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【三題噺 お題】 おいなりさん 空 合体


意味不明な夢を見た。いなりさんの油あげと白い酢飯が、昭和のアニメのように空中で合体するというものだ。

 昨日の夜に家族で食べに行った回転寿司でこんな事があったからだろうか?
大好きなおいなりさんを注文しようと備え付けの端末を手に取った。
「あ。おいなりさんが売り切れてるなんて、珍しいよねえ?」
「そうだなあ。それは、あまりないかもな。オレはトロな」と、父はめったに注文しないトロを注文した。
 他のネタが売り切れていることはたまにあったにせよ、寿司ネタで決してメジャーとは言えない、おいなりさんが売り切れとは、店員さんの発注ミスか何かだろうか?まぁいい。

昨日の私はよっぽどおいなりさんが食べたかったのだなと、そう思うことにした。

「あ。おいなりさん」
その日の夕飯の食卓にのぼったのは、おいなりさんだった。母が一言、言った。
「昨日、これ食べたかったんでしょ。丁度、冷蔵庫に余ってたのよね。油あげ」
今日の母はなんだかやさしく思えた。

「トロが売り切れてたら、今日はここにトロがあったのか」
と、父はおいなりさんの、のっている皿をつつきながらそう言った。
「そんなモノ、家の食卓にはずっとのらないわよ!」
と、母はゾッとするような目を一瞬父に向けた。

今日の母は、やはりいつもの母だった。


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