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記事紹介:皮膚免疫

今日は皮膚と免疫についての良い記事を見掛けたので紹介しよう。

この記事では前半部分で皮膚組織の構成やその役割を説明している。そして後半部分では特に免疫系との関連をより詳しく説明している。そもそも皮膚組織というのは生体の最外に位置しており、当然ながら最も外部との接触が多い組織である。免疫というのは外部からの侵入を防ぐ機構であるので、当然ながら皮膚における免疫応答というのは非常に重要となる。そして、皮膚における免疫応答というのは、その他の免疫器官とは異なる点が多く存在するのだ。

最も外側に存在する免疫応答を担う細胞は表皮角化細胞ということになる。これは免疫細胞というよりも、純粋な皮膚組織を構成する細胞であるが、免疫応答に関わる役割も持っている。記事の説明は以下の通りだ。

表皮角化細胞は、金属や漆などのハプテン、紫外線照射、ひっかきなどによる物理的損傷などの刺激に対して、ただちにIL-1やTNF-αなどの炎症を誘導するサイトカインを放出します。

IL-1やTNFといった自然免疫応答を誘導する代表的なサイトカインを真っ先に放出することで、免疫応答の開始を知らせる。それが再外部に位置する細胞の役割ということだ。これは非常に合理的な仕組みであろう。同時に、これらの反応は炎症反応にもつながるので、皮膚炎症というのはあらゆる原因によって起こり得る。

さて、これらのサイトカインはあらゆる免疫細胞を活性化させるのだが、皮膚における特徴的な細胞の一つに「ランゲルハンス細胞」がある。これは皮膚の中でも表皮に存在する特殊な抗原提示細胞であり、通常の抗原提示細胞とは少し異なる機能を持っていると考えられている。IL-1やTNFはこのランゲルハンス細胞や樹状細胞、リンパ球など多くの免疫細胞を活性化させ、病原体や異物を排除することになる。

一方で、皮膚における免疫応答は過剰になり過ぎると簡単に炎症反応となってしまうため、やはりそのバランスは重要である。記事にもアトピー性皮膚炎を始めとして皮膚免疫疾患の例が紹介されている。また、それを抑える要素のひとつとして紫外線が紹介されている。紫外線(太陽光)に当たると皮膚の炎症反応が抑えられるということは非常に古くから知られていた。その仕組みは皮膚の免疫細胞や表皮細胞を破壊することで免疫応答が落ちるとか色々と研究されていたのだが、最近は免疫を抑える機能を持つ特殊なT細胞である制御性T細胞(Treg)が紫外線によって増加することが大事だと考えられている。皮膚においては紫外線によってTregが増加し、免疫抑制に働くという機序が存在することでその免疫バランスが調整されているようである。

但し、いくつかの全身性自己免疫疾患においては太陽光や紫外線はむしろ炎症悪化の要因になるため、紫外線=免疫抑制という単純な話ではないので注意が必要である。過剰な紫外線が活性酸素産生やDNA損傷に繋がった結果として自己免疫応答を活性化するという機序もよく研究されている。免疫は非常に複雑かつ繊細にバランスが制御されているため、その全体像を包括的に理解しないと考察も対策も不正解となる場合が多々あるので注意されたい。

いずれにしても、この記事には皮膚免役に関する基本がよくまとまっているので勉強になるかと思い紹介させてもらった。

※余談だがランゲルハンス細胞と聞くと膵臓のランゲルハンス島を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。こちらは高校生物でも出て来る有名な組織構造であるが、実は発見した研究者がランゲルハンスさんで同一人物であり、同じ名前が付いている。紛らわしいとも思えるのだが、全く意味も部位も異なる2つの発見をしているのでやはり何かが凄かったのだろう。


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