タクシー 一人芝居 戯曲
優しい話
データ↓
本文↓
タクシー
タクシー車内
運転手とみずき
運転手の後ろにみずきは座っている
♪エンジンの音
明転
間
「え?ああ、すみません。あ、大丈夫ですよ。生きていますから。
間
「タクシーさんは、よくお会いするかなって。怪談とかよく聞くんで。それで心配したのかなって。
間
「そうですか。顔色が。確かに。血色は良くないですね。寝不足で。
間
「いえ。私、大学生で。春休み中で。考え事をしていて。寝付けなくて。
間
「あ、大丈夫ですよ。この後、死ぬとかも無いんで。行ったこと無いなって思っただけです。ほら、この辺、鬼落崖くらいしか有名な場所ないなって。この辺、地元なんですよ。でも、行ったことなかったなって。
間
「そうです。帰省中です。就職したら、帰ってくることも頻繁にはできなさそうだなって。
間
「年末年始が多いんですね。乗せたことはあるんですか?ああ、幽霊も聞いてみたいですが、あの、なんていうか、これから死ぬだろうなって人は。
間
「へー。そうなんですね。辛かったり怖かったりしないですか?
間
「なるほど。タクシーさんはこの仕事は好きですか?
長い間
「ごめんなさい。変なこと聞いちゃって。私、好きなものとか、夢とか、ずっと無くて。今年一年が本当に辛くて。
間
「羨ましいですね。私も、運転が好きだったら良かった。
間
「え?ああ。うーん。確かに。
間
「確かに。好きですね。怪談とか。怖い話とか。そうだ。ありました。好きなもの。
みずきは外の風景から柳の木を見つける
「あ、止めてもらってもいいですか?あの木。柳の木。懐かしい気がして。ここで、おります。はい、大丈夫です。最悪、電話でまたタクシーを呼びますから。ありがとうございました。
暗転
明転
木の前
みずきはタクシーを見ている
「ありがとうございました。
みずきは柳の木の写真を撮る
みずきは微笑む
「あ。
みずきは気に隠れて幽霊みたいに振る舞う
「怪談になれたかな
暗転
END
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