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技術の判断基準は社会的背景によって異なる(1)

慣行農業(近代化農業)で採用されている技術と有機農業の考え方を比較し、これからの社会に求められる農業技術の基準について、2回に分けて考えてみます。


求められる持続可能な環境や社会を優先した技術

技術とは、「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間の生活に利用するわざ」(広辞苑第5版 1998)と定義されています。
技術が適用されようとしている社会的背景によって、技術の採用基準は異なります。すなわち、技術にはできることと、できてもしてはいけないことの判断基準はなく、まさに「両刃の剣」でもあります。

地球上の資源を無制限に使えると錯覚し、技術の成果を手早く経済活動に使おうとする姿勢が、大量生産・大量消費・大量破棄の社会を作り上げてきました。
いまを生きる私たちには、公害や環境汚染の経験とそれらにより顕在化する地球温暖化にともなう気候変動の反省から、持続可能な環境や社会を優先した技術が求められています。

「堆肥・有機質肥料の利用」という技術

地域の有機資源は、作物が利用する養分としての有機資源だけではなく、物質の循環に関与する生きものを育む資源でもあります。単に、各種有機質肥料の特性を組み合わせて、化学肥料と同等の収量を確保(無化学肥料栽培)するために、堆肥や有機質肥料を化学肥料の代替えとして使うことは、生態系サービスを活用した有機農業の技術としてふさわしくありません。
農地およびその周辺環境の物質循環を考慮した有機資源の活用を第一とすべきです。

「化学合成(生物)農薬の利用」という技術

作物以外の動植物、微生物を排除して、作物を保護するという技術。農薬の利用は、作物に直接影響しない動植物にも影響し、生態系サービスの低下を招きます。有機農業では、さまざまな動植物、微生物が生活しているなかで作物を栽培することを考慮しながら、作物の特性や農地の生態系サービスを引き出す栽培を心掛けることが大切です。

このつづきは、「技術の判断基準は社会的背景によって異なる(2)」で紹介します。


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