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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.307 映画 ウィリアム・ワイラー「黄昏」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 ウィリアム・ワイラーの「黄昏」(1951/米)についてです。


「黄昏」ってもう一つ1981年のフォンダ親子の映画がありますが、これはもう一つ違う映画。

映画配給会社はなぜ昔の作品と同じ邦題をつけたのでしょうか?それもかなり名作と同じものを。

たまに同じ題名な作品でどちらだっけと言う作品があります。

今作はウィリアム・ワイラー監督作で、名優ローレンス・オリヴィエとジェニファー・ジョーンズが出演。

内容は不倫ドラマです。

お金持ちの店の支配人の男が若い田舎から来た女性に恋して不倫して、店の金を持ち逃げして駆け落ちして、男は落ちぶれ女は女優として成功する。

と、お話だけを文字で読むと単なるベタな不倫ものに思えますが、それがウィリアム・ワイラー演出でモノクロ映像でローレンス・オリヴィエとジェニファー・ジョーンズが演じると、なんと素敵な純愛メロドラマになってしまいます。

ハリウッド黄金期のマジック!

そう結局映画ってどんなによくある話でもひどい男が出てきても、描き方や俳優が素晴らしかったらそれは良い映画にいなるんです。

ただ鳥が襲ってきても、自転車盗んでも、トラックが追いかけてきても、雨が降っても、窓から隣のマンションを覗いても、

なので、この物語から何か教訓をと考えてもまああまり常識的なことしか考えられず、

人生が転落していく男と、逆にどんどん幸せになっていく女性との対比が面白く、そして、ローレンス・オリヴィエの演じる人物の人間の品、プライドには心に響くものがありました。



物語は、田舎娘のキャリー(ジェニファー・ジョーンズ)は姉を頼りにシカゴにやってくるが、働いていた工場で怪我をしてしまいクビになってしまった。

生活に困った彼女は汽車で知り合った男性チャーリーに仕事を紹介してもらうために会いに行く。

その男性チャーリーにお金を貸してもらいレストランでデートする約束されたが、断ろうと思いレストランに行くと支配人ハーストウッド(ローレンス・オリヴィエ)の計らいで、食事をすることに。

そのあとチャーリーに言葉巧みに言い寄られ、同棲することに。

仕方がなく同棲を続けていた彼女はいつ結婚してくれるのかチャーリーに問い詰めてものらりくらりとかわされてしまう。

ある日チャーリーは友人としてハーストウッドを家に招き、自分が仕事で長期留守の間キャリーの相手をして欲しいと頼む。

友人の恋人なので、友情としての関係性。

ただハーストウッドは結婚して子供もいるが、冷淡な妻とは夫婦関係は冷え込んでいる。

次第にハーストウッドは若く素朴なキャリーに惹かれていく。

キャリーもお金持ちでしっかりとしたハーストウッドに惹かれていく。

二人は旅がちなチャーリーの目を盗んで、浅瀬を繰り返す。

キャリーと結婚するために妻に離婚を申し出るが断られ、

店のお金を金庫にしまうとき時間が過ぎて入れられず、

我を失って、そのまま持っていたお金を着服して、キャリーとニューヨークへかけ落としてしまう。

しかし店のお金を持って逃げたことは知れ渡り、どの店も彼を雇おうとしない。

妻と正式に離婚するには全財産を放棄しなくてはいけなく、彼は文字通り一文無しになってしまう。

キャリーはハーストウッドの子を流産して、絶望の中、生活のために女優の仕事を始める。

キャリーはハーストウッドの息子が結婚するので息子に合わせようとするが、ハーストウッドは会場でみすぼらしい姿を見せれずニューヨークへ帰る。

ハーストウッドが帰るともうキャリーの姿はなく、家を出て行ってしまった。

数年後、ハーストウッドは乞食にまで成り下がり、キャリーは大成功して大女優に。

ある夜彼女の楽屋口に恵みをもらいにハーストウッドが来て、久々の再会を喜び、彼の姿を見て二度と離れないと誓う。

彼女が少し部屋を離れた隙に、ハーストウッドは小銭を一枚取り上げると、何も言わずに立ち去っていった。



本当に物語を読むと、中年男が若い女と不倫して駆け落ちして、男は仕事がなくなり、女は出ていき仕事で成功する。

男女のすれ違い、一人は成功して一人は落ちぶれる。

古今東西、小説や映画やオペラでもよくありそうな話。

でもやはり人間は、この愚行をやってしまいがちだし、こう言う物語が好きなのでしょう。

1951年のモノクロなのに、退屈せずものすごく面白かったです。

特に中年男を演じるローレンスオリビエの落ちぶれ具合が半端なくお見事です。

高級レストランの支配人から乞食に!

ただ、ただ最後の最後、かつての恋人に会いますが、鞘を戻さず小銭一枚だけ貰って黙って出ていくところは、最後までプライドを捨てていないんでしょうね。

そして出ていく前、一瞬ガス栓を開けてすぐ閉める動作!!!

死を覚悟して、思いとどまる。

原作ではガス自殺をしますが、映画では思いどどまる!

いろいろな意味を持たせて、答えはありませんが

このシーンは忘れられません。


今日はここまで。






「物乞いに来たんだ」
/「黄昏」より
最後乞食になった主人公がかつての恋人の女優のところへやってきての台詞
君に会いにきたとか、好きだとか、許してくれとか、ではない。







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