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『半分、青い。』それはリトマス試験紙のようなドラマだった

久しぶりに朝の #NHK連続テレビ小説 を視聴した。
『 半分、青い。 』
実在した人の半生をえがいたドラマではなく、北川悦吏子脚本のオリジナルストーリードラマである。
あらすじは鈴愛(すずめ)という女の子が病気で片耳きこえなくなったり、幼馴染みとはすれ違ったり、漫画家目指すもの挫折したり、結婚するもの離婚したり、と、いろいろありながら最後あるものの発明にたどり着くというもの。適当なあらすじと言われそうだが、本当にこんな感じのドラマだった。

子役が演じる小学生から永野芽郁たちが演じる高校生になったあたりから見始め、最終回までほとんど視聴した。リアタイは無理だったのでTwitterに感想書くことは少なかったけれど、他の人の感想を読みにいった。ノベライズも上下巻とも購入した。『半分、青い』という物語にはまっている状態だったんだと思う。思うけど手放しで良かったと周囲にすすめられないドラマだった。

ドラマにおける不気味の谷現象

このドラマは常に視聴者を試していたし、そして脚本家はそれを隠そうとしなかった。
不気味の谷現象というのがある。ロボットや人形などの外見を実際の人間に近づけていく、途中までは好感をもつが一定のところから気味悪さや嫌悪感を抱くというものだ。

虚構(フィクション)の世界はどこまで現実の世界に近づけることができるか。

脚本家はこのドラマで最初の制作段階から最終回までこの境界線を刺激し続けた。おそらくこれまでの朝の連ドラの概念を壊そうと考えた結果だろう。脚本を担当すると発表された頃はTwitterで1971年生まれの人のエピソードを収集し、亀のフランソワなどを採用する。そのほか自身や自身の友人のエピソードを採用した。(そこで終わればまだよかった。一度物語として発表したにも関わらず「こんなことありえない」といった視聴者の感想が並ぶと脚本家は放送中にも関わらず実体験であると印籠をかざしている)

「事実は小説よりも奇なり」というように、現実世界では想像できないような様々なことがおこる。それを虚構の世界に落とし込んだ結果、Twitterのタグ乱立に代表される視聴者の感想分裂がおきた。「ドラマだから構わない」と「ドラマでも許されない」という境界線がその人によって違うことを浮き彫りにした。それも深く深く。
ドラマの内容を肯定すれば信者扱いされ、否定すればアンチ扱いされる。青色か赤色のどちらかの色しかないリトマス試験紙のように。ここがよかった、悪かったという素直な感想を書くのにハードルが高いドラマとなってしまった。

細部にまで気配りできなかった残念さ

視聴者を試すのに夢中だったのか、細部までの気配りが行き届いていないことが目立った。
ドラマ序盤、視聴者からこれはおかしいという意見がでてきたのは鈴愛がマグマ大使を知っているのは年齢的におかしくないか、とかだった。それらは次の回や翌週で理由が説明されてきたが、回がすすむにつれ段々ドラマ内での説明がなくなってきた。脚本家がTwitterで補足説明し、反感をかった。

ここ最近のドラマ視聴者は実に細かいところまで気づく。一瞬しかうつらなかった文書や看板・ポスターの文字の仕掛けや、後ろの方にいる登場人物たちのやりとりの様子など、観察し疑問に思っている他の視聴者にTwitterなどでそれらを共有する。つまりセリフやナレーションで説明しなくても、演出や小道具で伝えようとすれば視聴者は気づいてくれるのだ。しかしこのドラマはそれすらなかった。季節や時間のつじつまが合わないところも多かった。

つじつまが合わないのは季節や時間だけではない。人物の気持ちの変化描写も変だった。取り入れたいエピソード優先で組み立てた、パッチワークのような印象うけたこともあった。漫画家だとか病気だとか子育てに関する問題が身近な人にとってはさらりと触れられ興味なくしたように違うことにうつるのは軽く扱われたみたいで嫌だっただろうと思う。現実の人間も移ろうものだと言われればそれまでだが、もう少し視聴者に説明材料を見せてほしかった。実在の人物がモデルならドラマ以外のところでも補足情報えられるが、これはフィクションなのだから。

演者はとにかくすごかった

色々思うところありつつもこの『半分、青い。』をなんだかんだで最終回まで視聴したのは、やはり面白かったんだと思う。そしてその面白さには今回の演者達がドラマ内でその役を生きていてくれたからだろう。視聴者が鈴愛や律に本気で呆れたり怒ったりできたのは永野芽郁、佐藤健の演技がよかったからに他ならない。そして豊川悦司らはじめ、このドラマの役がその人たちの代表作になるのではないかと思う。

いろいろ思うところあった朝の連続テレビ小説だったが10月より新しいドラマになる。今度のも視聴予定なのでまた感想書けたら書こうと思う。

ところで、
紅白歌合戦にあの脚本家が審査員とかでいそうな気がするのは私だけだろうか……。

#テレビドラマ #ドラマ感想 #半分青い #半分青い感想

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