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映画「アイアンクロー」

映画「アイアンクロー」見てきた。

1960年代から70年代にかけてアメリカのプロレス界で大スターだったフリッツ・フォン・エリック。
片手でリンゴをつかめばたちまちジュースに変える(出典:「プロレススーパースター列伝」梶原一騎)驚異的な握力を使って相手の顔面を締め上げるアイアン・クローを得意技にし、エリックに締め上げられ脳波が狂ったレスラーは枚挙に暇がないという(出典:同上)。
そんなエリックは家庭を持つと五人の息子に恵まれた。
長男のケビン(※その上に幼くして亡くなった本当の長男がいるので戸籍的には次男、以下同様)、次男デビット、三男ケリー、四男マイク、五男クリス。
父エリックがWCCWという自分の団体(プロモーション)を作ったこともあり、五人の息子たちは全員プロレスラーを目指した。
兄弟は仲が良く、リングの上でも互いに互いを支え合う関係だった。

しかしそんな家族愛に満ちた団体は少しずつほころびを見せ始める。
きっかけは世界最高峰のタイトルである、NWA世界ヘビー級選手権への挑戦者にフリッツが長男のケビンではなく次男のデビットを指名したことだった。
NWAのタイトルマッチは一試合だけではない。
タイトルマッチの注目を高めるために、プロモーション試合を各地でやらないといけない。
さらにその直後に入っていた日本への遠征途中、デビットはホテルで急死する。
死因は「内臓疾患、腸炎」とされた。25歳だった。

デビットがやるはずだったNWA世界戦は三男のケリーが代役で務めることになり、ケリーはそこでチャンピオンになる。
父フリッツも獲ることができなかった世界タイトルだった。
栄光をつかんだケリーだったがその2年後、オートバイ事故を起こし右足切断の重症を負う。
一時は再起不能と言われていたが義足を付けてハードなトレーニングを重ね、翌年奇跡的なカムバックを果たす。
ただケリーはこの事故により傷の痛みや幻肢痛に悩まされ、それを紛らわすために薬物を使用し、ペインキラー依存症となったと言われている。
ケリーはその後世界一の団体WWF(当時。現WWE)と契約し、インターコンチネンタルタイトルを獲るなど活躍するが2年後に退団。その後コカインおよびドラッグ使用で起訴され、執行猶予中にピストル自殺した。33歳だった。

エリックファミリーは四男のマイクが23歳の時に精神安定剤の過剰摂取により服薬自殺、五男のクリスも21歳の時にピストル自殺した。
マイクは試合で肩を負傷して手術した際に毒素性ショック症候群という突然発症する病気になってしまい、精神安定剤が手離せなくなった。
クリスは生まれつき喘息に苦しみ、またプロレスラーとしては非常に小柄だったこともあってステロイド剤を常用していたという。

エリックが運営していたWCCWはライバル団体に買収され、一人残された長男のケビンはひっそりとプロレスから引退した。

以上のような経緯を経て、エリックファミリーは「呪われた一家」と言われるようになった…というのがかつてプロレス界で伝えられた「物語」だった。

で、この「アイアンクロー」はそのエリックファミリーのことを映画にしている。
巷間伝えられているエリックファミリーの物語には、実はこんな秘話や内情があった…!
 
という話かと思ったらそうではなく、わりとただそのままの映画だった。
えええ。
いいのかこれで。
「フットルース」みたいなケビンの恋物語、いる?
ケビンはケビンでもケビン・ベーコンかよ!

そこかしこに挟まれる1980年代アメリカンプロレスの情景が懐かしい。
ワールド・フォー・プロレスリング、「世界のプロレス」!
こんにちは、ジョー・ペディシーノです。

…なんの話だっけ、そうだ、映像が懐かしいというやつね。

往年のレスラーは俳優さんが演じてるんだけど、みんな再現度が高くてすごいなと思った。
特にハーリー・レイスとリック・フレアー!
プロモーションインタビューがもはや本物以上にレイスとフレアーだったよ。
あそこは最高だった。
あの二人の俳優さんをあの姿のまま全日本プロレスは呼んできてほしい。

で、この映画の公開時のアンバサダーは棚橋弘至がやってたらしいんだけど、これ逆に棚橋はこの映画見て何を言ったんだろう?と気になってきた。
これ見たところで何も言いようなくない?「大変でしたね」くらいしか。
むしろ試合前に対戦するレスラー同士が打ち合わせてたり、試合終わった対戦相手が控え室にやってきて「あー疲れた!このあと飲みにいかない?」とか言ってくる場面を描いてる映画のアンバサダーを引き受ける棚橋が偉い。
そんなの現役レスラーに見せるなんて、普通にこちらが気まずいよ!

といういろんな部分で「これでいいんだ」を感じた映画でした。
ところで公開10日目にして200人くらい入りそうな劇場に10人くらいしか入ってなかったんだが、いろいろ大丈夫でしょうか。
来週は「オッペンハイマー」を見に行きたいです。


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