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『MINAMATA』入浴する智子と母(日本の歴史)

 「なぜこの時期に」と思う水俣病を描いた映画。1枚の写真が人を動かすというが、この映画で公開された「入浴する智子と母」は、それをまさに実感させる写真だ。ジョニー・デップが演じる世界的な写真家ユージン・スミスが撮ったこの写真は、米国のライフ誌に掲載され、世界にセンセーショナルを巻き起こしたという。

 1956年生まれの上村智子さんのご両親には7人の子供がいる。智子さんのご両親は、長女である智子さんのことを「宝子」と呼んでいるそうだ。チッソによる海水に放出された水銀は魚に溜まった。そうとは知らず魚を食べた人々の体内には水銀が溜まる。母親に溜まった水銀は、胎盤を経て智子さんに入ることに。智子さんがその花親の毒を抜いてくれたため、その後生まれてきた5人の女の子と一人の男の子は、智子ちゃんのように水俣病に冒されなったという。だから智子さんは「宝子」なのだ、と。

 チッソでは猫で実験をし、水俣病の原因を問題になる15年前に把握していた。チッソの付属病院長だった細川一氏らが、廃液と発症の因果関係を解明したが、チッソは結果を公表せずに廃液を流し、被害を拡大させたという。
 この映画に出演する経営者は、興銀から派遣された江頭豊氏だろうが、この人も、その部下たちも、なぜ企業側の論理に簡単に負けてしまうのだ。写真家の視点からなので、この点が描かれていないのは仕方ないと思うが、再発防止という観点からは必要なことだ。

 坂本龍一氏の音楽が心に響くこの映画は、ジョニー・デップの演技にも味があり、感動の名作だ。次は、必然的に原一男監督の6時間のドキュメンタリーを観るしかなくなる。

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