井中蛙の映画感想41! 2022/12/24(土) 【すずめの戸締まり】※ネタバレ注意

 【すずめの戸締まり】
 鑑賞日:2022/12/24(土)
 視聴方法:劇場(TOHOシネマズ新宿)

 クリスマスイブに友人3人(全員独身男性)と新宿で飯を食っていたのですが、そこで最近見たコンテンツの話になって話題作をチェックしたい欲が高まったのと、解散後に終電までだいぶ時間あったので、「すずめの戸締まり」か「空の大怪獣ラドン4K」でも見るかーと思って映画館に駆け込んだところ、前者の上映開始時間がちょうどいい感じだったのでそのまま鑑賞。(ちなみに後者はそもそも上映期間外だった。年明けにどっかでチェックしたい)

 新海誠作品は「君の名は」「天気の子」をそれぞれ一度テレビ放映で見たっきりで、手堅く面白いなと思ったものの何度も見返すほどどハマりしてるわけではない、くらいの温度感でした。

以下箇条書きで感想
(ちなみに、このシリーズはできるだけ鑑賞直後に、他人の感想や考察を入れる前に自分が感じたことを素直に吐き出す、を心がけて書いてます)

・クリスマスイブの夜の上映ということで、かなりアベックが多かった印象。(右席の男女カップル、左席の新海ファンと思わしき男性グループに挟まれぼっちで鑑賞してきました)新海映画を劇場で見るのは初だったので、デートムービーとしての地位をこんなにも確立しているのか、とあらためて実感。

・結論から言うと王道のロードムービー感があってかなり楽しめました。

・「天気の子」のような「東京=冷たい町」「ヒロインを取るか世界を取るか」みたいなダーティな描写や重いテーマ、複雑な問題提起はあまりなく、主人公が各地の現地キャラと交流しつつ、パートナーとの絆を深めながら超常的な問題にも立ち向かっていき、やがて自分や家族との精神的な問題についても一つの着地点を見出していく・・・とかなり直球のエンターテイメントが志向されてましたね。前情報ほぼ無しで観たのでどういったものがお出しされてくるかは未知数の状態だったのですが、思った以上に王道なシナリオを高品質の作画と演出で魅せてくれて満足でした。

・前半の現地ゲスト交流パートはやっぱり旅物の定番ですが、彼女らの守るべき日常を描くことで「地震を防ぐ」という主人公らの目的にモチベを与えてるのが更にいい。(もっとも、作風があまり重くならないようにミミズ由来の地震で人が4ぬ、という描写は避けられてはいるんだけど)

・旅自体も漫然と続けるのではなくちゃんと「逃亡した要石(猫)の捕獲」という目的を序盤に設定して・・・みたいな脚本の基本を押さえてるのはやっぱりプロの仕事だよね・・・(1日でSNSで目撃情報拡散されすぎやろみたいなツッコミはあるが)

・九州から徐々に北上して東京が最終決戦の地かと思いきや、草太が要石になった時点でまだ映画の半分で(腕時計を見て残り時間の多さとそこまでのテンポの良さに驚いた)、そこから叔母さんとチャラ男と猫でパーティを再構築してさらに東北まで旅を続行する草太奪還編が始まった時はかなりワクワクさせられた。

・ティーンエイジャーの冒険に立ちはだかる最大の障壁「親」の扱いについて、後半で逆に旅のメンバーに加えてしまうことで主人公との確執をきっちり描き切る、というアプローチは割と良い感じだったと思う。(入場特典の小説で叔母さんの目線が補完されてるようですが執筆時点未読)

・「自然災害の脅威にさらされる東京」「草太がミミズ封印のため犠牲になる展開」はテーマ的に「天気の子」からのデジャブを感じさせつつ、結局猫が再度要石になってくれることで「パートナーor世界」的なコンフリクトはあっさり解決されたので、前作へのアンサーみたいなのはあんまり意識してないのかもしれない。まあそこをネットリ描かれても重くなりすぎるからちょうどいい塩梅だったと思うのですが。

・というか全体的に前2作に比べて臭み抜きと大衆向けナイズがより進行している感があった。これを見やすくなって良いと取るか監督の癖(へき)が抜けてしまい凡庸になったと取るか。

・余談だが芹澤が完全に大学時代の先輩にしか見えない(「ゾンビランドサガ」の巽幸太郎にも同じ感想を抱いたけど)

・芹澤が2万円貸してたのではなく実は借りてたのくだり要る?こいつクズやんwみたいに鑑賞当初は思ったのですが、今思うと「貸しではなく借りがある状態なのにそれを踏み倒さずわざわざ探しに行く」時点で友達思い要素の強化になってるのか。クッソあざといw

・仮に1クールアニメの形で、現地キャラとの交流パートをさらに丁寧に描きつつ、世界設定の謎にも少しずつ迫るみたいな構成で作ってたらそれはそれでまた結構な話題作になっていた気もする。まあ見終わった後に「こいつらの活躍がもっと見たい」と思わせるアニメは名作ってことで。

・主人公の実家が東北で、東日本大震災がかなり直接的な要素として扱われているのがやはり印象的でした。(監督本人もパンフレットで「『君の名は』当時はまだどうしても遠回しに触れる感じになってしまった。同年の『シン・ゴジラ』もそうだったと思う」と語っているし)あれが「主人公の幼少期の出来事」として扱われたことに現実の時間経過を実感してしまった。

・猫が草太を椅子に封印したり、叔母さんの本音を語らせたりした意図がイマイチ咀嚼しきれて無いのですが(説明あったっけ?)その辺の世界設定がらみの描写についてはこれからネット上の考察を楽しむことにしたいと思います。

・「映像の迫力より人間ドラマを主軸にした作品なら必ずしも映画館で観る意義は薄いかも」みたいな侮りが正直今日まであったのですが、やっぱり暗室の閉鎖空間で「その映画を観る」以外の行動が取れない状態に自分を置くのは、映画への没入度を高める上で有効な鑑賞スタイルかもしれないと再認識しました。

・結論:クリスマスが誕生日なのですが自分へのクリスマスプレゼントとしてはなかなかいい感じの映画だったなと思いました!

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