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『闇祓』

パワハラ、セクハラ、モラハラ、アルハラ、
マタハラ、スモハラ、ハラハラ…

今の世の中では、
たくさんのハラスメントに名前が付けられている。

正直受け取り手の問題なところも大きいと思うし、
幸せなことに、
私は周りの人に恵まれ、
ハラスメントについては
あまり深く考えずに生きてこれていた。

しかし、ある本を読んでゾッとした。
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「聞いて聞いて。」
最初は、嬉しかった。
親友っていうほど親しい子もいなかったし、
心を開いてくれてるんだって。
私の相談にだって乗ってくれたし。

だけど、だんだん、
彼女の相談ばかりが話題を埋め尽くして。
「あの彼は私のこと、好きだよね?」
「あの子が私に冷たいのは、絶対に嫉妬だよね?」

私を見て、私を見て、私を見て。
慰めて。
褒めて。
聞いて聞いて聞いてーー。

ーーコントロールできる、と思っていた。
適当に褒めて、
相槌さえ打っていれば大丈夫だって。
だけど、どうしてだろう。
大事なのが相談されている内容そのもの、
じゃなくなっていく。
私が褒め続けないことが、
どんどん、大きな問題になっていく。

「私のこと嫌いなのーー」
「わたしは親友だと思っていたのに――」
「あんなにあなたと仲良くしてあげたのに恩知らず――」

彼女の中で一番許せない相手が、私になっていく。
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これはエピローグの抜粋だが、
本編ではこういった
自分の心の中にある闇を振りまき、
押し付け、
他人をそれに巻き込む人たちがたくさん出てくる。

そういった人には、
世界の常識とか真っ当な考え方なんて、
一切通用しない。

次第に、
本当に自分だけが悪いかのように洗脳され、
どんどん闇に引きずり込まれていく。

そして、支配される。

これに、辻村深月は
"闇ハラスメント"と名付けている。

世の中には、この"闇ハラ"が蔓延っている。

もちろん強い人間もいるが、
所謂優しい人ほどつけこまれ、
弱った状態でまともにくらってしまうと、
戻ってこれないなんてこともあるだろう。

その渦中にいないと、
「愛ゆえだよね、〇〇のこと心配なんだよ。」
と所詮他人事になってしまう。

愛だったとしても問題はそこではない。のに。

巻末に辻村美月が、

「あれってひょっとしたら
”闇ハラ”だったんじゃない?」
とか、
読み終えて
そんなふうに
思っていただけたら、
とても光栄です。

と書いていたが、
この本を読んでから
考えようとしなくても
”闇ハラ”を意識せずにはいられない頭になっている。

それくらい強烈で、
だけどなぜだか身近で、
世間への、自分自身への警告のように感じた。

人を支配とまではいかなくても、
無意識のうちに
心や目の奥の闇が外に沁み出しているかもしれない。

私も気をつけていかなきゃと思う。

そして何より面白いのが、
この本が自己啓発本ではなく、小説だということ。

なぜタイトルが、
『闇祓』
なのか。
是非読んでみて欲しい。

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