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血管カテーテル治療のゲームチェンジャー?投資家目線で心臓専門医がショックウェーブメディカル(SWAV)を解説します!

こんばんは。兼業投資家YusKeyです。

今回は個人的にずっと注目していた企業について解説します!

日本時間2021年11月9日に第三四半期決算(3Q)を発表したショックウェーブメディカル社(ティッカーシンボル:SWAV)。昨年からずっと注目していた企業でした。

なぜなら、私自身の本業に深く関わるから(笑)。そして投資先としても十分魅力的でしたが、いかんせん地味?でニッチな小規模な企業でしたので知名度があまりあがりませんでしたが、今回3Q決算を受けてTwitterやClubhouse等でちらほら耳にすることがあり、投資先としてどんな会社か伝わりにくい企業ではないかと思い、どうして魅力的なのかを伝えるため記事を作成しました。

ショックウェーブ(ShockWave)って、何??

まず、ショックウェーブメディカル社というのは、医療機器メーカーです。ちなみにどんなものを作っているかというと、企業の作成した動画がありますので、飛ばしながらでも良いのでぜひ御覧ください。

ほんとにざっくりいうと、

『血管内の石灰化した病変(動脈硬化の成れの果て)を衝撃波で細かく砕く治療』

です。

これまで、我々循環器カテーテルインターベンション医が歴史的に悩まされていたことは、この石灰化した血管をどう治療するか。です。通常、カテーテル治療というのは、狭い血管を風船(バルーン)で広げて、広がったところにメッシュ状の金属(ステント)を置いてきて完結します(例外ありますが割愛します)。その中で石灰化病変を持つ患者さんの治療成績および死亡率はそうでない方と比較し倍近くのリスクがあると言われています(1.)。一番の理由は、石灰化した血管は硬すぎて広がらないこと。それに対処するため、現在日本では大きく分けて2つの特殊治療機器が使用できます。

一つがローターブレーターという石灰化を削る治療機器です。こちらはボストン・サイエンティフィック社(ティッカーシンボル:BSX)が開発、販売しています。

もう一つがダイヤモンドバックといって、こちらも血管内の石灰化を削る治療です。こちらの製造販売はCardiovascular systems社(ティッカーシンボル:CSII)です。動画は少しこちらは長いので2:00くらいから御覧ください。

これらの治療の有効性はすでに示されており(2.)、我々が普段のカテーテル治療で使用しているものですが、今回のショックウェーブはこれらと全く異なるコンセプトで開発されました。

一番の大きな違いは血管内結石破砕術(IVL)と呼ばれる技術を用いていること。これにより上記2つのように削るときに出る削りカス(石灰化の断片、白血球に食べられるナノサイズなので基本治療後に問題になることはほとんどありません)が出ないことや、風船(バルーン)治療とやり方がそれほど変わらないので、簡便であるメリットがあります。

現在、米国ではすでに冠動脈用デバイスはFDAの認証を受け、日本でも臨床治験が進んでおり、経過は順調と聞いています。決算資料にも触れていますが、米国でも使用施設が広まってきています。また、心臓以外の血管治療では現在日本で石灰化に対する治療方法は極めて限られているため、このIVLという新たな治療法が入ることにより大きく変わる可能性があります。

実はこの、特殊技術がいらない、というのは重要で、日本はさておき、アジア圏やアフリカなど新興国で今後大きく広まる可能性があるということです。先程のローターブレーターなどはある程度の技術が必要で、以前働いていた職場にもインドや東南アジアなど海外から見学や実技指導を受けに来る医師がひっきりなしにきていました。使用できるハードルが低い新技術は、世界的市場が大きいということにほかなりません

余談ですが、米国で毎年秋に行われるカテーテル治療の大きな学会が2つあり、心臓血管(冠動脈)ではTCT、末梢血管(下肢)ではVIVAという学会が開催されます。今年はCOVID-19の影響で縮小されたようですが、ハイブリッドで無事開催されShockwave IVL関連の有効性の発表があったようです。

投資家目線で分析!

さて、肝心の投資先としての魅力ですが、Seeking Alphaからグラフを引用したのが以下になります。

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と素晴らしい成長を見せています。Earnings Callでは日本の導入時期にも触れていますが、売上として計上されるのは2023年になりそうです。

これまでの週足チャートも見ていきます(Tradingview)。

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きれいな右肩上がりで、過去の下値を結んだチャネルラインではうまくセンターラインがサポートして効いていそうです。

最後に個人的なSWOT分析を載せておきます。

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強み(S)や機会(O)に関してはこれまで触れてきましたので、Riskとなるマイナス要因についてもいくつか触れておきます。まず今期に黒字化しそうですが、今後の海外展開を考えたときにさらなるマーケティング費用がかさむと考えられます。さらに、COVID-19パンデミックがもし第6波などがあった場合、医療制限を受けるため、売上が思ったように伸びないなどのリスクがあります。

また治療の適応となる割合ですが、現状冠動脈における石灰化病変ならびに特殊治療が必要とされるケースは全体の10−15%程度です。さらに、昨今のカテーテル治療の適切化の波におされ(それだけ経口治療薬管理が進歩しているからですが)、米国の治療件数は年々減少傾向にあります。

そして、あくまで現場の考えですが、一番大きな問題はこれまでの使用していた石灰化治療機器との比較です。IVL治療はこれまでの切削治療から、正直なところ置換されるものではなく、あくまで補助的立場に過ぎないと思っています。一番の大きな理由は先ほど述べた「石灰化」というのは非常に抵抗も強く、そもそも病気のある場所に機器が持ち込めないというジレンマがあるのです(3.)。そのため、物理的に削っていく治療が同時に必要になることも多く考えられ、その場合この特殊機器を2つ使用する必要があります。

日本では特に医療費の高騰が叫ばれ、この重要な治療も保険点数というものが個別に設定されますが、どちらか一方しか使用できない、請求できない、などのルールが引かれると、病院側の損失になってしまいますので、導入が一部の施設のみになり、件数が増えない→企業としての売上も上がらない という可能性があります。

まとめ:今までの解説をまとめると下記の通りです。

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いかがでしたでしょうか。個人的には非常に期待してる機器であり早く使用したいと思っています。投資先としてもまだまだ伸びしろはありそうですので、十分魅力的かなと、思います。

しかし、マイナス要因も含めリスクもありますので、投資をする場合は十分リスク管理を行いながら投資先として検討してください。本記事は個別銘柄の売買推奨ではありません。投資は自己責任でお願いいたします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

1. 冠動脈疾患の石灰化合併患者のカテーテル治療を分析した7つの試験のメタ解析

2. 待機的に使用したローターブレーターの有効性

https://doi.org/10.1002/ccd.26411

3. カテーテル石灰化治療のまとめ

決算資料



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