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『地味にすごい探究学習のはじめかた / すすめかた』WEB特別インタビュー 第三弾「ポジション探しは『雑食的に』」

本noteは、2024年4月18日発売の『地味にすごい探究学習のはじめかた / すすめかた』の出版を記念し、「第4章 探究の “キロク”」に誌面の都合上、どうしても入れきれなかった方々の、探究プロジェクト活動の記録を皆さんに公開します!

探究学習に挑んできた方々の体験談から、本書のイメージをつかんでもらえれば幸いです。

SDGs全国フォーラム2022 滋賀・びわ湖 学生実行委員会 委員長
佐藤 彩香さん

──学生時代、どのようなことを行っていたかを教えてください。

私は高校時代、立命館守山高校で硬式テニス部に所属しており、特段、社会課題などには興味がありませんでした。しかし、高校の授業、今で言う探究学習のようなものを通じて、国際協力について学んだことがきっかけで、社会に関わる活動への興味を持つようになりました。

大学入学後、2020年は新型コロナウイルスの影響で大学生活がスムーズにスタートできませんでした。しかし、オンラインでイベントを行うSustanable Weekに出会い、活動を始めることになりました。そこでは、SustainableWeek 2020の企画リーダー、および2021年度はSDGs全国フォーラム2022 滋賀・びわ湖の学生実行委員会の委員長を務めました。

──当時の悩みや、「こうすればさらによかったのではないか」という思いはありますか?

私が大学生活で挫折を味わったのは、2020年の企画リーダーを務めた際でした。自身の周りの人たちが、様々な活動を経験しており、その中での企画リーダーだったため、彼らについていく、それ相応の頑張りが求め続けられたことに非常にプレッシャーを感じていました。そんな中でも、団体内で自主的に企画書作成やプレゼン講座を開き、学び続けたり、先輩方の手厚いサポートがあったりしたため、スムーズに活動を進めることができました。

オンラインに活動場所が変わったが、皆で活動を継続できた。

しかし、企画後の報告書作成などは、他の人に任せきりになってしまいました。企画の最後まで職責を果たせなかったと、当時は感じていました。高校時代に、部活やクラスのリーダー経験があった自分にとって「なぜ自分はできないんだろう」と自問自答し、後悔したことを覚えています。

そのときは、これまでの活動を中心に動いてくれていた方々の支えがあったにもかかわらず「他人からどう見られているんだろう?」という、今思えば意味の無いような不安を抱えていました。自分と他者の評価のギャップに苦しみ、一時は精神的にも参っていました。しかし、実際に活動を進める中で、多くの方々からのサポートを受けていく中で、自分が優等生である必要はまったくなく、それでも問題ないと気づくことができました。
やがて活動を通して、黒子役となって着実に仕事を進め、達成感を得ることにも価値を見出せるようになりました。そうした経緯を経て、2021年には全国からSDGsに関する活動家や自治体が集まるイベントの学生リーダーを務めました。このときは「みんなを引っ張るリーダー」というイメージを前提とするのではなく「みんなをサポートする立場のリーダー」に徹すると考えて、挑みました。このように、自分の考えを否定的に捉えるのではなく、「できそうなことからやってみる」前向きな姿勢で動けたことはとても良かったと振り返っています。

──探究学習に挑む高校生に一言。

私には未だ、自力で新しいことを立ち上げる力が十分に身についているとは考えていません。そのため、周りの流れに身を任せることで、今の場所に辿り着くことができたと思っています。一方、高校生や大学生には、自ら判断し行動する自由があります

なにか自分の中でやりたいことが既にある人は、無駄な時間の使い方よりも、自分の想いを注げる活動に時間を費やす方が賢明です。一方で、私のようにとりあえず初めて見るタイプであれば、一旦続けるという選択肢もあります。また、次に進む道が見えていない場合にも、現状の取り組みを続けてみるのがよいでしょう。自分にとってのメリットを冷静に整理してみて、なにか一つでも思いついた場合には、試行錯誤を重ねながら続けてみるのもよいかもしれません。

現在の教育は「やりたいことを見つける」ことを重視していますが、まずは目の前のことを何でもやってみる「雑食的」な生き方から得られる多様な経験にも価値があります。プロフェッショナルを目指さずとも、個人個人に合った生き方が存在するはずです。ジェネラリストとして活躍する道もそのひとつです。皆さんにとって、幸せな探究学習ができる事を祈っています。

⚪︎ココに注目!

探究学習において、自分に合った役割を見つけることが重要であることが分かります。第2章では「自分の探究テーマがなければ『サポートキャラ』になってみるのもよい」と書かれていますが、佐藤さんはその典型的な例と言えるでしょう。プロジェクトのリーダーと聞くと、メンバーを先導する強力なリーダーシップが求められると思われがちですが、実際には色々な人とコミュニケーションを取りながらサポートに徹する「プロデューサーシップ」のような考え方も重要となります。そのようなサポートの役割を極めることで、新たなリーダー像が浮かび上がってくるのです。

探究学習においては、必ずしも自分の「テーマ」に拘らず、プロジェクトチームの中での「ロール(役割)」について考えることも大切な要素の一つだと言えます。どのようなプロジェクトにも地味ながら重要な仕事がたくさんあり、「雑食的」にとにかくやってみるという姿勢が、自分の立ち位置を見つけるために不可欠なのかもしれません。

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そのほか、WEB特別企画に関する記事は以下のマガジンから、ご覧頂けます。

書籍では、探究活動に挑んだ「探究の “キロク”」だけでなく、皆さんが探究学習を『はじめる・すすめる』ために必要なことをたくさん盛り込んだ内容になっています。

ありがちな「こんなすごいことやってる!」といった内容ではなく、学生達が「どんなことに悩んでいたのか、どうやって解決したのか」に焦点を当てた書籍となっています。

書籍の詳細な情報は以下のページから確認できます。

書籍紹介

【目次】

はしがき
第1章 探究と “デアウ”
 ・「サステナビリティ」との出会い
 ・はじめての探究で見えたもの
 ・まだ誰も探究を知らない!
 ・SDGsの文化祭 Sustainable Week
 ・探究の「研究室」をつくる
 ・探究学習=先生と共に学ぶこと
 ・レジリエンス:「つまづき」との付き合い方
 ・学びは、まず一歩目を踏み出してから
 ・軌道修正のテクニック:リフレクション
〇コラム:「サステナビリティ」って何だろう?
第2章 探究を “ミツケル”
 ・「犬」をテーマに選んだ2つの探究
 ・そもそも「興味のあること」ってナニ?
 ・サポートキャラになる、と言う選択
 ・ルーブリックを知れば百選危うからず
 ・探究をハックして、将来につなげる
 ・「手中の鳥」から、何ができるか
第3章 探究を “ススメル”
 ・研究室の成果『SDGs表現論』
 ・完璧よりも「できた!」を目指す
 ・探究のスパイラルは嘘だった?!
 ・数値目標を武器に使用
 ・素直にレールに乗る力
 ・逃げるは恥だが役に立つ
〇コラム:「手触り感」のあるSDGsへ
第4章 探究の “キロク”
 ・プロジェクトに挑戦した大学生たちの記録
 ・ケース1:トラブルにめげずに、気持ちを維持してやり通す
 ・ケース2:現在の自分のキャパを知っておく事の大切さ
 ・ケース3:「キャラ」ではない自分を探す
 ・ケース4:自分の思いだけでは、人は動いてくれない
 ・ケース5:自分軸が試される、プロジェクトの「引き継ぎ」
 ・インタビューを通して
〇コラム:「学生起業家 V.S. 学生投資家」イベントの構想
第5章 探究と “ミライ”
 ・これからの探究のパーソナルトレーナー
 ・AIネイティブ世代のリテラシー
 ・AI時代に勉強はいらない?
 ・AIとともに、より多くを学ぶ時代へ
 ・AIによって、仕事は奪われる?
 ・デジタルフレンドリーな若者達
 ・「デジタル保健室」バーチャル・スクールへの道のり
 ・「地味にすごい」ホンモノの探究を目指そう
おわりに

【購入特典】
・探究学習のルーブリック見本
・探究学習のリフレクションシート
・探究学習に役立つオンライン学習シート

書籍詳細

出版社:紫洲書院
出版年月日:2024/4/18
ISBN:978-4-909896-14-8
判型:B6
ページ数:‎ 148ページ
書籍定価:1,870円(税込)
Kindle定価:1,250円(税込)

著者紹介

上田 隼也(うえだ じゅんや)
一般社団法人インパクトラボ 代表理事
熊本県益城町出身。立命館大学生命科学部卒業。大学在学中にSDGsの文化祭となる「Sustainable Week」を立ち上げ、後継団体としてインパクトラボを設立。立命館守山高等学校をはじめ、滋賀県内外の高校にて、総合的な探究の時間の教員やアドバイザーを担う。その他、大学発ベンチャーである株式会社COMARSを創業、現在、取締役会長。著書に「SDGs表現論-プロジェクト・プラグマティズム・ジブンゴト-」(海竜社)、監修として、「調べよう考えよう!シリーズ みんなで調べよう・考えよう!小学生からのSDGs丸わかりBOOK」(主婦と生活社)がある。

戸簾 隼人(とみす はやと)
滋賀大学大学院データサイエンス研究科
滋賀県野洲市出身。立命館大学生命科学部卒業。「Sustainable Week」の初期メンバーとして所属し、後に上田氏らと共にインパクトラボを設立。教育機関や行政でのICT技術の導入検証や、事業実施による意識調査といった効果測定に関する事業を担う。大学院では、教育政策面において非認知能力や探究的思考といった定性的な情報に適応可能な評価指標の作成に取り組む。また、観光政策面においてはビッグデータやIoTを活用し、データサイエンスによる自転車観光の安全性向上の仕組みを開発している。

【監修】山中 司(やまなか つかさ)
立命館大学生命科学部教授、博士(政策・メディア)
慶應義塾大学卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア博士課程修了。専門は、大学英語教育、言語論、言語哲学。一般社団法人 大学英語教育学会 (JACET)、 IEEE Professional Communication Society, Japan Chapterに所属。主な著書に「自分を肯定して生きる-プラグマティックな生き方入門-」(海竜社)、「プロジェクト発信型英語プログラム-自分軸を鍛える「教えない」教育」(共著・北大路書房)、「AI・機械翻訳と英語学習:教育実践から見えてきた未来」(朝日出版社)がある。


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