はゆっくり休もう。そして、また元気な気持ちを携えて駆け出そうと思うことができた。

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