プロモデラーの師匠と情けない俺の話 第十五話~心の整理の物語~

師匠が一身上の都合でプロモデラーを引退して引っ越して音信不通になってしまいどこで何をしているかわからない事実を知ったのが十年前ぐらいでそれからは師匠と繋がりのあるおもちゃ屋Iにもおもちゃ屋Yにもほとんど行かなかった。コロナ禍になり日本中でお家時間が増えた事やSNSや新作映画公開などがありここ数年何度目かのガンプラブームが起きている。そんな中なかなか買えないどうしても欲しい塗料を探す為に去年の暮れごろ、かなり久しぶりにおもちゃ屋Yに行った。それまでも数年に一度くらいは行っていたが師匠の行方がわからなくなってから師匠の話題をふることは無かったがこのときに久しぶりに何の気なしに師匠の話をして真実を知ることとなる。
これまでモヤモヤしていて心の整理が付かず書けなかった真実である。


「そういえば、師匠が音信不通になってからどれぐらい経ちますかね?」
おもちゃ屋Yのおじさん
「Oさんね、亡くなったんだよね。Oさんの同級生のお坊さんが近所でね、ずいぶん前に聞いたんだよ。亡くなってから10年ぐらい経つかなぁ。」

このあと色々話したけどこの時の会話の内容をあまり覚えていない。
信じられなかった。
なんで?どうして?何があった?衝撃すぎて頭ん中ハテナだらけで訳が分からず受け入れられなかった。
このとき色々な感情や思いが溢れて精神的にかなり落ちてしまった。
おもちゃ屋Yのおじさんは師匠の死について詳しい事は知らなかったが、その事実をどうしても確かめたくて翌日仕事を早退しておもちゃ屋Iのおじさんに話を聞きに行った。


「お久しぶりです。師匠の事をおもちゃ屋Yで聞きました。俺は・・・」

俺はお店に入り話し始めてすぐに泣き崩れてしまった。平日で開店直後の時間だった為お客さんはいなかったのでおもちゃ屋Yのおじさんは俺が一通り泣いて落ち着いてからゆっくり色々な思いや話を聞いてくれた。
何年も前の事で突然来て泣いている客にも嫌な顔せず優しくしてくれたおじさんにも感謝しかない。

師匠に伝えたかった事がたくさんある


優しい師匠から模型の技術と人としての優しさみたいなことも色々学ばせて頂きありがとうございました
作業場での楽しい時間を過ごさせてくれてありがとうございました
普通の人には経験出来ない貴重な経験をさせてくれてありがとうございました
いつまでも優しく接してくれてありがとうございました

数えても思い出しても声に出しても書き記しても伝えきれない感謝の気持ちでいっぱいです

悔しい気持ちもいっぱいです
あんなに優しく迎えてくれてるのに行かなくなってごめんなさい
馬鹿な弟子でごめんなさい
自分勝手な弟子でごめんんさい
全然うまくならなくてごめんなさい
亡くなった事に気が付かず何年も過ごしてごめんなさい
後悔してもすべてが遅くて取り返しがつかないことはわかってます

本当に本当に今更だけど、絶対叶わないのはわかっているけど

また馬鹿な話しながら作業したかったです
栃木で一番になれたこと報告したかったです
会いたかったです

弟子にしてくれたこと、本当に本当にありがとうございました
俺にとって最高の師匠です


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