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『ブラックベリー』ジョブズがなぜ酒巻久氏をヘッドハントしようとしたかが分かる映画(技術の歴史)

 創業者の技術者CEOマイクと親友のダグはRIM(Reserach In Motion)の命運をかけた全く新しい仮称ポケットリンクという発明品をプレゼンしていた。しかし、この技術オタクにしか魅力がわからないアイディアは理解されなかった。ところが、この発明の可能性に飛びついてきたのは上司に捨てられた実業家のジムだ。彼は強引にRIMの共同CEOとなった。

 急遽作ったプロトタイプをプレゼンするため移動したタクシーに忘れるシーンでは、観ている方まで焦ってしまうほど引き込まれていく。また、USロボテックスが買収したペンで動作させるパームが敵対的買収を仕掛けるが、ネットワークリソースを4倍に拡大し、一気にユーザーを増やし株価を4倍にするシーンもリアリティがあり面白い。

 1999年に発売されたBlackBerryは、2007年には北米シェア30%、ピーク時は携帯端末シェア45%を超えた。ちょうどその頃、AppleがiPhoneを発表する。BlackBerryのようにキーボードがなく、パームやNewtonのように操作ペンはない。大きなスクリーンのタッチパネルで操作する手のひらサイズのコンピュータ電話だ。

 スティーブ・ジョブズがiPhoneを開発する際に、一人の日本人をヘッドハンティングしようとしている。それは現キャノン電子会長の酒巻久だ。酒巻久氏は1988年にタッチパネルどころか電話やファクスまで搭載し、ワープロや表計算ソフトも入ったパーソナルステーションNAVI(ジョブズがiPhoneを開発するキッカケとなった「日本製タッチパネルPC」)を開発した。ジョブズはこの製品にインスパイアされ、タッチパネルのiPhoneつながったのだ。

 BlackBerryはiPhoneに市場を奪われ、共同CEOのジムは、無理な採用のツケ(SEC,ストック・オプションの日付改ざんで元RIM幹部らに罰金)からCEOを追われる。iPhoneに追いつこうとタッチパネル式のBlackBerry(中国産STROM)の品質が悪く返品交換となり、とうとうシェアはゼロになった。

 一つの製品がNo1から消滅するまでの実話映画だが、キーになるイノベーションはタッチパネル式の操作をiPhoneが採用したことだ。それをいち早く実現したのが酒巻久氏で、彼が現在取り組んでいる宇宙ビジネスまでのプロセスは『左遷社長の逆襲 ダメ子会社から宇宙企業へ、キヤノン電子・変革と再生の全記録』(朝日新聞出版)に詳しい。
 この映画は、BlackBerryの物語として観るより、イノベーションの恐ろしさの物語として観たほうが面白い映画だ。

https://tinyurl.com/ysr4j8e5

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。