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『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』ツクヨミ的中空構造の存在が両端のバランサーになるという、古事記の歴史をもつ日本人の役割も必要になるのだろう(イスラエル)

 イスラエルとパレスチナの問題は、人類史上最もやっかいな問題といわれている。本書はその問題を、前半は歴史から、後半は現代の状況からまとめたものだ。このアメリカ在中のリベラルなユダヤ人の書いたこの本をはたして何人の日本人が手にとって読むかはわからない。しかし、この複雑な問題をひと言で表した次の子供の発言は参考になるはずだ。

 「OK。ちょっと整理させて。つまり、こういうことかな。僕は生まれたときから、自分の土地にある自分の家で暮らしてきた。両親も、おじいさんもおはあさんも、ひいおじいさんもひいおばあさんも、ひいひいおじいさんもひいひいおばあさんもみんなここで暮らし、僕と同じ土地を耕してきた。いつも誰かに家賃を払っていたけど、ずっとここで暮らしていた。
 ある日、畑に出て、夕方家に帰ってみると、この人(ここでは隣に座っていた子を指した)とその家族が僕の家の半分で暮らしている。僕が『おい、僕の家で何しているんだい?』というと、彼は『僕たちはここから遠く離れた街を追い出されたんだ。近所の人は殺され、僕たちの家も焼かれた。ほかに行くところはないし、受け入れてくれるところもない。だからここに来たんだ。ひいおじいさんおばあさんの、ひいおじいさんおばあさんの、そのまたひいおじいさんおばあさんが、はるか昔に暮らしていた場所にね』ーーーというわけで、どちらも正しいが、どちらもほかに行くところがない。こんな感じでいい?」

 映画やTV番組をひと言で表現することを「ログライン」と呼ぶが、この子供の発言は、人類史上最もやっかいな問題をひと言で表したログラインだ。
 著者の年齢はわからないが、ラビン首相によるヨルダンとの和平協定のときに、エルサレム上空にヨルダンの旅客機が飛んだ思い出や、ラビン氏が選挙のときのキャッチフレーズとして、「イスラエル・メハカ・レ・ラビン」(イスラエルはラビンを待っている)なども紹介していることから、私と同年代が少し上だろう。

 問題解決の最大の希望を与えてくれるのが、イスラエルのアラブ系国民の存在だとしている。1948年にイスラエルが建国され、そこにとどまったパレスチナ人は15万6千人。現在は190万人となり、イスラエルの人口の20%を占める。比較すると、アメリカの全人口のアフリカ系アメリカ人の比率は13%、ユダヤ系アメリカ人は3%未満だ。この人口動態により、彼らが政治的なキャスティングボードを握る日も近い。また、日本で考えると、在日韓国系日本人である孫正義氏のような人の出現が、日本人の雇用を生み出していることと、類似するようなことが起こる可能性もある。

 筆者の立場は、イスラエル人とパレスチナ人のどちらも正しく。どちらも間違っているという中立的なものだ。しかし、例えアメリカのリベラル系であったとしても、自らがユダヤ人であることから、パレスチナ人の受け取り方は違ったものになる。その点、ツクヨミ的中空構造の存在が両端のバランサー(システムとして)になるという、古事記の歴史をもつ日本人の役割も必要になるのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。