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掌編の肴②

終礼後、携帯を見るとサトミからメールが来ていた。
『東京に来てる!今晩泊めて〜』
時間教えて、と返信して職場を後にした。

女先輩に誘われ、渋谷で合コンに参加した。
参加者の誰もが職業不詳だった。
名前も顔も覚える気もなかったが、楽しかった。
女先輩は、早々にロックオンした保阪尚希とどこかへ消えた。

仲良くなった数人でカラオケへ向かった。
途中でトイレへ行ったら部屋番号を忘れてしまい、ウロウロしていると右手の部屋から男性が出てきた。目があったのでどうも、と会釈すると
「おいで」
手を引かれた。

真っ暗な部屋。

通りすがりのセックスはシンプルで悪くない。気持ちーね、と言われたので、頷いておいた。
後始末はそのへんの紙を千切った。
相手はタクマだかタクヤだか名乗った。顔はほとんど見ていないが、対面座位で触れた肩の骨が尖っていたのが印象的だった。

通路に出ると、私を探してくれていたらしい連れとぶつかった。
「間違えた部屋で一曲歌ってきた」と言うと、なにそれと笑いながら手を引いてくれた。
振り返ると、肩の骨がまたねと手を振った。

渋谷はずっと誰か叫んでるな。

起きたら朝だった。私は空を見ていた。
フカフカのゴミ袋の上は暖かく、隣になぜかサトミが転がっていた。

今日が土曜日で良かった。

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