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『地味にすごい探究学習のはじめかた / すすめかた』WEB特別インタビュー 第二弾「走りながら、学ぶ」

本noteは、2024年4月18日発売の『地味にすごい探究学習のはじめかた / すすめかた』の出版を記念し、「第4章 探究の “キロク”」に誌面の都合上、どうしても入れきれなかった方々の、探究プロジェクト活動の記録を皆さんに公開します!

探究学習に挑んできた方々の体験談から、本書のイメージをつかんでもらえれば幸いです。

Sustainable Week 2019 運営メンバー
西野 日菜 さん

──学生時代、どのようなことを行っていたかを教えてください。

2018年4月、大学2年生になった時に、SustainableWeekの運営に参加しました。私は当初、会計の業務を担当していましたが、実際にはそれ以外のさまざまなタスクも同時にこなしていました。途中からあるプロジェクトの代表になりましたが、過剰な責任感と義務感から動きづらくなるのが分かりました。サポート側であれば自由に動けるのですが、周りがそうではなかったため、結局は1人で多くを担うことになり、そのポジションを交代してもらうことになりました。

──当時の悩みや、「こうすればさらによかったのではないか」という思いはありますか?

ある年には、1年で50以上のイベントを行いました。事実上、週に1回イベントを開催するというペースです。この激しい活動は、正直なところ、良くありませんでした。イベントをたくさん開催することで短期的な成果を得ることはできますが、忙しさの中で後輩の育成ができなかったことを反省しています。後輩たちはさまざまなアイディアを持っていたものの、それを実行に移す技術や知識を育てることができなかったため、結局は私たちが動かざるを得ない状態になってしまっていたと思います。

さらに、活動の中で私は自分の限界を感じることもありました。特に繁忙期には、自分の学業や他の責任とのバランスを取ることが難しくなり、最終的にはいくつかのプロジェクトから手を引くことを選択しました。この経験から、自分の能力や限界を理解することの重要性を学びました。

地域との関係で直面した挑戦の一つは、「むらのこ」プロジェクトでした。このプロジェクトで私たちは、地域の関係人口を増やすという大きな目標を掲げました。具体的には、地域のスーパーでヒアリングを行うなどして、地域とのつながりを深める努力をしました。しかし、実際に地域に目に見える変化をもたらすことができたかを検証するまでには至りませんでした。つまり、相手の地域が何を求めているかを把握できていなかったため、プロジェクトのゴール設定をもう少し検討する余地があったかもしれません。一方で、多くの人が関わり、地域からの肯定的なフィードバックも得られたため、完全な失敗とは考えていません。

むらのこプロジェクトで、まちの人たちに活動の説明をする西野さん

SDGsを探究学習のテーマとすることについては、そのインパクトの大きさを理解しつつも、それをむやみに教育プログラムに組み込むべきではないと考えています。私自身、社会のシステムや教育の仕組みに疑問を持ちながらも、身近な企画やアイディアを通じて何か変化をもたらせるか試みました。しかし、実際に自分が本気で取り組みたいと思うテーマやプロジェクトが見つかるまでは、多くのアイディアを持っていたとしても、それをもとにした企画は表面的なものに留まってしまいがちです。

──探究学習に挑む高校生に一言。

例えば、もし自分がもう一度あの時期に戻ることができるなら、「周りに流されることも重要な経験だが、それに振り回されすぎずに、自分の意志で決断する力を持つことが大切だ」と伝えたいと思います。周りに流されずに自分の立ち位置をしっかりと確保するように、と助言したいです。

⚪︎ココに注目!

チームでプロジェクトに臨む以上、立場に関わらず、タスクを共有し、共に成長していくことが望ましいですが、現実はそう簡単ではありません。以降のインタビューにも同様のエピソードがたびたび出てきますが、人に仕事を任せることは想像以上に難しいのです。イベントの作業を一人で全て抱え込んでしまったという話は、その一例です。

一方、「むらのこ」プロジェクトの失敗から、目標を徹底的に具体化し、数値化することの重要性が明らかになりました。漠然とした目標では、成果を適切に評価できず、改善点を見出すことができません。このことが、SDGs関連のテーマを扱う際の「危険性」という認識につながっている点は、貴重な学びと言えるでしょう。手触り感、リアリティのある学びを得るためにも、目指す地点はできるだけ具体的な方が良いということですね。

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そのほか、WEB特別企画に関する記事は以下のマガジンから、ご覧頂けます。

書籍では、探究活動に挑んだ「探究の “キロク”」だけでなく、皆さんが探究学習を『はじめる・すすめる』ために必要なことをたくさん盛り込んだ内容になっています。

ありがちな「こんなすごいことやってる!」といった内容ではなく、学生達が「どんなことに悩んでいたのか、どうやって解決したのか」に焦点を当てた書籍となっています。

書籍の詳細な情報は以下のページから確認できます。

書籍紹介

【目次】

はしがき
第1章 探究と “デアウ”
 ・「サステナビリティ」との出会い
 ・はじめての探究で見えたもの
 ・まだ誰も探究を知らない!
 ・SDGsの文化祭 Sustainable Week
 ・探究の「研究室」をつくる
 ・探究学習=先生と共に学ぶこと
 ・レジリエンス:「つまづき」との付き合い方
 ・学びは、まず一歩目を踏み出してから
 ・軌道修正のテクニック:リフレクション
〇コラム:「サステナビリティ」って何だろう?
第2章 探究を “ミツケル”
 ・「犬」をテーマに選んだ2つの探究
 ・そもそも「興味のあること」ってナニ?
 ・サポートキャラになる、と言う選択
 ・ルーブリックを知れば百選危うからず
 ・探究をハックして、将来につなげる
 ・「手中の鳥」から、何ができるか
第3章 探究を “ススメル”
 ・研究室の成果『SDGs表現論』
 ・完璧よりも「できた!」を目指す
 ・探究のスパイラルは嘘だった?!
 ・数値目標を武器に使用
 ・素直にレールに乗る力
 ・逃げるは恥だが役に立つ
〇コラム:「手触り感」のあるSDGsへ
第4章 探究の “キロク”
 ・プロジェクトに挑戦した大学生たちの記録
 ・ケース1:トラブルにめげずに、気持ちを維持してやり通す
 ・ケース2:現在の自分のキャパを知っておく事の大切さ
 ・ケース3:「キャラ」ではない自分を探す
 ・ケース4:自分の思いだけでは、人は動いてくれない
 ・ケース5:自分軸が試される、プロジェクトの「引き継ぎ」
 ・インタビューを通して
〇コラム:「学生起業家 V.S. 学生投資家」イベントの構想
第5章 探究と “ミライ”
 ・これからの探究のパーソナルトレーナー
 ・AIネイティブ世代のリテラシー
 ・AI時代に勉強はいらない?
 ・AIとともに、より多くを学ぶ時代へ
 ・AIによって、仕事は奪われる?
 ・デジタルフレンドリーな若者達
 ・「デジタル保健室」バーチャル・スクールへの道のり
 ・「地味にすごい」ホンモノの探究を目指そう
おわりに

【購入特典】
・探究学習のルーブリック見本
・探究学習のリフレクションシート
・探究学習に役立つオンライン学習シート

書籍詳細

出版社:紫洲書院
出版年月日:2024/4/18
ISBN:978-4-909896-14-8
判型:B6
ページ数:‎ 148ページ
書籍定価:1,870円(税込)
Kindle定価:1,250円(税込)

著者紹介

上田 隼也(うえだ じゅんや)
一般社団法人インパクトラボ 代表理事
熊本県益城町出身。立命館大学生命科学部卒業。大学在学中にSDGsの文化祭となる「Sustainable Week」を立ち上げ、後継団体としてインパクトラボを設立。立命館守山高等学校をはじめ、滋賀県内外の高校にて、総合的な探究の時間の教員やアドバイザーを担う。その他、大学発ベンチャーである株式会社COMARSを創業、現在、取締役会長。著書に「SDGs表現論-プロジェクト・プラグマティズム・ジブンゴト-」(海竜社)、監修として、「調べよう考えよう!シリーズ みんなで調べよう・考えよう!小学生からのSDGs丸わかりBOOK」(主婦と生活社)がある。

戸簾 隼人(とみす はやと)
滋賀大学大学院データサイエンス研究科
滋賀県野洲市出身。立命館大学生命科学部卒業。「Sustainable Week」の初期メンバーとして所属し、後に上田氏らと共にインパクトラボを設立。教育機関や行政でのICT技術の導入検証や、事業実施による意識調査といった効果測定に関する事業を担う。大学院では、教育政策面において非認知能力や探究的思考といった定性的な情報に適応可能な評価指標の作成に取り組む。また、観光政策面においてはビッグデータやIoTを活用し、データサイエンスによる自転車観光の安全性向上の仕組みを開発している。

【監修】山中 司(やまなか つかさ)
立命館大学生命科学部教授、博士(政策・メディア)
慶應義塾大学卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア博士課程修了。専門は、大学英語教育、言語論、言語哲学。一般社団法人 大学英語教育学会 (JACET)、 IEEE Professional Communication Society, Japan Chapterに所属。主な著書に「自分を肯定して生きる-プラグマティックな生き方入門-」(海竜社)、「プロジェクト発信型英語プログラム-自分軸を鍛える「教えない」教育」(共著・北大路書房)、「AI・機械翻訳と英語学習:教育実践から見えてきた未来」(朝日出版社)がある。


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