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国税徴収法アラカルト(6)~督促状が送られてきたら(そして財産調査が行われたら)~

ここまで、滞納処分に進まないように、利用できる制度を有効に使っていくことの大切さについてお話してきました。

それでも、中にはこのような制度を知らず、またはそもそも気にもせず、時が流れてしまうようなこともあるでしょう。

法律上、税務署は、納期限までに完納されていない税金が確認されたときには、その完納していない納税者(滞納者)に対して、納期限から50日以内に、督促状を発付するものとされています(国税通則法第37条①②)。

そして、その督促状を発付した日から起算して、10日を経過した日までに、その税金が完納されないときは、税務署は、その滞納者の財産を差し押さえなければならないことともされています(国税徴収法第47条①一号)。

そうしますと、これまでの猶予制度を利用しなければ、納税者サイドからしますと、本当の意味で、リミット到来ということになるでしょう。
この状態になることは、できることなら避けたいところです。

前回までの納税猶予制度の際にも触れましたが、ここでも納税者の「誠実な意思」の有無が、今後を左右する重要なポイントとなってきます。

よって、督促状が送られてきたら、決して無視などしてはいけません。
これが送られてきたら、何らかの形で、ただちに、税務署に自主的に連絡するなど、積極的に、納税者サイドからアクションを起こすべきです。

この段階であっても、まだ分納相談に応じてもらえたり、納税猶予制度(特に「換価の猶予」)適用検討のチャンスは残されています。

心配であれば、お近くの税理士にご相談いただき、税務署に足を運ぶ際に、同行してもらい、各種納付計画を一緒に検討してもらう、という形も有効であると思います。

この督促状が送られてきますと、案件にもよるのでしょうが、その後、いわゆる「財産の調査」というものが実施されます。

ところで、調査といえば、一般的には、「課税の可否のための税務調査」を思い浮かべられるのではないでしょうか。

平成25年1月施行の税制改正によれば、この税務調査については、これを行う税務署側にさまざまな手続規定が盛り込まれました。

例えば、納税者に対する調査開始の事前通知や、調査終了の通知など、納税者サイドで、ある程度、調査に対する心の準備ができるような規定ができ、現在に至ります。

しかしながら、この督促状が送られてきたのちにに行われる「財産の調査」は、先の改正規定の対象外とされているのが現状です。

つまり、税務署の徴収職員が「抜き打ちで」調査に来ることが、可能となっているのです。

そして、この「財産の調査」は、「質問及び検査」(国税徴収法第141条)と「捜索」(国税徴収法第142条)により構成されており、前者は任意調査であり、後者は強制調査であるものと位置づけられております。

これらの性質を見てみますと、「質問及び検査」は、任意調査と言いながらも、事実上、受忍義務があるものと解されており、「捜索」にいたっては、強制調査でありながらも、令状などの手配なく実施できるものと解されております。

したがって、かなり脅しのような書きぶりになってしまいますが、督促状を無視するなんて言語道断、無予告かつかなり強力な執行力で、滞納者にアクセスしてくることとなり、逃れられない状況となるでしょう。

なぜ、ここまで強硬な形になるのでしょう。
それは、国税徴収法第1条(目的)に、色濃く表れていると思います。

国税徴収法第1条(目的)
この法律は、国税の滞納処分その他徴収に関する手続きの執行について必要な事項を定め、私法秩序との調整を図りつつ、国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的とする。

条文中の「執行」という言葉や「国税収入の確保」という言葉に表れているように、これを遂行する徴収職員のいわば「使命」があるため、かなりの強硬性を有しているものと思われます。

繰り返しますが、督促状が手元に届いたら、決して無視しない、放置しないということが、大事となりますので、そのことだけは、記憶にとどめていただければと思います。




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