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近代化農業(慣行農業)の忘れもの

持続可能な環境、農業を次の世代につなげるためには、効率化、生産第一の近代化農業体系から自然のめぐみを積極的に活用した循環型生産体系への再構築が必要です。


作物以外の生きものを排除した農業の近代化

農業基本法(1961年施行)が目指した農業生産性と農業所得の向上による農業の近代化(慣行農業)は、食糧難の時代にその使命を果たしたことは評価できます。しかし、その後の消費者の食の安全・安心への関心や環境保全への意識の高まりには、十分対応できたとは言えません。

生産性の向上を第一とし、化学化、機械化、効率化をはかった慣行農業では、作物以外の生きものは必要とされませんでした。
本来そこに棲息する(した)であろう生きものは、栽培環境で果たすはたらきには注意が払われずに、害作用のみが強調され、雑草や病害虫として排除されてきました。したがって慣行農業畑では、ミミズなどの土壌中に棲息する動物はほとんどみられないのが現状です。

農業の生産現場でさえも、都市と同様、大量生産・大量消費・大量破棄が行われ、大気や地下水の汚染源となっているのが現状です。

このように、作物以外の生きものを排除し、自然の循環機能を破綻させた農地で生産された農産物が、はたして私たちの健康に良い食べ物と言えるのでしょうか。

環境保全型農業、さらに有機農業が成立するには

私たちが生活するうえで、当たり前のように利用している大気、水、食べ物などは、人類がこの世に生を授かったときから、太陽エネルギーとそれを利用する地球上のさまざまな生きもののはたらきによって生産され、浄化され、再利用されてきたものです。
私たちが意識する、しないに関わらず、自然のめぐみ(生態系サービス)を受けてきたのです。無尽蔵にあると錯覚していた地球の資源は有限であり、私たちの使い方(生活)次第では、資源を枯渇したり、再利用できなくしたりして、次の世代に大きな負担を強いることになりかねません。

食料生産面でも、私たちの生活する環境を保全し、持続的な農業を行うには、地域の自然条件に対応した栽培管理を行う必要があります。それには、きめ細かく作物を選択し、生産がもたらす環境への負荷を軽減し、作物残渣を農地に還元するなど、生産第一の近代化農業体系から循環型生産体系への再構築が必要です。
循環型生産体系は、植物(作物)が育つ環境のなかで、本来棲息したであろう多様な生物のもつはたらき(自然のめぐみ)を無視しては成立しません。むしろ、積極的に自然のめぐみを利用する農業への取り組みが求められます。

持続可能な食料システムの構築に期待

農林水産省は、環境保全を重視し生産力向上と持続可能な食料システムを構築するために「みどりの食料システム戦略」を2021年5月に策定しました。
このなかで、化学肥料、農薬の使用量の削減と有機農業実施面積の拡大を謳っています。達成に向けた個別的な技術開発を、循環型生産体系の構築を念頭に置いて進めていただきたいものです。


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