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遠くを見ても無駄

乗り物酔いが人生に与えた影響は大きい。

乗り物には本当に弱くて、地下鉄に20分ほど乗っただけで視界がブラックアウトしたことがある。ホームでうずくまっているうちに回復したが、気持ち悪いの限界を超えると吐き気以外の不調が出るのだと知った。

気の持ちようだという人がいる。父がそうだった。

一理あるとは思うが、それがすべてなら苦労しない。やれやれ、乗り物酔いと無縁な人は気楽なものだと顔面蒼白になりながらいつも思っていた。

現代医療では克服されているかもとググってみたが、状況は昔と変わっていないようだ。下記サイトの最後の手段には笑ってしまった。

可能ならば乗物から降りる

それは対処というより全面降伏だよ。

でも正しい。乗り物に乗らないのが最強の自衛手段である。元来、インドア気質だった上に移動の制約が加わったことで極端に行動範囲の狭い人生だった。生涯移動距離が算出できるなら日本人の下位10%に含まれる自信がある。

人に理解されない苦しみに対して思いやる心は育まれた。また、理解できない苦しみに対して不器用に手を差し伸べる人の気持ちも想像できるようになった。

父は価値観を押し付けたり、押し付けられたりするのが嫌いな人だった。その父が気の持ちようだと言い切ったのは暗示をかけてでも救ってくれようとした結果なのだと今は思う。