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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.169 映画 リューベン・オストルンド「フレンチアルプスで起きたこと」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 リューベン・オストルンドの「フレンチアルプスで起きたこと」(2014/スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー)についてです。

久しぶりに映画を見てゾワゾワする体験を味わいました。

かっこいい!怖い!面白いとか言うハリウッド的な簡潔なのではなく、リアルな人間の側面を見せたれた感じ。

いや〜な感じを、肌感覚でひしひしと味わう。

割と固定カメラが多く、ワンカット長回しも多い、そこには監督の並々ならぬ冷酷な視線が感じられ、そこで役者は演技をするが徹底的にリアルにそこに佇む。

この感覚、小栗的な感じでしょうか。リアルでもあり演劇的でもあり、妙な緊張感が全面的に漂っている。

スキー場で雪崩に遭い、父親が家族を置いて逃げてしまう。

結局家族は無事だったが奥さんの不信感を持ち、家族の間に不穏な空気が流れる。

大きな事件は雪崩だけだが、そこからずっと緊張感漂う人間ドラマが始まる。

見ていてハッピーな気分にはなれないが、久々にいつもの映画とは違う心がざわめく体験できたことは良かった。



物語は、フランス高級リゾートスキー場。バカンスにやってきた家族。

主人公の父親は普段は仕事人間だが、久々の休みに家族サービスを。

美しい奥さん、2人の息子と娘。

バカンスのある時、スキー場のレストランで食事をとっていると、安全確保のためにスキー場が人工的に雪崩を起こしている。

それをテラスから見ていたが、なんだか規模が大きく、おかしい。

突然雪崩がテラスまで襲ってきて一面白い世界に。

幸い大事には至らなかったが、その時主人公の父親は家族を置いてホテルの部屋に逃げていた。

その期待はずれの行動に妻や子供たちもがっかりし、家族の間にギクシャクとした空気が流れる。

妻は執拗に夫の行動を問いただすが、夫は考え方の相違だと事実を認めない。

子供たちは反抗的な態度をとるようになる。

必死に理想の父親、夫を取り戻そうとするが空回り。

妻一人でスキーに行ったり、知り合った夫婦にその雪崩の話を聞いてもらったりする。

バカンスも残り5日間、冷たくバラバラになった家族の気持ちは取り戻すことができるだろうか。



こういう死ぬかもしれない瞬間に、咄嗟にちゃんとした行動を取れるだろうか。

この映画を見ている時、主人公の父親がまるで自分のように思えて、見ていて苦しかった。

もちろん理想では良い父親でありたいし、良い夫でもありたい。そして良い人間でありたいと思って普段生活しています。

しかし、こう言う事件や事故、アクシデントの時こそ、その人間の本質が現れることがあると思ってしまいます。

もちろん人間完璧な人はいないですし、ストレスで思いがけない行動に出てしまうことも、よくあると思います。

そんな弱い人間はわかりますが、それでもやはり”本質”が出てしまう、という恐怖。

また別の「君のためなら千回でも」と言う映画で、アフガニスタンで戦争が起こり、トラックで国を脱出するときに、ソ連兵が検査して、横にいる知らない女性に出ろと言う。トラックの中の人々は誰も抗議できない。それを息子がいる父親は殺されるかもしれないのに立ち上がって兵士に抗議する。

はたして、自分にはできるでしょうか。

その瞬間に考えては動けません。

日頃から、ちゃんと考えておかなくては。考えるというか心に刻み込んでおく。

家族を守る。女性を守る。他にも人間として父親として男として基本的なことを。



心がザワザワする映画でしたが、観て良かったです。

この監督只者じゃないですね。

リューベン・オストルンド

今日はここまで。



僕が好きなのは、映画を観客にぐるっと向けた鏡のようにすることなんです。「彼の行動はクレイジーだよ」と言って押しのけることはできないし、耐えず自問自答をすることになる。確かに、あなたが言ったように、僕たちは観客を、彼らがいろんな視点を持てるように訓練しなくちゃいけないのかもしれない。
/リューベン・オストルンド













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