「硬さ」と「痛み」を指標にマッサージする危険性

「硬い、痛い筋肉はマッサージするべきか」

という疑問は常に湧いてくる。そこで今回は、マッサージするべきかそうでないかをどのように判断しているのか考えてみる。

短縮位か、伸張位か

結論から言うと僕は「硬さ」「痛み」だけでは判断せずに、【短縮位】にある筋に対して行なうことが多い。「硬さ」は【伸張位】の筋にも感じることが多いのだが、あくまでも【短縮位】となっている筋肉に対して行い、【伸張位】となっている筋に対しては行わないことが多い。

マッサージをする筋肉を選択する際に「硬さ」と「痛み」のみを指標にしている方が多く感じられる。しかし、【短縮位】なのか【伸張位】なのかという視点が必ず必要だと思われる。【伸張位】となっている筋肉のほうが痛みを訴えていることが多く、もしも「痛み」と「硬さ」のみを指標にしていると【伸張位】になっている筋肉を選択してマッサージしてしまっていることが多いのではないか?

拮抗筋との関係

肩甲骨が外転・下制かつ胸椎が後弯する、いわゆる円背姿勢を例にとる。この姿勢では大胸筋、小胸筋は短縮位となり、僧帽筋上部・中部、菱形筋などと言った後方にある筋群が伸張位となる。後方の筋群は伸張されてしまい、伸張位で収縮しなければなくなる。こうして、僧帽筋上部などはいわゆる肩こりという症状を引き起こす。

しかし、ここで僧帽筋上部線維をマッサージするべきだろうか?確かに伸張位にあり、常にストレスを受けているため硬くなり痛みを引き起こすことが多い。そしてマッサージにて一時的に楽になることはあるものの、筋は緩むため伸張位はさらに進むのではないか?

肩甲骨が外転・下制、胸椎後弯にさせてしまっている構造を直したほうが良いと思われる。となるとマッサージは自ずと短縮位にある大胸筋、小胸筋が第一選択となる。その後に、伸張位にある筋群のトレーニングである。

「痛みを起こしている筋にはマッサージをする。」という安易な考えでは治療時間を延長させてしまい、予後を悪くしてしまう可能性がある。

過活動か、強いられた活動か

いわゆるニーイン(下腿外旋、大腿骨内旋)を例に上げる。ニーインしている患者はよく膝の内側に痛みを訴える。評価により、縫工筋の付着部(鵞足部)にて痛みを起こしているとする。鵞足部は確かに硬く、痛みがある。しかし、マッサージの第一選択はそこだろうか?

ニーインの姿勢では縫工筋は伸張位を取っている。つまり、ニーインすることにより伸張せざるを得ず、強いられた活動となっているのがわかる。では過活動になっている筋肉はどこか?

大腿筋膜張筋が一つの要因として挙げられるだろう。大腿筋膜張筋により大腿骨は内旋し(運動連鎖的に骨盤は前傾)、下腿は外旋する。そして上記同様、短縮位である。つまり、大腿筋膜張筋による過活動により、縫工筋の強いられた活動が生まれていると仮定することができる。(ニーインは患者それぞれであり、大腿筋膜張筋だけの問題ではないことを明記しておく)

ということは、第一選択としてマッサージする筋肉は【過活動かつ短縮位にある筋肉】に多いのではないか?と結論づけられる。
今回は以上。

あなたの臨床推論の一助になれば幸いです。
※あくまでも私自身の臨床推論の一部であり、他の考え方を否定するものではありません。




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