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旧ユーゴスラビア 3

 昨年、サッカーのFIFAワールドカップで、クロアチアが強豪国として大注目を集めました。かつてはユーゴスラビアという国自体が、「東欧のブラジル」とまで評されたほどサッカーが強かったそうで、今でも有名な選手や監督が世界中で活躍していますよね。

 私にとっては、旧ユーゴスラビア出身の超有名人と言えばこの方、マザーテレサです。1997年の秋、イギリスのダイアナ妃の事故死から僅か数日後に亡くなったことを今でも覚えています。北マケドニアの首都、スコピエ市内にある彼女の記念館や、生誕の地まで訪ねてきました。教会も併設されたその記念館の方に、隅から隅まで丁寧にご案内頂きました。その方はカトリック教徒ではなく、「この国に民族や宗教の自由が認められている(=つまり活動の権利が保障されている)ことを誇りに思う」と言っていました。

 ところで、私がこの方を尊敬する理由は、学生時代にインドのコルカタ(旧称:カルカッタ)市にある「死を待つ人々の家」でボランティア活動をしたことがあるからです。この施設で、食事や掃除や着替えなど、朝からしばらく必死に働いていると、「あなたにしかできない仕事よ~」と私に声が掛かり、呼ばれた先に待っていたのは日本人観光客の団体さん。僅か2時間前に説明を受けた内容を、今度は自分が少し大袈裟に日本語で案内して回り、最後の「募金タイム」ではスタッフ側として自分が大喜びした記憶があります。

 彼女は、首都スコピエ市内に、アルバニア系でカトリック教徒の両親の下に生まれ育った女性で、18歳でこの国を離れた後は僅か数回しか帰国せず、今も墓はインドにあります。生誕地の北マケドニア、そして民族的な故郷でもあるアルバニアの、両国から英雄扱いを受ける、正に歴史にその名を刻んだ偉人です。

 何故「北マケドニア」という国名かと言うと、古代の「マケドニア王国」は現在のギリシャが中心地で、その北の一部だった領土が独立したのに、今ではギリシャ文化の影も形もないからです。このことに、ギリシャが国際的な抗議の声を上げ、国名を変えさせたのです。正にその通りで、現在の公用語はスラブ系のマケドニア語、文字もロシア語と同じキリル文字、宗教もマケドニア正教会(東方正教会)が7割です。要するに、この国は昔から大国ギリシャと戦い、ユーゴスラビア時代に周りと戦い、内部対立を幾度も経験し、今でも多くの国々に頼らざるを得ず、複雑な事情を抱えています。元々ユーゴスラビアという名前は、「南のスラブ(の地)」という意味なのだそうです。

 ちなみに、マザーテレサのことを偽善者とか、人やモノや金を賢く利用しただけとか、悪く言う人々も世界中に数多くいることを付け加えておきます。人気者には「アンチ」が付き物なのですねぇ・・・

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