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■アストニッシングX-MEN:ギフテッド

■Astonishing X-Men: Gifted
■Writer:Joss Whedon
■Penciler:John Cassaday
■翻訳:クリストファー・ハリソン ■監修:idsam
■カラー/ハードカバー/1,999円 ■ASIN:B0B1QL3ST4

「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第10号は、TVドラマ『バッフィ ザ・バンパイア・スレイヤー』とそのスピンオフ作品をヒットさせた人気脚本家ジョス・ウェドンを招き、実力派のジョン・キャサディをアーティストに据えて2004年に創刊された『アストニッシングX-MEN』の最初のストーリーアーク「ギフテッド」編を単行本化。

 なお、ジョス・ウェドンは、本シリーズが始まる少し前の2000年に、映画『X-メン』の脚本にも参加していたり(最終的に彼の書いた脚本は、2行しか採用されなかったらしいが)、また後2012年の映画『アベンジャーズ』と、2014年の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の脚本・監督を担当したりと、この時期のマーベルの実写界隈で辣腕を振るうが、まあ、ここでは軽く触れる程度にする。

 サイクロップスとエマ・フロストはX-MENを再結成する為に動き出すが、突然変異のミュータントに関するニュースが世界中を駆け巡る。ミュータントとしての立場が危うくなり、新たな敵が現れる。危機に立ち向かうなか現れた意外な仲間とは? 新生X-MEN計画は無事に遂行されるのか!?(第10号表4あらすじより抜粋。しかし、「突然変異のミュータント」って、「頭の頭痛」みたいな言い回しだな)

 収録作品は、『アストニッシングX-MEN(vol.3)』#1-6(7-12/2004)。ウェドンによる『アストニッシングX-MEN』は、#1-24(7/2004-3/2008)と、最終話となる特別号『ジャイアントサイズ・アストニッシングX-MEN』#1(7/2008)の25冊分、単行本にして4冊分に及ぶが、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」では、今回刊行された第1巻『ギフテッド』と、第2巻『デンジャラス』(「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第28号として刊行予定)がラインナップされているのみで、第3巻『トーン』(X-MENの仇敵であるテレパス、カサンドラ・ノヴァが復活し、エマを影響下に置く)と、最終巻『アンストッパブル』(異世界「ブレイクワールド」に転移したX-MENが、ブレイクワールドと地球の運命を賭けて戦う完結編)の刊行予定はない。


 なお、国内では2010年にヴィレッジブックスから、『アストニッシングX-MEN』の邦訳版が刊行されていたが、こちらも第2巻『デンジャラス』まで出したところで刊行が止まっており、ウェドン期全巻の邦訳は達せられていない。


 この『アストニッシングX-MEN』のシリーズは、ウェドンの要請により、他のタイトルから独立したタイトルとなっており、「連載期間中に、他の『X-MEN』関連誌で重大な事件が起きても、全く触れない」、「マーベル全体が絡む大型クロスオーバー・イベントにも一切タイインしない」といった具合の扱いとなっていた。

 結果、『アストニッシング』の物語は、他誌とのクロスオーバーで余計な回り道などせず、最初期から丁寧に紡がれていった数々の要素・伏線(地球のミュータントによって滅ぼされるとされる異世界ブレイクワールドの運命など)が、25話をかけて丁寧に収束されていく巧みなストーリーテーリングで、高い評価を得ることとなる(他方、『アストニッシングX-MEN』で起きた一連の出来事は、『X-MEN』ユニバースもしくはマーベル・ユニバースにおいて、どの辺りの時系列に挿入すべきかという点が、少々曖昧になっていたりもするが)。

 なお、ウェドンの物語が完結し、ウォーレン・エリスが後を継いだ#25以降の『アストニッシング』誌も、この独立性は継承されており(最末期の#59-61で、『エイジ・オブ・アポカリプス』誌とのクロスオーバー・イベント「X-ターミネーション」を行ったのが唯一のイベント参加)、『アストニッシングX-MEN』というシリーズに、他の『X-MEN』関連誌とは異なる「特別感」を与えていた。


 そんなウェドン期の『アストニッシングX-MEN』の単行本は、大まかに、3つほど種類がある。

 1つは、全4部を1部ずつ単行本にした、通常の単行本。


『アストニッシングX-MEN』#1-6の「ギフテッド」編を収録。

『アストニッシングX-MEN』#7-12の「デンジャラス」編を収録。

『アストニッシングX-MEN』#13-18の「トーン」編を収録。

『アストニッシングX-MEN』#19-24と『ジャイアントサイズ・アストニッシングX-MEN』#1の「アンストッパブル」編を収録。


 2つ目の単行本は、後年に全2巻の厚めの単行本として再編集された「アルティメット・コレクション」版。

『アストニッシングX-MEN』#1-12、「ギフテッド」「デンジャラス」編を収録。

『アストニッシングX-MEN』#13-24と『ジャイアントサイズ・アストニッシングX-MEN』#1、「トーン」「アンストッパブル」編を収録。いずれも全4巻版と似た表紙になっているので、購入時には注意。

 ちなみにこの「アルティメット・コレクション」版第1巻は、Kindle Unlimitedで無料で読める(つまり、全25話の半分まで読める)ので、参考までに。


 最後の3番目は、全1巻の超ブ厚い単行本「オムニバス」の1冊として刊行された、『アストニッシングX-MEN バイ・ジョス・ウェドン&ジョン・キャサディ』ハードカバー。

 ウェドン期の『アストニッシングX-MEN』全話を収録。

 ただまあ、これはコレクター向けの本で、電子書籍版は刊行されていない。中古市場でも相応のプレミアがついているので、よほど本作が好きな人間でもない限りは無視していいだろう。
  
  

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