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かっこいい色校の見方 【2】

デザイナーを始めたのは2002年からだ。
世の中は日韓サッカーワールドカップが開幕し、選手たちのスポンサーであるNikeやadidasのプロモーションが街中をジャクしている最中だった。

日本のグラフィックデザインの発展は、大きな国際大会とともに発展してきた経緯を考えると、当時もそう言う時代だったのかもしれない。

学生時代からWebの勉強をしていた僕だが、そんなグラフィックの世界に魅了され、いつのまにか紙のデザインを志すようになった。
(実際にはバイトの延長線で、ほぼ惰性で制作会社に入る。。)

働きはじめて一年目。小さいが老舗の代理店の担当になった。
そこのデザイナー上がりのディレクターに、一挙一動の所作に小言を頂戴する日々を過ごすことになる。

彼曰く、デザイナーは手が清潔でないとできない仕事なのだと、

確かにそうだ。
DTPが始まる前、手作業で版下を構成している時代があった。残念なことに体質的に手脂が酷いとデザイナーになれなかったそうな。。

僕はMacintoshの発明に感謝しながら、「版下とか作んないし」と、心中は鼻で笑っていた。

はじめのうちは、、

見て感じること

色校に限らず、当時はポジなどのフィルム類、印画紙など、まだまだアナログなものが多く、それぞれの扱いには手厳しルールがあった。

例えば、印刷屋さんから受け取った封筒をデスクの上に無造作に置いてはならない。。必ず立てかけて置くべきなのだ。

これは、封筒の中身がフィルムなどの換えを許されないものが入っていた場合。
誤って上から他の荷物を置いてしまうと、中身を痛めてしまう恐れがあるからだ。

(先輩のデスクに平置きしていたなら、間違いなくボディブローを一発くらっているだろう。)

しかし、こうした単なるリスク回避のためのルールを覚えて行く中で、不思議と “もの” へ配慮と物質へのアプローチに、緊張感もって接するようになった。

色校もその一つだ。

(書くまでもないが色校を見る際は、飲食物を近づける事は厳禁。水の入ったペットボトルを持ちながら現れただけで、ボディブローをくらう。)

色校を見るにあたっては、まず手を洗うべきだ。もちろん神聖な色校を自身の手脂で汚す訳にはいかない。
それとともに、大きさと距離感、重さと質感、を肌で感じることが重要だ。

そう、手は清潔でなければならない。

インクがのること

まずは、紙の質感を確認してみる。
艶のある紙なのか、素材感のある紙なのか、これによってインクの染み込み方が違う。
同じ色でも、明るさと彩度が全く違うの印象になるからだ。

初見の違和感のほとんどは紙の質感が原因だろう。

また、印刷で一番恐れることは文字が潰れてしまう事だ。
印刷完了後に文字の潰れが原因で全て刷り直しになることは、絶対に避けなければならない。

その為、意図的に明るく印刷してインクの盛り加減を調整しているケースがある。
この場合、全体的に浅い色合い(なんとなくカスカスとしていて色ののりが悪い)になっている。

もし、本文などに影響がなさそうであれば、「濃いめでお願いします。」とリクエストしても良いだろう。

文字の注意点

因みに本文などのテキストで注意を払うことも書いておく。

・掛け合わせの色を使わない
・中間値の色を使わない

掛け合わせの色を使わない
例えば、C20% K80%などの2色以上を使わない方が良いこと。
これは版ズレなどの、インクが重なることによる “潰れ” のリスクを防ぐと共に、万が一テキストの差し替えが発生した際にフィルム(この場合シアン版とスミ版)2版を出し直すリスクがある。

中間値の色を使わない
例えば、スミ一色でもK60%などの中間値を指定しない方が良いこと。
印刷物の濃淡はインクを薄めているわけではなく、網点(インクの色玉の膨らみ)で表現されていることを念頭に置かなければならない。

よって、K60%を指定した場合は網点が発生する。
特に句読点、漢字の跳ね、などの細部のフォルムは網点によって潰れの原因になることがある。

文字の確認のNGについて一つ
もはや ただの苦言ではあるが、色校で文字校をはじめること、、
まぁ、念には念をというのは構わないが、色校のコストは馬鹿にはならない。
フィルム1版で数千円はするので、何度も出し直すものではないからだ。

(色校で誤植が発見された場合、ボディブローでは済まされないことがある、、)

文字校は入稿前に、紙に穴が空くほど確認するのが作法の一つだろう。

素材のこと

今回は紙面上の解説にとどめているが、印刷物の対象としてプラスチックや木製品、または立体構造を考慮するパッケージなど、素材の特性を加味して、最終形の再現に望むことを意識しなければならない。

2014年、GoogleからMaterial Designが発表された時は やや混乱したものの、物理的な空間の中にある階層構造を想像する感覚は、馴染みのある考え方だった。

ディスプレイの中(光の世界)で物質の存在感を再現するのは限界があるが、人が触るもは自然の摂理に順応した素直なものであってほしいと思う。

今ではスマホの画面を覗きながら、UIやUXを考える毎日だが、たまに手を洗ってからデザインに望むことがある。

次回は、色校で起こる事象について書こうと思う。

#デザイン #グラフィックデザイン #印刷

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