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Infinite Music Odyssey

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ほぼ週に一度の更新。好きな音楽について。
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記事一覧

Infinite Music Odyssey_011

Prelude… 小さいときはいつも木に登って遊んでたよ、という人がたまにいる。 朗々と笑いながら当時を述懐する彼らの掌はなるほどたくましい、気がする。 腕っぷしもまた、ぼくのそれを二つ束ねたぐらいの太さがある、気がする。 ソウジャナイ幼少期を送ったぼくの目つきには多量の羨望が含まれている。 小・中学生のとき何してた、と問われると困る。 夏休み、学校のプールからの帰り道、永劫つづくかのように思われた直線道路をアツイアツイと呻きながら遠く向こうに立ち昇る入道雲を見つめていた

Infinite Music Odyssey_010

プレリュード へらへらしているうちに現役合格の妄想(cf.目標)に敗れ、そこに一年間ぶらぶらを添加したら大学に受かり、うまうまと立てた高邁な「目標」はちっとも身の丈に合わずたちまち放棄、ばたばたの日々に費やされた一年次、もやもやと手応えも足音もなく過ぎ去った二年次、ぐだぐだと惰眠に耽った三年次、ぽやぽやと陽気に歩き回った四年次。ここまでの締まりに欠けたオノマトペの総和を求めるならば、イコールうかうかである。今夏が足早に終わるのにあわせて、大学生活という名の夏休みもまた刻限が

Infinite Music Odyssey_009

読者のためのプレリュード わたくしI.M.O.、大学で文化人類学を専攻しております。 それで去年から個人美術館(およびその館長)をフィールドに据えた調査を行なっているのですが、ここにきて別箇の研究領域に足を突っ込むことになりました。 ざっくり云えば「農業」。もう少し詳しく書けば「高齢化時代における地域農業継承の目指し方」。美術館研究とはかなり隔たったところに迷い込んできてしまった観があります。そろそろソツロンを捏ねようかという時季に及んで、わざわざ農家調査を始めっちまったの

Infinite Music Odyssey_008

読者のためのプレリュード さて皆さまこんにちは。日曜安息日、いかがお過ごしでしょう。 Infinite Music Odyssey——雑踏にイヤホンを。いざ今週も音楽ある旅路へ。 Infiniteと銘打っておきながらしばらく休載しておりました。 noteネームky.o9猊下をはじめ、記事を待ち設けていらしった方々、8号です。 このごろ当方は恋路奔走と映画鑑賞とに勤しむ日々でした(cf. 卒論執筆)。 前者は現在進行形で状況が流転しており、明日の安寧も知れぬ薄氷ステップ。

Infinite Music Odyssey_007

序文—— 昔ッから、緊張しいだ。 マイクとカメラを向けられると、泡を噴いて卒倒するほどに頬と耳とが紅潮する。 オンライン授業で教官に呼びかけられると、1オクターブぶん声色が打ち上がる。 口頭発表が迫ってくると、知恵熱もしくは過呼吸、またはその両方が課せられる。 唾腺沈黙、汗腺発破、脳漿炸裂、瞳孔解放、発話神速、挙動不審、猫君溺愛。 それでいて、緊張の大舞台を任される機会がチョー多い気がする。 英語暗誦・弁論大会。教室内のだれもわからん難問の回答依頼。天皇モノマネ。 放送

Infinite Music Odyssey_006

序文。 ゆらゆら、ゆらゆら……あたかも身が船上にあるかのような心地。 船体を揉んだ巨きな波濤が去り、凪いでいるときでさえ、眼底に揺れの残り火が。 肺を膨らませ、ふと一息ついて吹き消しても、間を置かずふたたび波が襲い来る。 はじめの大波よりはずっと軽微だけれど、こちらはすっかり船酔い起こしてます。 我が家の水道も、また(幸いこちらは一瞬間の事象ながら)電力も破断した波濤。 はるばると11年の歳月を閲してなお、小康を慶ぶ隙も与えられない。東北地方。 このごろは。 はるか大

Infinite Music Odyssey_005

序文—— Infinite Music Odyssey、第5回を迎えました。ごきげんよう。 前回記事はこちら。足の痺れを堪えるときに効く名曲を五つ選んだ回です。 さて今回は、幸先悪く、詫びごとを…… イヤハヤ、まことに失敬。さるまた失敬。 簡素かつ胡散臭い140字つぶやきを多用してお茶を濁す一週間でした。 そのうえ<前編>云々と銘打った回が、いくつも終局を迎えずにいる。 盛岡から仙台に戻って何日が経ったやら…… かりそめにも読者のあるnote書きとして、マッタクもって

Infinite Music Odyssey_004

序文—— 膝のうえで丸くなった猫君がムー、ムー、と呟いている。 ときどき「ムー?」と疑問文ふうに語尾を上げたり小刻みにプププと震えたり。 深く、深〜く眠りに落ちると、彼はきまって寝言をいう。 語彙や発音がヴァリエーションに富んでいるから、聞いていて飽きない。 「今宵はどんな夢をご覧なのかしらん……」想像が膨らむ。 しかし深〜くお眠りいただくためには小一時間に亘って膝に載せる必要がある。 なんたって巨大猫メインクーン種の血統を引くお方だもの、めちゃくちゃ重い。 そこへ天動説

Infinite Music Odyssey_003

序文—— あンまり激しく感情や言葉を迸らせたあとは、心静かにありたいもの。 今週はテレヴィジョンを眺めても、実生活を過ごしても、続発する騒擾にウーン。 呻きどおしだった気がする日々にとって、音楽は「のど飴」でありました。 言葉を怒濤に話しつづけると、いくらか愉しいのだけれど、喉は渇き、痛む。 いまは声をあげるべきときなのかもしれないが、やっぱり声帯にも限度はある。 そんな折にのど飴を口に含むと、度を越した饒舌が痛めつけていたモノに気づく。 飴は「話すだけが全てではない」と

Infinite Music Odyssey_002

閑話から求題 さて、今週も日曜日を迎えました。画面向こうの貴君よ、いかがお過ごし。 Infinite Music Odyssey——遥かなる音楽の旅路へ出航するお時間です。 第二回、今週もメインパーソナリティはわたくしI.M.O.が務めます。 わざわざ本稿を覗くほどの殊勝な読者であれば先刻御承知でしょうが、当方はこの一週間、白紙に向かってひたすら黒点を打っていました。只管打坐ならぬ只管打点。個々としては「無個性」なただの点も、夥しく群れると、洗濯表示マークやら、スプーンや

Infinite Music Odyssey_001

この一週間わたしとともにあった音楽を振り返る。 わたしのセンテンスは、いつも主題が散漫としているきらいがある。 ヤングコーンの美学を呟く舌の根も乾かぬうち、霊柩車の「ファーン」を考える。 辞書っていいよね、と謳ったそばから、ねえ、隕石って怖いよね…と俄かに渋面。 高校倫理の教科書への愛を語った勢いでサウナ万歳を三唱してみせる。 先生に叱られても怖くない「魔法」を伝導したかとおもえば駄菓子を褒めそやす。 猫かわゆい、ああ、ダンボール戦機懐かしい、あとは若菜集も面白くってね…