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【失敗の本質 日本軍の組織論的研究】 書評#99

みなさん、いつもお世話になっております!
本日は、私の投稿の軸とする一つ「本」「読書」に関して書かせていただきます。

自己紹介に書いたマイルールを守りながら、私の大好きな本について書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

今回は、先の戦争を通してみる組織論です!
しかしながら、先の戦争の失敗を糧に、次は勝つために分析するというものでは決してありませんので、誤解のなきように。

ヘッダーは、相互フォローさせていただいているとらねこさんの作品を使わせていただきました!
ありがとうございます!!


目次


基本情報

戸部 良一他(著)
中央公論新社 出版
1991年8月10日 第1刷発行

全413ページ
読書所要期間12日

購入先

本書ももちろんバリューブックスさんです!!
社会への貢献具合が半端ない!!
いつもありがとうございます!!

私が本書に出会うきっかけ

組織的な、かつ、大規模な失敗はなぜ起こるのか?
そして、繰り返されるのか?

これが私の持つ極めて重大な問いであり、これを私に思わせる根源的事例が、先の戦争である。

こうしたことを学べる本はないかと探したところ、まさにピッタリの内容ではないかと思い、手に取ったものである。

この戦争ほど命がかかっていないまでも、現代社会において数々繰り返される失敗が少しでも無くなるよう自戒を込めて、読んでみたいと感じた。

この本の本質

無謀な戦争で傷つき、倒れ、亡くなった人々及びその家族の皆さんの犠牲の上に築かれた平和と繁栄を享受する我々世代が、日本軍の組織的特性を探求することで、失敗の実態を明らかにし、現代組織への教訓とするための組織論的研究がまとめられたものである。

言うまでもないが、次の戦争に勝つために先の戦争の敗因を探るというものでは断じてない。

そもそも、戦争に勝ちなんてない。
起きた時点で、負けである。

私が感じたこと

1点目 〜人を人と思うこと

これまで数々の戦争、とりわけ先の太平洋戦争(大東亜戦争)に関する本を読んできたが、つくづく日本の失敗の数々は、これである気が個人的には感じているところである。

根拠のない精神論で部下を追い詰め、擁護や励ましもせず、暴行や暴言を繰り返し、自分のメンツ優先で部下の育成支援は度外視。
負傷する兵を治療もせずに見捨て、武器のバージョンアップや敵の兵力を客観的に評価せず見くびる。

一方でアメリカではどうか?

負傷した兵はしっかりと後方へ送り返し、十分治療と休養を取らせ、兵器もそれを使用する人の安全性や操作性を最大限考慮し、成果を出そうとする姿勢。
暗号の解読による、綿密な情報収集と作戦案の立案。
そしてなんと驚くべき感心するポイントとしては、ミッドウェー海戦における総司令ニミッツと部下であるスプルーアンスとは、住居を共にするなどして日常レベルにおいても価値観や情報、作戦思想について、徹底的に共有を意図的に図っていたということである。

残念ながら、山本司令官と南雲中将は、そこまでの共有が企図されていた形跡はなかったということであるから、やはりこうした差が、いざという重要局面において強く影響を及ぼしたのではないだろうか。
つまり、人を人と思い、真摯に向き合う。労わる。
この当たり前のことをきっちり当たり前に行ったかどうかの差が、失敗の本質ではないだろうかと感じた。

2点目 〜命より重たい「空気」

命、つまり人間その個人は、物理的に空気よりもはるかに重量がある。
そして何より貴重、尊いという意味で、極めて重い。

しかし、大東亜戦争当時の、少なくとも戦争参謀達は、机上での会議においての空気を重んじた。
つまり、現場の兵の命、ひいては国民の命よりも、その場を取り繕うことを優先した。
これは、本書でも指摘されているが、その場の人間関係や人情論がまかり通り、本質的議論を避けたということである。

人の命を考えずに、先輩後輩、上司部下の関係性が優勢になることが、本当にあり得るのか?

これは残念ながら、現代において、人の命がかかってないまでも、発生していることだろう。
つまり、人間は往々にして、いや、日本人は往々にしてと言った方がいいのか、同調圧力という名の下に発現させることがだろう。

てはなぜこういったことが起こるのか?

それは、言葉に出さない対話しないということに尽きるのではないだろうかと個人的には考えている。

「きっとこう思っているだろう」
「こう言ったら、変なふうに思われるかもしれない」

そういった思い込みや体裁が、本来するべき本質に向き合わないという現実逃避へと向かわせる。

では、なぜこういった戦争という数多くの人命を賭した場面でさえ、本質に向き合おうとしないのか?

これを、本書から考えるべきが、まさに本書が世間に伝えたいこと(本質)と言えるのではないだろうか。

むすびに(まとめ)

本書は、組織論的考察から先の戦争の失敗について検証するという性質が非常に強い。

私は、「自己紹介」記事に書いたかもしれないが、大人になって学び直し(大学進学)を決意するのだが、その大きな理由の一つが、現在勤める組織をより良いものにしたいという想いであった。

本書から、
「私がなぜ組織論を学ぶのか?」
これを改めて認識させられた感がある。

それは、日本の戦争における緒戦、とりわけ勝利したとされる戦いにおいては、職人と言えるほどの熟練した兵個人の能力に支えられていたということが非常に多いように、これまで色々な戦争にまつわる本を読んできた中で感じている。

しかし、先の戦争中盤あたりから、これら職人の喪失が著しくなっていった。
このことが、日本の明暗を大きく左右した。
つまり、個人の能力に依存する体質から抜け出せなかった、あるいは気づけなかったために、最悪の方向へと自ら進んでいったということが言えるのではないかと考えている。

私の学び直しは、何も私の個人的な成果、貢献を拡張させるためにしているのではない。
組織全体の底上げが目的なのだということを、改めて心に刻むことができたと考えている。

組織全体の底上げ・・・

「何を偉そうなことを」
「それこそ個人の欲望のさいたる行いではないか」
というご指摘を受けそうであるが、比較的パブリックな仕事をさせていただいている私としては、決して見失いたくない考え方、心の持ち様であると考えている。


以上です。

そもそも戦争における成功・勝利とは一体なんなのでしょうか?
成功していたとして、広島や長崎、沖縄、そして東京などなど、各地で起きた悲劇は起こらなかったのでしょうか。

米軍やソ連軍の戦力から比較して、いつかは日本が滅びゆく運命は、戦争が始まった時点ですでに決まっていたのではないでしょうか。

明治維新以降、近代化により後進国から一気に列強の先頭集団へ駆け上がり、それに没頭して国民の心・命を置き去りにしていたのではないでしょうか。

この私の意見は、結果論でしょうか。

素人の浅学の中での考察・感想です。
どうかご容赦ください。

本日も、ご覧いただきありがとうございました!!

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