素直に常識を疑う Bobbi Brown

妹にお勧めされた、How I Built ThisをPodcastで聞いた。
これは起業家や創設者に、どうやってその会社やサービスを作ったのかをインタビューで聞いている番組だ。
Patagonia、Lonely Planet、Airbnbなどなど、聞いたことがあったり知っている名前ばかりだ。
その中で、Bobbi Brownの回を選んだ。

Bobbi Brownと言えば誰もが知るコスメブランドで、普段あまり化粧品を買わない私でさえ何点かアイテムを持っている。
可愛らしい感じよりも、クールで独立した女性のイメージを打ち出している印象を持つ。

そしてこのBobbi BrownがどうやってBobbi Brownを作ったのか、その創設にいたる部分までのストーリーがやけに心に響いたのだ。

子供のころの彼女は、母親が父親とお出かけをする前にする化粧をじっとみるのが大好きだったという。
彼女の母親はスラっとしててすごく美人で、世の中のいわゆる”美人”も当時はブロンドのバービー人形みたいな人だった。でもBobbiは小柄で細身じゃなかったし、髪の色もダークブラウンだった。

そんなリトルBobbiが衝撃を受けたのが、7年生(欧米では中学生とかの区切りはなく、小学校入学から高校生まで1〜12年生のように積み上がっていく。)の時に見たLove Story(邦題:ある愛の詩)という映画だった。その中でブロンドじゃない薄化粧の女性が出ていて、生まれて初めて”私も可愛くなれるんだ”と思ったそうだ。初めて、自分に自信が持てるようになったという。

"Changed my self-esteem and my confidence, and figuring out who I am."

ここまで言わせるとは!
映画はこちら。確かに、主演のAli MacGrawはいわゆるブロンド娘ではない。

そしてこれが、現在のBobbi Brown。本人のFacebookより。

ブロンドの女優やモデルよりも、Ali McGrowに共感できるというのもうなずける。
日本人に例えると、菜々緒よりもゆうこすに親近感を覚えて好きになる、みたいな感じだろうか?

今の時代は様々なロールモデルがいて、インターネットにより外国の情報だって国内とほぼ変わりなく手に入る。昔のアイドルが好きな人がいれば、ボーカロイドに一番惹かれる人だっているし、それが許容されている。
しかし1970年代はそんなことはなかったと想像できる。テレビ、雑誌、映画などで人気な人、ファッションなどはそのまま全土でスタンダードとなり、みんながそれをそのまま受け入れることになっていただろう。
そんな中で、リトルBobbiが受けた”常識の崩壊”という衝撃は、この後の彼女の人生においてすごく大きなことだったと想像できる。

大学生になった彼女は大学の講義のつまらなさ具合に辟易し、1年生の終わりに辞めたいと母親に言ったという。一度は反対されたが、でもやりたいことが何も見えない!と言うと、こんなやりとりがあった。
母「じゃあ人生でやりたいことについては一旦忘れて、今日があなたの誕生日だとしたら何がしたい?」
大学生Bobbi「マーシャルフィールズ(アメリカのデパート)に行ってメイクアップで遊びたい」

My mother said (中略) "OK, forget what you wanna do with your life. If today was your birthday, you could do anything you want, what would you wanna do?" and I had no idea. And I remember as I always do, quickly saying the first thing that popped into my head. "I wanna go to Marshal Field's and play with makeup."

それを受けて母親がじゃあメイクアップを学んだら?と言ってくれたので、メイクアップを学べる大学を探したそうだ。そして、エマーソン大学のinterdisiplinary programという、自分で自分の専攻を決めることができる学部?コース?に入学したという。
(interdisiplinaryを辞書で調べると、「学際の、異なる学問分野間(協同)の」と出る。)

そして大学卒業間近のBobbiは、雑誌でニューヨークで活躍するフリーランスメイクアップアーティストのボーニー・マーロウ(と聞こえたが、ぐぐってもそれらしき人は出てこなかった、、、)の存在を知る。
フリーランスという単語を知ったのも、その時だという。そして、彼女にアシスタントの手伝いをしたいと手紙を書く。もちろん返事は無かったのだが、今度は電話帳で調べて電話をしたのだ。留守電にはエージェントの電話番号がはいっており、そこに電話してアシスタントの希望について伝えたという。

ヤングBobbiは卒業後ニューヨークにとりあえず移り住み、そのエージェントからなんとなくアシスタントとして呼ばれるようになったという。次第にニュースキャスターのメイクアップなども手掛けていくように。
しかしそうしたフリーランスの仕事でお金を稼ぐのは難しく、親から月500ドルの仕送りをもらっていたという。
でもある日金銭的不安を父親に相談したときに、家賃分稼ごうとかいうマインドは捨ててもっと稼ぐ方法を考えたら?と助言される。
そこから毎週月曜日は1週間分のアポイントメントで手帳を埋めつくしたそうだ。

1970年~80年代当時のメイクアップと言えば色を塗ることで、ファンデーションはピンク、しかも顎のラインでおわってる。アイシャドウは黄色、紫や青といった具合だった。
その中でヤングBobbiは常に”Bobbi face"、今でいうヌードメイクをしていたという。もっとナチュラルに、自然なメイクアップでまるメイクをしていないようにみせようとしていた。
このメイクについて超有名大御所メイクアップアーティストに意見を聞いたら、「君の仕事は無いよ。みんなそんな風に見られたくないからね」と言われたという。(!)
でもヤングBobbiはそんな批評にも負けず、"I just couldn't do it."とTVのメイクアップでもその人本来の肌の色を目指していた
そんな色のファンデーションは当時売っていなかったから、毎回大荷物を持参して自分でブレンドして色を作っていたという。
そう続けるうちに、段々と注目され写真を撮られるようになっていったのだ。

続きが気になる人は、Podcastをどうぞ!

Bobbiさんの話の中で、太字にしたところが行動をしたところだ。
しかも、何か確証や約束があって起こした行動ではない。全て、自分で不確定な未来を開拓した行動なのである。

もし私がBobbiさんと同じ状況になったらどうしていただろう?
映画の中の主人公をみてもこれは女優だからと諦め、授業がつまんなくてもこんなもんだろうと諦め、大学でメイクアップなんて学べないと諦め、手紙の返事が無いと諦め、エージェントから約束をもらえなかったからと諦め、家賃が払えないと諦め、大御所にダメだと言われたから諦めただろう!

またBobbiさんには素直にアドバイスを聞く。両親のアドバイスが話の中で度々出たが、彼女は気づきがあるとその通りにまず行動している。え〜、、とかでも〜、、、とか言い訳を並べる前に、それに取り掛かっているのだ。一方で、自分の信念に合わないことはそれがたとえ業界の大先輩でも聞く耳を持たない。聞く耳を持たないというよりも、そうすることはできなかった、と言っている。自分がどうしても納得がいかないことを、無理やりやろうとはしないのである。

Bobbiさんの行動力もさることながら、この話で一番心に響いたことは常識の儚さだ。
「こんなの常識だよ。」「普通は、こうだけど。」こういう台詞は人生の中で何億回も言われたし、自分もうっかりすると1000回ぐらいは言っているかもしれない。
でも常識なんて、誰が決めたのだろう。自分の狭い範囲で見聞きしたもの、自分が自分の独断と偏見で選んだ本の中に書いてあるもの、自分の完全なる意志でみた映画やTV番組。そんなちっぽけな円周の中で定番のものが、全く違う家庭で育ち生きてきた人にどうやったら当てはまるのだろうか。

中学校の校則でピアスも茶髪も、指定のカーディガンさえ羽織るのが禁止だった。なのに中学校の最後で外国のインターナショナルスクールに行ったら今まで禁止だったもの全て、本当に全て、がなっっっっっんにも問題ない事だった。この時に、私は”常識”のくだらなさと自分の世界の狭さにガツンときた。その時の感情を思い出させてくれたのだ。

今所属している会社は世間一般にいう高給取りだが、入社して依頼楽しいと思ったことがない。毎日毎日、不自由を感じながら仕事をしている。でも、結婚して子供がいる今、やめることなんてできないと思っていた。この先も子供に”良い暮らし”をさせてあげるために、続けなければいけない。
今の会社をやめるのはもったいない、みんな我慢して仕事しているのだから、人生はこんなもんなんだから、という常識。
この”普通”は、いつから”普通”で、いつまで”普通”なのか?

結局は”常識”や”普通”なんて、いつ変わるか分からないものなのだ。そんな曖昧でいつ裏切るか分からないもののために、自分のやりたいことがあるのにそれを犠牲にすることはない。
自分で自分のやりたいことを見つけそれに従っていくということが自分の人生の充実、そして家族の幸せにつながると心に訴えかけてきたPodcastだった。


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