趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.331 映画 原恵一「カラフル」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は映画 原恵一の「カラフル」(2010/日)についてです。
クレヨンしんちゃんの映画で有名になった原恵一監督の作品。
一度死んだ人間がもう一度中学生として生まれ変わりもう一度人生をやり直す話。
そう割と天国か地獄でもう一度生まれ変われと言う映画は古今東西あるような気がする。
ただこの映画の凄いところは、あのクレしんの監督が、生まれ変わった後の中学生の生活が妙にリアリティを持って描かれているところだ。
全然アニメ風ではなく、とことん実写に近づけようとしている。
アニメなのに実写に近い表現。
一瞬「おもひでぽろぽろ」が頭に浮かんだが、あれは過去シーンはちゃんとアニメだからこそ実現したものだった。
今回は生まれ変わりや天使の少年が出てくる以外は、とことん現代の日本。
そして二子玉川の実写の映像をものすごく正確にトレースしている。
このなんとも言えない違和感は果たして正解だったのかわからない。
わからないけど、フワッとした綺麗なアニメだったら何も感じなかったでしょう。
原恵一監督の凄さを感じました。
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物語は、主人公「ぼく」は一度死んで天国へ、天使のプラプラに抽選に当たったと言われ、中学生の男の子に生まれ変わってもう一度人生をやり直すことに。
目を覚ますと、病院で薬を飲んで自殺して、奇跡的に生き返ったとわかる。
病院には両親と兄が心配そうに見ていて、退院するとその少年の家で生活することになる。
部屋を見ながら、生まれ変わった自分のことは何もわからない。
家族がいて、中学生で、絵が上手いことぐらい。
そこへ天使のプラプラがやってきて報告を受ける。
自殺した理由は、好きだった後輩の女の子が援交をしているところを偶然見て、また母親も不倫していたことが原因だった。
主人公の少年はそれを知った母親を毛嫌いし、学校へ登校再開するが、クラスメイトからは遠巻きにされる。
美術部だったので、美術教室へ行くと、描いたことがない神秘的な自分の絵を見る。
そこへ後輩の女の子が来て、また共同不審な同じ美術部の女の子がなんだか雰囲気が違うと指摘される。
少年は毎日絵の前で眺めているだけ、それを後輩の女の子がよく話しかけてくれるようになる。
ある日その女の子が援交しようとするのを目撃し、咄嗟に手を引っ張り連れ出す。
しかし彼女は悪びれず、少年はショックを受ける。
母親が心配して声をかけられても、不倫のことを言ってしまい、そのまま家を出て近所の神社に行くが、不良に絡まれてリンチにあう。
大怪我をして入院するが、見舞いに来た美術部の女の子を脅し、天使の忠告も聞かない。
あと半年で、ちゃんと人生をやり直さなければいけないのに、ひどくなるばかり。
そんな中、学校でもう一人浮いている男子生徒と親しくなる。彼は玉電が好きで
電車の跡地を巡りながら次第に彼と仲良くなる。
父親と釣りに出かけた時、母親が姑との仲でうまくいかず、精神の薬を処方されていたと聞く。それを主人公は飲んでしまった。
後輩の女の子が美術室で主人公の絵を塗りつぶそうとしているところを見て、かまわないと言い、女の子は美しいものを見ると綺麗だと思う反面、壊したくなると、そして自分のことも。
主人公は人間はカラフルでいいと、いろいろな人間がいるとアドバイスをする。
両親と兄は主人公に芸術系の高校に進学を進める。しかし主人公はやっとできた友人と同じ高校へ行きたいと涙を流し訴える。やっと家族は分かり合える。
主人公は天使のプラプラに呼び出される。再挑戦は成功したのか、生まれ変わった自分の正体は?
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見ている最中、なんだかモヤモヤがあった。
なぜアニメなのに、実写のように撮るんだろう。
でも、その違和感がこの映画の魅力。
ものすごく伝わってくる。
リアルだからこそ、現代の少年の悩みや家族の悩みが。
綺麗な楽しいアニメ風だとそこはやはりふんわりしてしまう。
ああ、面白かったね、で終わってしまう。
特に主人公の友人と美術部の女の子が、どちらもいじめられてかつあまり見た目が良くない。
まさに実際にいるようないじめれっこだ。
そして母親は不倫をして、後輩は援交して、もうそこまで描くのと思いながら
そこは妥協せず、リアルに描いていく。
観ていて全く気持ちが良くない。でもそれがいいんです。
生きるを描くには、圧倒的な現実の痛みじゃなければ。
そんな嫌悪感を抱きながら、ずっと観ていると次第に慣れてきて
主人公がやっとできた冴えない友人と、玉電を巡ることをしたあと、
コンビニの駐車場で座り込んで、肉まんを分け合うシーンがある。
全くオシャレじゃないのに、普通なのに、なぜか心がすごく揺り動かされることに気がついた。
この映画、絵柄や表現は好きじゃないけど、実はすごいのではと思いました。
また、魂が他人に入っている、自分じゃない自分で生きている構造はすごく面白い。
好きじゃないけど印象に残る良い映画を観ました。
今日はここまで。
無くなったものも俺とかが興味を持てば
ちょっとだけ蘇るじゃん
/「カラフル 」より
廃線になった玉電を巡って友人の言った言葉
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